探訪!オートデスク株式会社
福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com
「モバイルファースト」という言葉が登場して久しい。ビジネスにおいて、WEBやコンテンツ、業務に必要なツールを提供する際に、PC環境ではなく、モバイル環境での利用を優先して対応する、という考え方である。今や、通勤電車の車内でも空港の搭乗口の待合室でも、あらゆる業務やコンテンツの閲覧をモバイルデバイスで行うことに、何の違和感もなくなってきた。人の手にモバイルデバイスがない状態のほうが違和感を感じる。一方で、シンギュラリティ(技術的特異点)が世間で騒がれているように、人工知能やVRが発達し、人が行うものがどんどんテクノロジーの進化によって置き換えられていることも、また事実である。
このように、テクノロジーは日々気づかないうちに、我々の日常生活の中に入り込み、我々の行動を変化させている。では、これからどのようなマインドセットを持って、変わりゆく時代に対応すればいいのか。
以前、私が拝聴したセミナーの登壇者の言葉である。
「変化の激しい、変化のスピードが速い時代に、安定した人生はない」
この言葉を聞いて、私が現在取り組んでいるエンタープライズモバイルの世界も同様であると感じた。業務用アプリの開発やデバイスの導入、MDMなどの運用管理に限らず、ウェアラブルデバイスやIoTなどモバイルと連係するテクノロジーが広がりつつあり、モバイルデバイス単体での利用体験から、モバイルデバイスが起点となって周辺のものと連動し、拡張する利用体験へと変わりつつある。
こうした移り変わりの早い時代において今を生きる我々は、時代の変化に適応する「術」を身につけなければならない。特に、ビジネスにおいて変化に適応したモビリティを実現するためには、事前の準備がすべてである。そして、それに必要なものは「戦略」だ。辞書で調べてみると、戦略とは「長期的・全体的視点に立った戦うための準備・計画・運用の方法」とある。
個人的に、モビリティ導入の戦略には次の4つが重要な検討事項であると思う。「①トレンドをつかむ」「②強みにフォーカスする」「③圧倒的な差別化」「④継続性」だ。まず時代の流れをつかみ、これから先どのような働き方を実現したいかをイメージする。次に、自社の強みを理解し、そこを活かす活用方法を検討する。競合他社をマネするような、他社の導入事例を取り入れるのではなく、時間的な差別化(先手必勝)で、圧倒的な差を実現する。そして最後に、その取り組みを継続する。
このような新しい取り組みには、マインドセットも変える必要がある。今までの仕事のやり方自体をどう変えるか。検討フェーズでは、既存の業務プロセスにとらわれず、いかに他者を巻き込むかがポイントだ。ルールを作るのではなく、どうルールを変えるか。新しい取り組みに対し、寛容な環境が求められる。実行フェーズでは、小さな積み重ねが大きな結果を生み出すことにつながる。一発逆転で大きな成功を掴めることはなく、小さな成功体験の積み重ねが大きな成果となって返ってくる。
時がいくら流れようとも、変化の主体は「人」でなければならないし、テクノロジーは我々の生活により良い変化をもたらすツールでなければならない。しかし、現実社会ではテクノロジーに振り回されることも多い。だから、人工知能が仕事をしてくれる世の中になったとき、働き方をどのように変えていこうか、日々生きていくことの何に意義を見出していこうか、ということは今から考え抜かなければならない。
最後に、マハトマ・ガンジーが言ったとされる言葉「Be the change that you wish to see in the world.」で締めくくりたい。「見たい世界があるのなら、あなた自身がその変化になりなさい」。まさに、我々は 変化を生み出す側にいるのだと。
この記事は、Mac Fan連載「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年9月号)。
現場を変えるMobilityのアイデア 記事一覧
- 第30話:モバイル活用の本質を見直すタイムマネジメント
- 第29話:結果につなげる 「×考え方」のビジネス方程式
- 第28話:CXを高めるApple製品の客室導入
- 第27話:不快を味わい「学び」をアップデート
- 第26話:CYODの実現に最初に必要な Why? の問い
- 第25話:他社を真似ずに自分たちで“事例”は作る
- 第24話:「ソリューション」という幻想に惑わされない秘訣
- 第23話:AI時代のエコシステムと価値創造に必要な対等な“ツッコミ”
- 第22話:“デジタル変革”に もっとも大切な 目的の明確化と共有
- 第21話:企業の体質改善に求められるITの"目利き力"
- 第20話:心地良さの追求がIT機器導入を「変革」へと導く
- 第19話:iOSによる教育現場の化学反応
- 第18話:企業カルチャーを創り出すオフィスとiOS
- 第17話:知的好奇心を刺激する学び
- 第16話:ITサポートに求められるのは"寄り添う"姿勢
- 第15話:創造力を守るための時間確保
- 第14話:日本のEnterprise ITに足りないもの
- 第13話:形骸化させない"働き方"改革
- 第12話:志は高く、目線は低く、ユーザー視点で
- 第11話:幸せを呼び込むタスク管理
- 第10話:変化するのは人か、 テクノロジーか、 それとも…?
- 第9話:モビリティの成功の秘訣は「型」にあり
- 第8話:ムダな会議を撲滅、 有意義な時間を創出
- 第7話:教育現場でのiPad機能制限、絶対反対!
- 第6話:モビリティの三段活用
- 第5話:悪いルーティーンを打破するiOS
- 第4話:そのプレゼンは聴く者を動かしているか?
- 第3話:情報共有はInformationからKnowledgeへ
- 第2話:目的の定まった"定着する"モバイルの活用
- 第1話:そのマニュアルは使われているか?
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