探訪!オートデスク株式会社
福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com
情報システム部門やIT担当者の主たる業務とは何だろうか?現状では、運用しているシステムに関する日々のトラブルシュートや、ユーザのヘルプデスク対応、デバイスのライフサイクル管理が日々の業務の大半を占めているのではないか。情報システム部門の存在意義は、組織内のIT戦略を立案し、ITを活用することで業務効率化を実現し、事業拡大に貢献することだと思う。しかし、企業や組織においてシャドーITと呼ばれるように、個人が利用するアプリやサービスがユーザの日常業務を助けている現実があり、情報システム部門はその対応に追われている(もしくは黙認している)。
iOSを中心としたモバイルデバイスの導入は、さまざまな業種業界に浸透し、ビジネスを拡大することにつながる。とはいえ「働き方改革」といったキーワードから、限られた時間の中で結果を残すために、ユーザはよりデバイスの活用度を高めることが求められている。
しかし、現実にはデバイスが支給され、今までの業務プロセスから変わらなく利用していることがほとんどで、モバイルの特性を活かした利用ができているユーザは少ない。携帯電話やPCの延長でiOSを利用していることが多く、既存の業務の「代替・追加」といった状況である。iOSの導入によっていきなり業務を変革することは簡単なことではない。まずは目の前の業務に対して「代替・追加」したデバイスが、業務の中にしっかり定着しているのかを見直すことが大切だ。
この背景には、導入設計やモバイルの活用検討がしっかりなされていないこともあるが、組織内にデバイスを提供し、運用する情報システム部門の関わり方も影響している。それは情報システム部門の姿勢が、導入したシステムが問題が起きてから対処するパッシブなものであるからだ。これからのIT担当者には、導入するシステムやモバイルデバイスに関して、実際の現場の業務にしっかりフィットするものかを検討し、その業務への定着化や活用支援を行うアクティブな姿勢が必要不可欠となる。
iOSというのは、使い方一つで生産性に段違いの差が出る。たとえば、フリック入力のやり方やカメラアプリのスムースな起動、エアドロップ(AirDrop)のようなデータの共有方法だ。指先一つのアクションが、その後のプロセスに影響してくる。たとえば、今すぐ写真を撮って状況報告をしたい場合、カメラアプリを瞬時に起動できるかどうかがポイントである。ロックを解除して、ホーム画面上のカメラアプリを探し、起動してピントを合わせて、シャッターを押す。このプロセスに何十秒もかかってしまっていては、必要な情報や伝えたい状況を捉えることは困難である。知っている人にとっては、なんてことはない当たり前のことだが、その方法を知らないユーザは一つ一つの所作に無駄な時間を費やしてしまうのである。生産性を高めるためには、業務上の「思考・判断・行動」のそれぞれの過程において、スピードと正確性を上げることがもっとも近道となる。
今、現場はアウトプットの質を高めることが急務だ。そこで情報システム部門やIT担当者ができることは、iOSの使い方を知らないユーザに対し、アクティブに使い方を教えることでユーザのアウトプットの価値を上げること。現場の生産性の向上に貢献することが、ユーザにとっても企業にとっても価値創造につながるのである。デバイスを導入したままに終わらせることなく、現場の一人一人の利用方法に目を向け、一つでも多くデバイスの操作を効率化できるように支援しよう。
iOSはビジネスの現場において当たり前の存在となったが、これからのITサポートの在り方を再構築することで、より付加価値のある仕事ができるようになる可能性がまだまだ残されているはずだ。
この記事は、Mac Fan連載「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年11月号)。
現場を変えるMobilityのアイデア 記事一覧
- 第30話:モバイル活用の本質を見直すタイムマネジメント
- 第29話:結果につなげる 「×考え方」のビジネス方程式
- 第28話:CXを高めるApple製品の客室導入
- 第27話:不快を味わい「学び」をアップデート
- 第26話:CYODの実現に最初に必要な Why? の問い
- 第25話:他社を真似ずに自分たちで“事例”は作る
- 第24話:「ソリューション」という幻想に惑わされない秘訣
- 第23話:AI時代のエコシステムと価値創造に必要な対等な“ツッコミ”
- 第22話:“デジタル変革”に もっとも大切な 目的の明確化と共有
- 第21話:企業の体質改善に求められるITの"目利き力"
- 第20話:心地良さの追求がIT機器導入を「変革」へと導く
- 第19話:iOSによる教育現場の化学反応
- 第18話:企業カルチャーを創り出すオフィスとiOS
- 第17話:知的好奇心を刺激する学び
- 第16話:ITサポートに求められるのは"寄り添う"姿勢
- 第15話:創造力を守るための時間確保
- 第14話:日本のEnterprise ITに足りないもの
- 第13話:形骸化させない"働き方"改革
- 第12話:志は高く、目線は低く、ユーザー視点で
- 第11話:幸せを呼び込むタスク管理
- 第10話:変化するのは人か、 テクノロジーか、 それとも…?
- 第9話:モビリティの成功の秘訣は「型」にあり
- 第8話:ムダな会議を撲滅、 有意義な時間を創出
- 第7話:教育現場でのiPad機能制限、絶対反対!
- 第6話:モビリティの三段活用
- 第5話:悪いルーティーンを打破するiOS
- 第4話:そのプレゼンは聴く者を動かしているか?
- 第3話:情報共有はInformationからKnowledgeへ
- 第2話:目的の定まった"定着する"モバイルの活用
- 第1話:そのマニュアルは使われているか?
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