design surf seminar 2020

コロナが加速させたバーチャルビジネスの新潮流

レポート

2020.12.10

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大坂武史

Activ8株式会社
Founder / CEO

バーチャルタレントKizuna AIを生み出し、世界的にエンタメのイノベーションを牽引しているActiv8 Inc.のFounder / CEO。仮想世界(Metaverse)の実現による「生きる世界の選択肢を増やす」をVisonに掲げ、xRやインタラクションストリーミング等、先端技術とプロデュースノウハウを駆使しエンターテインメントの未来を開拓し続けている。

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2020 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2020年11月3日(火)~6(金)にオンラインで開催しました。環境が激変した今年のdesign surf seminarは、より身近でよりいまに近い「ビジネスやクリエイティブ、デザインという仕事のいまを共有し合おう。」をテーマにしました。今年は全国からたくさんの方にご参加いただき、オンラインながら盛況のうちに幕を閉じることができました。当日のセミナーレポートをお届けします。

ウェブメディアにおいて3Gがテキストの時代、4Gが動画の時代だとすると、5GはxR(ARやVRの総称)やインタラクティブストリーミングといった「ディープコンテンツの時代」になると言われています。コロナ禍で人々の生活が変化する中、イベントやショッピングといった「コト」はもちろん、コンテンツの主役であるYouTuberやインフルエンサーといった「ヒト」もまたバーチャル化(VX)しています。そんな時代の「今」を探るべく、Activ8株式会社の大坂武史氏に「バーチャルビジネスの新潮流」と題し、お話しいただきました。

コロナ禍が企業のイベント活動に与えた課題

大坂武史氏は、バーチャルタレントKizuna AI(キズナ・アイ)をリリースし、2018年に世を席巻した「VTuber」ブームの立役者ともいうべき人物。現在はバーチャルIPプロデュース事業やVX事業を展開するActiv8株式会社のFounder/CEOを務めています。design surf seminar 2020では、深度カメラを用いてリアルタイムで生成される3D空間の中に大坂氏が入り込む形で、まさにリアルとバーチャルが交錯した空間からプレゼンテーションが行われました。

この日のトピックは「コロナが加速させたバーチャルビジネスの新潮流」。design surf seminarもオンライン開催となったように、未だコロナ禍が収束しない今、セミナーやイベントがオンラインで開催される必然性はますます高まっています。 コロナ禍によって企業のイベント活動が「リアル会場で開催できなくなったこと」により、次の3点の課題が発生したと大坂氏は指摘します。

・物販収入が得られない
・販促/新規顧客を獲得できない
・コミュニティの熱量を高められない

これはエンタメ業界に与えた影響とも相関性があり、「ライブができないこと」により次の3点の課題が発生しました。

・チケット/物販収入が得られない
・ライブ体験を提供できない
・ファンの熱量を高められない

こうした課題への対応として、企業活動では「ウェビナー」や「VR内イベント」が行われるようになり、エンタメ業界では「動画配信型ライブ(無観客ライブ)」が行われるようになりました。その結果ポジティブな成果も生まれており、人気アイドルグループのオンラインライブでは、総視聴者数が1,000万人を記録したとも言われています。

1,000万人という数字は、国立競技場125個分もの規模にあたるもの。莫大な利益が生み出されたことが推測されますが、同時に、そこには新たな問題が発生していると大坂氏は述べます。

オンラインイベントを成功に導く3つのソリューション

まず、1つ目の問題は「ファンがリピートしない」という懸念。オンラインライブが新鮮な現在では、物珍しさにファンが飛び付いている側面があり、果たしてそれがリピートに値する体験になっているのか、厳しく精査する必要があると指摘します。

続いて、2つ目の問題は「顧客単価が下がる」というもの。大坂氏によると、リアルイベントにおける顧客単価は1万円弱ほどが平均値だが、オンラインでは3,000~4,000円程度が主流であり、さらに貴重な収益源である物販もオンラインでは困難であるという問題があります。

最後に挙げられるのは「ファンの消費になっていないか?」という問題。オンラインイベントの場合、どうしてもファンは一方的に「見ているだけ」の傍観者になりがち。それがライブとして本当に熱量をもった体験になっているのか、「リアルライブの劣化版」になっていないかを問う必要があるでしょう。

これらに対し、大坂氏は3つのソリューションを提案しました。

1つ目は「ライブ感」を創出すること。2020年5月にZepp DiverCity(東京・江東区)で開催されたKizuna AIのワンマンライブでは、バーチャルタレントのKizuna AIが観客の声に応じたリアクションを見せるなど、インタラクティブなやり取りが「ライブ感」を醸成し、ファンの満足度を高めました。

2つ目は「一体感」や「共創感」を生み出すこと。現在、Activ8が開発しているVRライブでは、観客が仮想空間で自由に歩き回ったり、アーティストに対する感情を拍手で表現したり、お金を払うこと(ギフティング)によってライブの背景に花火を打ち上げたりすることができるそうです。 こうした「演出への関与」は、観客を傍観者から当事者へと変化させ、その場に参加している感覚を生み出すことにつながります。こうした効果は「ギフティング」だけでなく(ライブ配信では既に定番化している)「投げ銭システム」によっても生み出すことができるものです。

そして、3つ目に挙げられるのは収益を最大化するための仕掛けをつくること。先に挙げた内容とも一部重複しますが、たとえば「投げ銭」や「ギフティング」は直接収益に結び付くほか、観客がお金を払うことで自身の名前がライブ空間に表示される「プロダクトプレースメント」は、収益のみならず「ライブ感」も生み出し、ユーザー満足度を向上させるなど、複数の副次的な効果をもつとのことでした。

来たるべくバーチャルシフトに備えて

セミナーが終盤に差し掛かると、大坂氏は「生きる世界の選択肢を増やす」というビジョンのもと、「メタバース(仮想世界)を生み出す」ことを目指していると話し始めました。

具体的には、IP(人気者コンテンツ)事業やVR事業を展開することによって、「リアルとデジタルを統合した仮想世界を人々が共有している状態」をより一般化していきたいとのこと。現時点ではまだ完全な仮想世界は存在しないものの、たとえばオンラインゲームの「Fortnite」やゲーム作成プラットフォームの「ROBLOX」など、部分的な仮想世界は既にいくつか生まれており、世界で大きな影響力を発揮し始めています。

そして、仮想世界を創出する上でも共時性、インタラクティビティ、実在感、バーチャルでの人格などの要件が必要となるそうで、これはオンラインイベントに求められるソリューションと共通しています。つまり、コロナ禍におけるイベント活動を考える上でも、来たるべく(5G時代のスタンダードになりうる)「バーチャルシフト」に備えるという意味でも、「オンラインイベントの質的向上=バーチャル体験を吟味すること」がこれからの未来を考える鍵になると大坂氏は語ります。

その上で、リアルイベントと同等以上の価値を生み出すためには「ライブ感」の向上、そして「一体感」や「共創感」を生み出すことが重要です。さらに、今回紹介された事例の多くがライブイベントであったように、そもそも音楽は時代を超えて豊かな体験を生み出し、普遍的に通用するコンテンツであるため、これからの課題を考える上で有効な事例になりうるとのことでした。

コロナ禍や5Gの登場によってバーチャルシフトがますます進行する今、未来を見渡せるような具体的な事例とソリューションの数々をお話ししていただきました。


Activ8株式会社
Kizuna AI

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