探訪!オートデスク株式会社
福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com
今の生活習慣を変えるつもりがありますか?健康診断を受ける際に、事前に回答する問診票にあった質問項目の1つだ。毎年「機会があればおおむね6カ月以内に改善したい」と回答し、改善することを先送りにしてしまっている。働くうえで健康であることは何よりも重要なことだが、体調の変化や食生活の乱れなどのきっかけがないと、強い意志を持って改善しようという気にならないものである。
それと同じように、あなたの企業の健康状態はいかがだろうか。働き方改革や生産性向上などの課題に対し、持続可能なビジネスを目指すうえで体質改善がしっかり行われているだろうか。
「第4次産業革命」と呼ばれるように、企業を取り巻く環境はIoTや人工知能(AI)など、非連続なテクノロジーの進化によって変化し、予測が非常に難しくなっている。日本だけでなく世界中で起きている潮流に乗り遅れないためにも、企業はデータの利活用やIT人材育成を積極的に行い、組織やビジネスモデルの体質を変えなければならない。
企業における従来のITは「リスクゼロ」を命題とし、情報システム部門が中心となって標準化やコスト削減を目的に取り組んできた。業務に問題が起きないように時間をかけてシステムを構築し、組織や外部環境が変化しても何年も変わらず同じシステムを利用する。しかし、今はそれでは通じない。デバイスが常にネットワークにつながっている社会では、業務に対してスピードや対応力が求められる。
さらにクラウド利用にも拍車がかかり、ファストフードやファストファッションのように、さまざまなITサービスがアプリ1つで気軽に利用できる。低価格でミニマムな形でスタートできることが、導入初期に失敗を繰り返し、どんどんチャレンジしていくことを可能にした。旧来のITベンダーのように、長い時間ををかけて構築した高額なIT導入では、テクノロジーの進化のスピードに対応できない。ITサービスの価格破壊が起きており、導入障壁が下がっているのだ。
また、オープンソースでいろいろなものを試すことができる環境がある。誰でも簡単にアプリを作ってみることが可能になり、アイデア1つで競争力を高めることにつながるのである。
Macで仕事をするようになってから10年以上経つが、今までXcodeを使ったことがなかった。しかし、先日15分ほどのレクチャーを受け、Xcodeを使ってiPhone上で動くアプリを作ることができた。このように、今はコードが書けなくても、インターネットの情報を駆使すれば、自分のアイデアを形にできるような時代である。ちょっとした成功体験で、ビジネス上の課題を解決する糸口を見出すこともできるし、何よりワクワクしながら仕事をすることができる。
今まで情報システム部門が中心に行ってきたIT導入も、現場の事業部門が中心となり推進可能となっている。現場の気づきを大切にし、柔軟な要件で試行錯誤を行い、ITを利活用できる。そこで必要なことはインターネット上に溢れるさまざまなサービスに対する「目利き力」。自分たちのビジネス上の課題に対し、何が足りないのかを明確にし、そのために必要な機能をどんどん試していく。具体的には、低価格ですぐに始められるようなITサービスやアプリ、オープンソースで提供されているようなツールを活用していくこと。
これから先のモビリティ導入では、デバイス自体はIoTやAIなどのテクノロジーを使ったITサービスの入り口となる。デバイスの利活用を高度化するためにも、現場のアイデアをどんどん試すことで、新しいITを利用する力を身につけることが、これからのテクノロジーの進化に対して企業に求められている体質改善なのだ。
この記事は、Mac Fan連載「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年11月号)。
現場を変えるMobilityのアイデア 記事一覧
- 第30話:モバイル活用の本質を見直すタイムマネジメント
- 第29話:結果につなげる 「×考え方」のビジネス方程式
- 第28話:CXを高めるApple製品の客室導入
- 第27話:不快を味わい「学び」をアップデート
- 第26話:CYODの実現に最初に必要な Why? の問い
- 第25話:他社を真似ずに自分たちで“事例”は作る
- 第24話:「ソリューション」という幻想に惑わされない秘訣
- 第23話:AI時代のエコシステムと価値創造に必要な対等な“ツッコミ”
- 第22話:“デジタル変革”に もっとも大切な 目的の明確化と共有
- 第21話:企業の体質改善に求められるITの"目利き力"
- 第20話:心地良さの追求がIT機器導入を「変革」へと導く
- 第19話:iOSによる教育現場の化学反応
- 第18話:企業カルチャーを創り出すオフィスとiOS
- 第17話:知的好奇心を刺激する学び
- 第16話:ITサポートに求められるのは"寄り添う"姿勢
- 第15話:創造力を守るための時間確保
- 第14話:日本のEnterprise ITに足りないもの
- 第13話:形骸化させない"働き方"改革
- 第12話:志は高く、目線は低く、ユーザー視点で
- 第11話:幸せを呼び込むタスク管理
- 第10話:変化するのは人か、 テクノロジーか、 それとも…?
- 第9話:モビリティの成功の秘訣は「型」にあり
- 第8話:ムダな会議を撲滅、 有意義な時間を創出
- 第7話:教育現場でのiPad機能制限、絶対反対!
- 第6話:モビリティの三段活用
- 第5話:悪いルーティーンを打破するiOS
- 第4話:そのプレゼンは聴く者を動かしているか?
- 第3話:情報共有はInformationからKnowledgeへ
- 第2話:目的の定まった"定着する"モバイルの活用
- 第1話:そのマニュアルは使われているか?
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