パターン作成からモックアップ制作までを内製。効率化されたCMFデザインプロセスを学ぶ

レポート

2025.07.23

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 効率化が求められているデザインからサンプル出力までのプロセスを内製化 

「色(Color)」「素材(Material)」「仕上げ(Finish)」からなり、触感や質感、耐久性など、五感に訴えかける要素によって製品の魅力を高める「CMFデザイン」。ブランドイメージの向上や市場のグローバル化、サステナビリティへの貢献など、さまざまな理由でその重要性が高まる一方で、新製品のリリースやトレンドの移り変わりが加速している今、デザインのアイデアをいかに速く柔軟に形にできるかが求められています。

デザインからサンプル制作までのプロセスの効率化に向け、「Adobe Substance 3D × UVプリンターで実現する最新CMFデザインワークフローをご提案」と題したセミナーが、7月2日(水)にToo、トゥールズインターナショナル、ローランド ディー.ジー.の3社によって開催されました。

このセミナーでは、パターンデータを効率的に作る方法と、そのデータをUVプリンターで出力することで、シボの凹凸のようなリアルな質感や光沢までが表現された、高品質なサンプルをスピーディーに内製できる最新のワークフローが紹介されました 。

会場となったローランド ディー.ジー. 東京クリエイティブセンターには、実際に手に取れるさまざまなサンプルが展示され、来場者はリアルな質感を肌で感じ活用イメージを膨らませることができる空間となっていました。当日の様子をお届けします。

オリジナルかつ高品質なサンプルをつくるために 

seminar.jpg

セミナーでは、UVプリンター用のパターンデータを一から作成する方法が解説されました。
 

そもそも、UVプリンターならではの発色や凹凸感は役割が異なる複数のインク層を重ねることで生まれるとのこと。中でも、表面のシボ感や手触りはクリアーインクを載せることによって表現されます。そのため、パターンデザインにシボ感を加えるためにはクリアーインクを載せる場所と載せない場所を表すデータを作成する必要があるそうです。

従来はそのデータをPhotoshopやIllustratorで作成するのが一般的でしたが、「一度完成したパターンの再修正が難しい」「パターンの継ぎ目が目立ったり、繰り返し箇所がわかりやすい」「完成品が大きい場合、作業時からデータのサイズが非常に大きい」という課題もありました。

そのような課題を解決するのがAdobe Substance 3D Designerを使ったデータ作成方法です。有機的なパターンである革シボと幾何学パターンである和紋の作成方法を例に、具体的な作り方やコツが紹介されました。

adobe_substance.jpgAdobe Substance 3D Designerで革シボのパターンを作成している画面。
  小さな正方形一つひとつは、それぞれが効果を持つ「ノード」と呼ばれるものです。
左下では3Dで、右下では2Dでプレビューを確認することができます。

Adobe Substance 3D Designerは処理や操作を視覚的に組み立てるノードベースで設計されているため、色・質感・凹凸の微調整を自在に行うことができ、解像度も柔軟に変更することができるとのこと。ノード同士はドラッグ&ドロップで簡単に接続できるため、さまざまな効果を組み合わせることで表現の幅が大きく広がります。

sample.jpgAdobe Substance 3D Designerで作成したデータをUVプリンターで出力したサンプル

もともとAdobe Substance 3Dはゲームや映画などのグラフィック制作向けに作られたツールで、「模様を自然に何度も繰り返して使う」ことを前提とした設計になっています。そのため、パターンの境目を目立たせずきれいに仕上げることができるそうです。 

pattern.jpg2Dビューでパターンを拡大表示(左:テクスチャの繰り返し表示オフ、右:オン)。
タイリング(繰り返し)が自然に繋がるパターンを作成できます。

作成したデータは、モニター上で確認するだけでなくUVプリンターの出力データとして活用が可能です。パターンの作成からサンプル出力まで一貫した同じデータを使える点に魅力を感じました。

実際の出力物を手に取り活用のイメージを膨らませる

セミナー終了後には、ショールーム内に展示されているさまざまなプリンターで出力されたサンプルを見ることができました。興味津々にサンプルを手に取る方や熱心に情報収集されている方が多く、「サンプルを見ることで『こんなふうに使えるんだ』とプリンター活用のイメージが湧いた」という声も聞こえました。

showroom.jpg

ショールームの一角には、セミナーで紹介されたAdobe Substance 3D Designerで作成したパターンを、ローランド ディー.ジー.のUVプリンターで、トゥールズインターナショナルのクレイモデリングフィルムに出力したサンプルも展示されていました。実際に触れてみることで、シボの質感や色味、フィルムの「伸びる」「曲がる」といった特性を肌で感じることができました。 

film.jpgUV出力が施されたフィルムをプロダクトに貼ってみることができました

効率的なCMFデザインのワークフローを追求していく

CMFデザインは「ユーザー体験」を左右する重要な要素です。今回のセミナーでは、パターンデータやサンプルを内製することによって、スピーディで柔軟な製品開発を可能にする方法が紹介されました。

参加された方からは、「自社内で高品質な試作をスピーディに作りたかったため参加したが、そのイメージが具体的に見えてきた」「パターンの作成方法がわからず、UVプリンターを活用できていなかったが、これなら自社でも実践できそう」「3Dプリンターでは表現が難しかったカラーや質感などの細かな表現が、UVプリンターなら実現できそう」といった声が寄せられました。

セミナー中もメモを取りながら熱心に聞き入る姿が印象的で、多くの方が関心を持っている様子が伺えました。高い品質を保ちつつ効率化されたデザインプロセスによって、より魅力的なデザインが生まれることに胸が高鳴ります。


ローランド ディー.ジー.株式会社
株式会社トゥールズインターナショナル

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