探訪!オートデスク株式会社
福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com
月曜日の朝の通勤電車。出社するのが面倒だ、やる気が出ない…そんな気分でiPhoneを片手に電車に揺られている人もいるだろう。ところで、オフィスに行く理由は何なのだろうか?現在は、モビリティの普及に伴い、いつどこにいても情報にアクセスし、コミュニケーションを取ることが可能だ。そして働く場所、つまりオフィスといった「場」の果たす役割は変わりつつある。それが「業務を行うためだけの場所」であるならば、オフィスに行かなければならない理由としては乏しい。
これから大事となるのは、オフィスという場が、その企業のカルチャーを生み出すところであるという考え方だ。経営のビジョンを表し、企業文化や風土を共有するための場である。それがデザインされることで、これからのオフィスは顧客やパートナーとの接点となり、他者との共感を生み出す。そしてイノベーションが起こるきっけとなるのである。また、オフィスがオープン化し多様化することで、顧客との接点が現場の事業部門だけだった状況から広がる。セクショナリズムのような事業部門間の壁も、これからのオフィスのデザインで取り払われるべきだ。営業と経理、人事とマーケティングなど、普段の業務では関わることが少ない部門が近くで一緒に仕事をすることで、顧客視点のマインドセットを共有できることもある。旧来のオフィスは設備やファシリティといったハードを中心に考えられてきたが、これからはその場で働く人を中心に考え、オフィスの中心をデザインすることが求められている。
働き方変革を求められる企業はモバイルの特性を活かしたリモートワークや在宅での作業を許容することで、これからの社会に適応しようとする。しかし、その一方で、会社と社員のつながりが薄れていくことも懸念されている。ITを使うことでリモートワーク時の作業状況を監視するような取り組みも行われているが、管理側にとっては安心材料の1つとなる半面、監視される側は常に見張られている緊張感から会社とのつながりに対し不安や不満を抱くことになる。リモートワークはどうしても導入するツールに目が行きがちだが、対面で顔が見えない環境で働くことになったとしても、仕事の成果が出るような仕組みを突き詰めると、働く人同士の信頼関係が構築され、しっかり連携できていることが必須である。
このようなオフィスが普及してくる中で、モビリティが求められる役割、果たすべきこととは何か?それはオフィス内での仕事の一連の流れであるインプットからそのプロセス、アウトプットまで、各業務の場面でモバイルを中心に考えられた状態を作ることである。たとえば、人事部門の採用活動の業務の中で、応募者の履歴書や経歴、ポートフォリオがセキュアかつスムースに閲覧することができるかといったことだ。個人情報を含むデータを扱うため、何重にもパスワードがかけられ、サーバの奥深くに格納されているデータとなってしまっては、面接時に手元にあるiPadで確認したいと思っても、即座に対応することができない。
こういったシーンで、既存の業務がどれだけモバイルで行うことを前提に考えられているかが重要になってくる。何かしらの業務上の課題に対しても、いろいろと仮説を立てるインプットの段階でも、実際の業務を行うプロセスでも、成果を出すアウトプットのシーンでも、モバイルを中心に業務を再設計し、オフィスといった働く「場」をモビリティが支えることになるのだ。結果、その働き方が従業員の行動規範やパフォーマンスに反映され、その企業独自の文化や風土となり、顧客に新たな価値を提供できるようになるはずだ。そして、このような価値創造の根底には人間と人間の信頼関係があってこそ成立するのである。
この記事は、Mac Fan連載「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年11月号)。
現場を変えるMobilityのアイデア 記事一覧
- 第30話:モバイル活用の本質を見直すタイムマネジメント
- 第29話:結果につなげる 「×考え方」のビジネス方程式
- 第28話:CXを高めるApple製品の客室導入
- 第27話:不快を味わい「学び」をアップデート
- 第26話:CYODの実現に最初に必要な Why? の問い
- 第25話:他社を真似ずに自分たちで“事例”は作る
- 第24話:「ソリューション」という幻想に惑わされない秘訣
- 第23話:AI時代のエコシステムと価値創造に必要な対等な“ツッコミ”
- 第22話:“デジタル変革”に もっとも大切な 目的の明確化と共有
- 第21話:企業の体質改善に求められるITの"目利き力"
- 第20話:心地良さの追求がIT機器導入を「変革」へと導く
- 第19話:iOSによる教育現場の化学反応
- 第18話:企業カルチャーを創り出すオフィスとiOS
- 第17話:知的好奇心を刺激する学び
- 第16話:ITサポートに求められるのは"寄り添う"姿勢
- 第15話:創造力を守るための時間確保
- 第14話:日本のEnterprise ITに足りないもの
- 第13話:形骸化させない"働き方"改革
- 第12話:志は高く、目線は低く、ユーザー視点で
- 第11話:幸せを呼び込むタスク管理
- 第10話:変化するのは人か、 テクノロジーか、 それとも…?
- 第9話:モビリティの成功の秘訣は「型」にあり
- 第8話:ムダな会議を撲滅、 有意義な時間を創出
- 第7話:教育現場でのiPad機能制限、絶対反対!
- 第6話:モビリティの三段活用
- 第5話:悪いルーティーンを打破するiOS
- 第4話:そのプレゼンは聴く者を動かしているか?
- 第3話:情報共有はInformationからKnowledgeへ
- 第2話:目的の定まった"定着する"モバイルの活用
- 第1話:そのマニュアルは使われているか?
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