【現場を変えるMobilityのアイデア】第33話:Apple ID管理の「解」来たる!?
福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com
WWDC2018の開発者向けセッションで、米国での開始が正式にアナウンスされたアップルのエンタープライズ向け管理ツール「アップル・ビジネス・マネージャー(Apple Business Manager)」が、企業のアップルデバイス導入の際に長年課題に上がっていたアップルID(Apple ID)管理の「解」となるはずだ。
アップル・ビジネス・マネージャーはiOSデバイス、Mac、アップルTVなどのアップルデバイスを1カ所で管理できるシンプルなWEBベースのポータルだ。モバイルデバイス管理(MDM)ソリューションと組み合わせることで、デバイスの設定やアプリの配布を一括で行うことが可能になる。また、IT管理者がデバイスに触れることなく設定やアプリをインストールすることを可能にするDEP(デバイス登録:Device Enrollment Program)、アップストアアプリを一括購入するためのVPP(アプリ一括購入:Volume Purchase Program)といった既存の法人向けソリューションに加え、管理されたアップルIDを作成、管理するための「マネージド・アップルID(Managed Apple ID)」の機能が追加されている。マネージド・アップルIDを利用することで、組織内で利用するアップルIDを一括で作成したり、アイクラウド(iCloud)などのアップルのサービスを利用することが可能になる。これにより、アップルIDの管理にIT管理者がもう悩まされることはなくなったと言えるだろう。
ただし、iOSデバイスだけでなく、Macの企業導入が進むにつれて、アップルプラットフォームの体験をより高めたいというニーズが増えている。この場合、複数のデバイスで同じアップルIDでサインインして、デバイス間の連携を行う必要がある。これにより、移動中にiPhoneでやりかけていたメールの編集を、会社に戻ったらそのままMacで作業を継続できるハンドオフ(Handoff)や、iPhoneへの電話の着信をMacで受けたり、手軽にインターネット共有 が開始できるインスタントホットスポット(Instant Hotspot)など、さまざまなアップル純正の機能が使えるようになる。ここまでできるようになると、アップルデバイスの機能を最大限に発揮できる環境が整う。
さらに、アップルのビジネス向けWEBサイト「Apple at Work」では、「エンプロイー・チョイス(Employee Choice)プログラム」と呼ばれる仕組みが紹介されている。これは、社員自らが利用するIT機器を選択できるようにするもの。今後の「働き方改革」にも大きな影響を与えるプログラムである。デバイスを選択できることは従業員にとって幸せなことであり、モチベーションを高めることにもつながる。日頃の使い慣れているIT機器を業務でも同じように利用することでクリエイティビティが高まり、生産性や成果も高まるだろう。ただし、ここで忘れてはならないのは、社員には選択できる「権利」だけでなく、「責任」も発生することだ。自分自身が好んで(望んで)選んだデバイスで成果を出すことができなければ、結果、チームや会社に対して損失を与えることになる。エンプロイー・チョイスプログラムは、社員が使いたいデバイスが自由に使えるという単純なものではない。
企業内でアップルIDが管理できるようになり、複数のアップルデバイスを使いこなす働き方が浸透すれば、社員の多様性にもつながるはずだ。アップルデバイスのユーザ体験を企業内でも最大限に活かすために、日本でも1日も早くアップル・ビジネス・マネージャーが利用できるようになることを期待したい。
この記事は、Mac Fan連載「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年11月号)。
現場を変えるMobilityのアイデア 記事一覧
- 第33話:Apple ID管理の「解」来たる!?
- 第32話:可能性を拡張する問いを立てる力
- 第31話:腹落ち感が生み出す研修の価値
- 第30話:モバイル活用の本質を見直すタイムマネジメント
- 第29話:結果につなげる 「×考え方」のビジネス方程式
- 第28話:CXを高めるApple製品の客室導入
- 第27話:不快を味わい「学び」をアップデート
- 第26話:CYODの実現に最初に必要な Why? の問い
- 第25話:他社を真似ずに自分たちで“事例”は作る
- 第24話:「ソリューション」という幻想に惑わされない秘訣
- 第23話:AI時代のエコシステムと価値創造に必要な対等な“ツッコミ”
- 第22話:“デジタル変革”に もっとも大切な 目的の明確化と共有
- 第21話:企業の体質改善に求められるITの"目利き力"
- 第20話:心地良さの追求がIT機器導入を「変革」へと導く
- 第19話:iOSによる教育現場の化学反応
- 第18話:企業カルチャーを創り出すオフィスとiOS
- 第17話:知的好奇心を刺激する学び
- 第16話:ITサポートに求められるのは"寄り添う"姿勢
- 第15話:創造力を守るための時間確保
- 第14話:日本のEnterprise ITに足りないもの
- 第13話:形骸化させない"働き方"改革
- 第12話:志は高く、目線は低く、ユーザー視点で
- 第11話:幸せを呼び込むタスク管理
- 第10話:変化するのは人か、 テクノロジーか、 それとも…?
- 第9話:モビリティの成功の秘訣は「型」にあり
- 第8話:ムダな会議を撲滅、 有意義な時間を創出
- 第7話:教育現場でのiPad機能制限、絶対反対!
- 第6話:モビリティの三段活用
- 第5話:悪いルーティーンを打破するiOS
- 第4話:そのプレゼンは聴く者を動かしているか?
- 第3話:情報共有はInformationからKnowledgeへ
- 第2話:目的の定まった"定着する"モバイルの活用
- 第1話:そのマニュアルは使われているか?
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