現場を変えるMobilityのアイデア

第30話:モバイル活用の本質を見直すタイムマネジメント

コラム

2022.06.06

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Mac Fan誌で2015年12月号から2018年12月号まで連載。
仕事や学びを変えていく、明日から使えるヒントがここにあります。

福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com

会議やミーティングなどで、業務やタスクの成果を報告する場面は誰にでもあると思う。こうした進捗報告には意思決定に関わる重要な情報が含まれているため、おざなりにしてはいけないし、正確かつスピーディに行わなければならない。

報告する側のスキルとして求められることは、相手のタイミングを見計らって短時間に重要な情報を的確に伝えること。報告を受ける側は意思決定に必要な情報が報告に含まれるように、チームメンバーやパートナーに対して、自分の意思決定に必要な情報が何であるかを共有することである。

この報告業務というのは、企業や組織の中で数多く行われる会議やミーティングの中で、もっとも時間を奪っているものではないだろうか。会議中に自分の関わる案件とは無関係の情報を聞いているのは時間の無駄である。だから、他の人が話している間にメールを確認したり、チャットをしたりといった「会議内内職」が助長され、会議自体が形骸化してしまう。モバイルデバイスが普及し、業務に浸透してきた今だからこそ、モバイル活用の本質を見直すきっかけとして、今回は「時間の管理」について考えたい。

ビジネスの現場でもっとも重要なことは、顧客や社会に対してどれだけの価値を発揮できているかだ。企業のマーケティングの本質ともいわれる「価値の交換活動」のすべては、相手の時間をどう扱うかで決まる。今は、誰もが手元にモバイルデバイスがあり、いつでもどこでも情報にアクセスできる状態であり、いつでもどこでも相手につながることが可能な時代だ。

それをポジティブに捉えれば、今まで以上に場所や時間を超えて業務を行うことができ、行動範囲が広がることになる。しかし、それをネガティブに捉えれば、いつでもどこでもできるといった安心感から、いつまでもやらないという事態を生んでしまう。

つまり、一人一人のモバイル活用次第で、この「いつでもどこでもつながること」は異なる結果を生む。中でも注意したいのは、相手の時間を奪ってしまい、企業活動の価値を下げてしまうことである。自分の意思決定や判断を求めるがあまり、相手に対して何度も電話したり、メッセージを送ったりすることが、本当に生産性を高め、良い結果を導くことになるだろうか。ビジネスにおいて時間はもっとも重要なリソースであり、取り戻すことができないものである。限られた時間で成果を上げることが求められる中で、相手の時間を奪うということはもっとも罪深い行動だ。

企業は製品やサービスを開発し、顧客に提供することで、相手の時間を生み出している。製品やサービスの利用者は、その対価を支払うことで、空いた時間を他のことに使うことができる。クリエイティブでいるために自分の時間を確保することが、モバイル活用の目的であってほしいと思う。時間を意識するからこそ、モバイルデバイスを利用することが何を生み出しているのかも常に意識してほしい。

テクノロジーが浸透すればするほど、人の心に訴えるような情熱や人間味のようなものが企業や組織の変革の原動力となる。モバイル活用の本質を見直すということは、いつでもどこでもつながることが可能になった相手の時間を、どのように扱っているかを考えることから始めよう。モバイルデバイスを通すことで、相手の状況やタイミングを意識することが希薄になり、つながることが当たり前でビジネスが進む時代になった。

だからこそ、誰しもが限られたリソースである「時間」を管理できるようにするためのモバイル活用のセンスを身につけてほしい。センスを磨くためには、自分自身の創造的な時間を誰かに奪われないようにしている行動が、つながっている相手にも存在しているのだと認識することから始まる。


この記事は、Mac Fan連載「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年11月号)。

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