現場を変えるMobilityのアイデア

第26話:CYODの実現に最初に必要な Why? の問い

コラム

2021.11.25

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Mac Fan誌で2015年12月号から2018年12月号まで連載。
仕事や学びを変えていく、明日から使えるヒントがここにあります。

福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com

仕事で使うMacはクリエイティブの現場や専門性の高い仕事、医療機関など、特定領域での導入がほとんどであった。しかし、企業内でMacを採用する話題が最近盛り上がっている。Mac導入によってTCOを削減したIBMの事例をきっかけに、日本企業でも社員の利用するPCの1つにMacも加えようという流れである。

これは一般的にCYOD(Choose Your Own Device)と呼ばれる導入方式で、社員が利用するPCについて選択プログラムを導入するということである。先月開催されたアップルデバイスの管理ソリューションを提供するJamf社のユーザカンファレンスでも、このIBMの事例に倣い、SAPやキャピタルワン、ウォルマートがMacの利用について選択プログラムの導入を始めていると発表された。

選択プログラムの導入効果は、IBMの事例にあるように、Macを導入するほうがウィンドウズPCを利用し続ける場合と比較してもトータルコストが安い、といったものだけではない。たとえば、社員が「選択できる」ということは、より仕事にフォーカスできる環境が整い、生産性が向上することにつながる。人事部や採用担当者にとっては有能な人材を惹きつけ、定着させるために選択プログラムが有用となる場合もあるだろう。さらに、企業が多様性を認めることは、企業が社員一人一人がゴールに向かって取り組むことについて、全面的にサポートしていることの意思表示も兼ねており、企業文化自体を変化させる可能性も秘めているのだ。

ただし、単に導入すれば効果が自然に生まれるものではない。

選択プログラムの採用について、最初に考えなければならないことがある。それは、「Why?」(なぜ選択プログラムを導入するのか、Macを使いたいのかを考えること)だ。ハードウェアのスペックや使用するアプリケーション、互換性、セキュリティ、サポートなどIT機器の導入検討には考えなければならない要件が膨大にあるが、後々そういった要件の渦に飲み込まれないためにWhy?から考え始めることが何よりも大事である。そして、そのためには、まず目的と目標が必要となる。目的は「Macを導入してどんなカルチャーを作り、社員にどうあって欲しいか?」。目標は、「いつまでに××を成し遂げる、到達するか」である。このWhy?から始めるアプローチは、どんなプロジェクトやタスクを進めるうえでも大事なことである。

それを導き出すためには、社内でiOSデバイスを導入・サポートしたときの経験が役立つこともあるかもしれない。すでにMacを利用している社員からのフィードバックも重要だ。選択プログラムをスタートしたときのコミュニティの醸成にもつなげるために、Mac導入の際には早い段階でアーリーアダプターを巻き込むことも重要といえる。

企業によってこのWhy?は異なるはずで、社内で課題の共通認識を形成することがスタートとなる。課題設定のアプローチは、まずはギャップを認識することから始めよう。ギャップとは理想と現実から生まれる。たとえば、経営の目指すべき姿と日々の現場業務のように、経営陣の強いイニシアチブや目標設定だけでは理想を形にすることはできず、そこには現場の業務遂行能力が必要だ。しかし、現場では目の前の業務を処理することに精一杯になってしまい、少しでも日々の業務の軽減を望んでいる。この経営と現場のギャップを「Meet in the Middle(中間で一致させる)」することが課題設定の第一歩だ。

自分自身の中にあるWhy?を考え抜き、なぜを可視化する。そして、他とのギャップを認識し、課題設定することが目的や目標を達成するうえでもっとも大事なアプローチなのだ。


この記事は、Mac Fan連載「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年11月号)。

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