探訪!オートデスク株式会社
福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com
「成長できている」と実感するのはどんなときか?その多くは、不可能だったことが可能になったときだろう。人は誰しもが現在の状況を今以上のものにしたいと考え、成長し続けたいと願っているはずだ。しかし、この成長機会を常に持ち続けることは可能なことなのか?教育の現場でも業務の現場でも、一人一人が成長意欲を持って取り組める環境を維持することは極めて難しいことである。
また、デジタル変革が加速する現代においては、人も組織も、従来の延長線上にあるリニアな成長だけでなく、学び直し、つまりは学びのアップデートが必要になる。自分自身が成長したいという理由からだけでなく、ある意味、環境変化に伴って成長を余儀なくされたり、昔からやってきたことや積み上げてきた経験が意味をなさなくなったりするからだ。
先日、初めて英語でプレゼンテーションする機会があった。最初はうまくいくかどうか不安だったが、何度も練習を繰り返したことで本番ではスムースに言葉が出てきて、今では何も見なくても、そのフレーズが口から出てくるようになった。不快だと思っていた環境に身を置いて取り組み続けることで、結果できることが増え、成長を実感できたのである。
プレゼンテーションの練習ひとつを取っても、発表姿勢や発声、言葉遣いなど、自分自身の様子を動画で記録し、その過程を振り返ることで、今までできなかったことができるようになったり、自分の成長を確認できたりする。そして、自身成長を実感し、成長の過程を確認できれば、さらに成長したいという意欲が湧いてくる。
教育の現場における一人一台のタブレット端末も、子どもたちの成長機会を育むために利用されるものでなければならない。機能制限を行うことには反対であると以前本誌にも書いたが、タブレットがもたらす成長機会について示すことが何よりも大事であると思う。
たとえば、プログラミング教育のような新たな学習コンテンツは、プログラムを書けるようになることが目的ではなく、自らが望むものを自身で生み出す能力を身につけるためのひとつの手段のはずだ。どんなコードを書くかは、表現したいことに合わせて選択できればいい。つまり、どんなコードを学ぶかよりも、なぜコードを学ぶのかを知ることが先決だ。
では、成長機会はどこにあり、どうしたら成長できるのか?それは自らのコンフォートゾーン(Comfort Zone)から一歩踏み出すことから始まる。誰しもが慣れた環境、仕事内容、学習スタイルがあるもので、その中で行動したほうがスムースにことは運ぶし、心地良く過ごせるものだ。
しかし、一方で、決まったパターンで行われる作業の中に居続けると、急な変化や突発的な問題に対処ができなくなる。この臨機応変な対処を身につけることこそが成長の第一歩なのである。
それは、言い換えれば、「不快な環境に身を置くこと」。初めて何かに挑戦したり、初めて誰かと仕事をしたり、初めての土地や環境に身を置いたりすることは、たいていはストレスだ。しかし、今までに経験のない場所に自らの意思で向かうことこそが、対応力や瞬発力といった臨機応変な対処を習得することにつながり、結果、できることの幅を広げる。だから、教育の現場でも、仕事の現場でも、小さな失敗をどんどん繰り返すこと(Fail Fast)が許容された環境や雰囲気作りが重要なのだ。そうでなければ、新しい価値を生み出すサイクルは回らない。
これからの未来をつくるのは、iOSでもAIでもロボットでもない。人の創造力こそが未来をつくるのだ。これからの社会で生き抜く術を身につけるためにも、成長サイクルを自ら生み出せるような学びのアップデートを行おうではないか。
この記事は、Mac Fan連載「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年11月号)。
現場を変えるMobilityのアイデア 記事一覧
- 第30話:モバイル活用の本質を見直すタイムマネジメント
- 第29話:結果につなげる 「×考え方」のビジネス方程式
- 第28話:CXを高めるApple製品の客室導入
- 第27話:不快を味わい「学び」をアップデート
- 第26話:CYODの実現に最初に必要な Why? の問い
- 第25話:他社を真似ずに自分たちで“事例”は作る
- 第24話:「ソリューション」という幻想に惑わされない秘訣
- 第23話:AI時代のエコシステムと価値創造に必要な対等な“ツッコミ”
- 第22話:“デジタル変革”に もっとも大切な 目的の明確化と共有
- 第21話:企業の体質改善に求められるITの"目利き力"
- 第20話:心地良さの追求がIT機器導入を「変革」へと導く
- 第19話:iOSによる教育現場の化学反応
- 第18話:企業カルチャーを創り出すオフィスとiOS
- 第17話:知的好奇心を刺激する学び
- 第16話:ITサポートに求められるのは"寄り添う"姿勢
- 第15話:創造力を守るための時間確保
- 第14話:日本のEnterprise ITに足りないもの
- 第13話:形骸化させない"働き方"改革
- 第12話:志は高く、目線は低く、ユーザー視点で
- 第11話:幸せを呼び込むタスク管理
- 第10話:変化するのは人か、 テクノロジーか、 それとも…?
- 第9話:モビリティの成功の秘訣は「型」にあり
- 第8話:ムダな会議を撲滅、 有意義な時間を創出
- 第7話:教育現場でのiPad機能制限、絶対反対!
- 第6話:モビリティの三段活用
- 第5話:悪いルーティーンを打破するiOS
- 第4話:そのプレゼンは聴く者を動かしているか?
- 第3話:情報共有はInformationからKnowledgeへ
- 第2話:目的の定まった"定着する"モバイルの活用
- 第1話:そのマニュアルは使われているか?
関連記事
【現場を変えるMobilityのアイデア】第30話:モバイル活用の本質を見直すタイムマネジメント
2022.06.06
【現場を変えるMobilityのアイデア】第29話:結果につなげる 「×考え方」のビジネス方程式
2022.05.19
【現場を変えるMobilityのアイデア】第28話:CXを高めるApple製品の客室導入
2022.03.07
【現場を変えるMobilityのアイデア】第26話:CYODの実現に最初に必要な Why? の問い
2021.11.25
【現場を変えるMobilityのアイデア】第25話:他社を真似ずに自分たちで“事例”は作る
2021.07.01
【現場を変えるMobilityのアイデア】第24話:「ソリューション」という幻想に惑わされない秘訣
2021.05.13
【現場を変えるMobilityのアイデア】第23話:AI時代のエコシステムと価値創造に必要な対等な“ツッコミ”
2021.04.01