探訪!オートデスク株式会社
福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com
京セラやKDDIの創業者として有名な稲盛和夫氏の「人生方程式」をご存知だろうか?人生や仕事の結果は、「考え方×熱意×能力」で表されるというものである。
「熱意」はやる気や覇気、情熱など、「能力」は生まれ持った知能や運動神経、健康などを指す。これに「考え方」が掛け算されることで結果は決まるという。つまり、能力や熱意は高くてもマイナスの「考え方」を持っていれば大きなマイナス=良い結果を残せないというわけだ。
今、企業や組織には一人一人の働き方を尊重できる基盤や環境作りが求められている。働き方の基盤とは、オフィスや自宅、カフェなど、モバイルやクラウドを活用して、いつでもどこでも柔軟に働くことができる環境のことである。そして、それと同時に求められていることは、正しいITデバイスの使い方を定着させることである。その結果として企業や組織は成長し、一人一人にふさわしい働き方の実現につながる。
昨今話題の尽きない「働き方改革」においても、この人生方程式が当てはまるのではないかと思う。改革とは、基本的な基盤は維持しつつ、組織や制度を改め変えることである。働き方において、「熱意」はこうありたいと思う気持ち(ありたい姿)を指していて、ありたい姿を実現するための知識やスキルに当たるのが「能力」といえる。
そして「考え方」の部分は、企業や組織が提供するITデバイスの「正しい使い方」である。間違った使い方を提供していては、社員の熱意や能力がいくら高くても、マイナスな結果しか生み出せない。社員が望む人生や仕事の結果を実現するためには、基礎となるITデバイスをいかに正しく使ってもらうかを考え抜き、それを実際に定着させることが重要なのである。
では、ITデバイスの正しい使い方とは何か?それは、ITデバイスやアプリの操作方法や機能を理解することではない。大事なのは、それが「ビジネスにおける目的を達成するために使われているか」である。顧客や社会に対してどのような価値を提供できているかを考え抜くことが基本にあり、その目的を実現するために目標を設定し、目標を達成するために仕事を仕組み化したり、ルーティーンを作って、業務やタスクをこなしていく。この仕組み化された業務やタスクをこなすためにこそ、ITデバイスは利用されるべきなのだ。まだまだITデバイスの活用自体が目的化している企業や組織は多く、内部的な効果ばかりを気にしているような状況が見受けられる。
提案書を作成する業務ひとつを取ってみても、「資料の質<思考の質<行動の質<成果の質」の順で結果の良し悪しは決まる。ビジネス成果を上げるためには、単なる資料作成とはいえ、「質」にこだわる必要があるし、それは意思決定や行動を決めるためのものでなくてはならない。つまりそこに辿り着くためには、思考の質をまず上げなければならない。思考のためにいかに時間を捻出するかが、これからの働き方に求められていることである。
これからの時代はクリエイティブな時間を生み出すためにAI(人工知能)のようなテクノロジーが活用されていく。ビジネスにおけるAI活用にしても、より良い考えを生み出すために情報の予測や識別のためにAIが利用されたり、同じことを繰り返し作業するようなものがRPA(Robotics Process Automation )により自動化されていく。
ビジネスで成果を上げ、より良い人生を送るためにプラスの「考え方」を身につけようとするならば、ITデバイスの正しい使い方やAI活用の勘所を知らなければならない。正しい「考え方」を身につけることで、一人一人の熱意や能力が掛け算され、これまでにないビジネスの結果を生み出すはずだ。
この記事は、Mac Fan連載「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年11月号)。
現場を変えるMobilityのアイデア 記事一覧
- 第30話:モバイル活用の本質を見直すタイムマネジメント
- 第29話:結果につなげる 「×考え方」のビジネス方程式
- 第28話:CXを高めるApple製品の客室導入
- 第27話:不快を味わい「学び」をアップデート
- 第26話:CYODの実現に最初に必要な Why? の問い
- 第25話:他社を真似ずに自分たちで“事例”は作る
- 第24話:「ソリューション」という幻想に惑わされない秘訣
- 第23話:AI時代のエコシステムと価値創造に必要な対等な“ツッコミ”
- 第22話:“デジタル変革”に もっとも大切な 目的の明確化と共有
- 第21話:企業の体質改善に求められるITの"目利き力"
- 第20話:心地良さの追求がIT機器導入を「変革」へと導く
- 第19話:iOSによる教育現場の化学反応
- 第18話:企業カルチャーを創り出すオフィスとiOS
- 第17話:知的好奇心を刺激する学び
- 第16話:ITサポートに求められるのは"寄り添う"姿勢
- 第15話:創造力を守るための時間確保
- 第14話:日本のEnterprise ITに足りないもの
- 第13話:形骸化させない"働き方"改革
- 第12話:志は高く、目線は低く、ユーザー視点で
- 第11話:幸せを呼び込むタスク管理
- 第10話:変化するのは人か、 テクノロジーか、 それとも…?
- 第9話:モビリティの成功の秘訣は「型」にあり
- 第8話:ムダな会議を撲滅、 有意義な時間を創出
- 第7話:教育現場でのiPad機能制限、絶対反対!
- 第6話:モビリティの三段活用
- 第5話:悪いルーティーンを打破するiOS
- 第4話:そのプレゼンは聴く者を動かしているか?
- 第3話:情報共有はInformationからKnowledgeへ
- 第2話:目的の定まった"定着する"モバイルの活用
- 第1話:そのマニュアルは使われているか?
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