design surf seminar 2020

“変化” の時代のキャリアを考える 〜なぜ “デザイナー” なのか

2020.12.02

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Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2020 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2020年11月3日(火)~6(金)にオンラインで開催しました。環境が激変した今年のdesign surf seminarは、より身近でよりいまに近い「ビジネスやクリエイティブ、デザインという仕事のいまを共有し合おう。」をテーマにしました。今年は全国からたくさんの方にご参加いただき、オンラインながら盛況のうちに幕を閉じることができました。当日のセミナーレポートをお届けします。

今年は新型コロナウイルスの影響もあり、生活様式に大きな変化が起きました。働く環境や価値観などが変化し続ける中、「自分にとってのデザイナーの意味」を手がかりに、キャリアデザインについて考え、そのヒントを探って行くセッションとなりました。

このセッションでは、デザイン会社である株式会社コンセントから3名が登壇してくれました。約18年にわたりデザインの仕事を続け、今年から人事・労務部のマネージャーに就任したアートディレクター國分結香氏、入社から5年でさまざまな媒体のデザインを行いながらアーティストとしての活動もしているデザイナー佐々木愛実氏、ファシリテーターとして広報担当者でありながら今秋の国家資格キャリアコンサルタント試験合格を目指す岩楯ユカ氏です。また、デザイナー・ディレクターである長沼千夏氏によるグラフィックレコーディングで、本セッションの内容が可視化されました。

「自己理解」と「変化の捉え方」から考えるキャリア

はじめに「変化の時代のキャリアを考える」というテーマ設定の背景について語られました。デザイナーの中には、AIや技術が進化して仕事が奪われるのではないか、その中でどのようにキャリアを積めばいいのか、悩みを抱えている人が少なくありません。特に今年はコロナ禍で働き方や生活様式が変わり、世界規模で価値観の変化を一人ひとりが感じている今、あらためてキャリアについて考える時間にできたらということでした。

セッションのキーワードとして
1.自己理解
2.変化の捉え方
の二点が挙げられました。

1.の自己理解については、キャリアには無数の選択肢があります。変化が激しい時代において、自分の価値観や興味を理解していなければ、簡単に流されてしまうとのこと。自己理解によって、ブレのないキャリア選択の軸になると語られました。

2.に関しては、変化が起きてもその捉え方によって行動の選択が変わります。行動が変わると得られる結果も異なります。変化をどのように捉え自分のキャリアにするかが重要だと述べられました。

自己理解:デザイナーである意味と価値

自分のセルフイメージをしっかり持つことが自己理解につながるとのこと。「デザイナーという職種を選んだ理由は?」という質問に佐々木氏が答えました。

佐々木氏は、幼い頃から絵を描いたり物を作ったりといった視覚表現が好きだったとのこと。大きな転機になったのは、東日本大震災でした。大学時代にボランティア活動に参加した際に、初めて顔を合わせる人たちとの会話でこれまでの自分にはなかった価値観に出会い、デザインで何ができるか改めて考える体験となったそうです。ボランティアの帰り道、見慣れているはずの道がまったく違う景色に見えて、感動して涙を流したエピソードが語られました。これをきっかけに、いろいろな人の価値観と共鳴し、視座を広げたいと思ったと語ります。この経験が背中を押すきっかけとなり、進路選択の際に、たくさんの人とコミュニケーションが取れるデザイナーを選んだそうです。

続いて「デザイナーの意味と価値」について、18年間デザイナーとしての仕事を続けている國分氏が答えました。

同じ仕事を続けることができるモチベーションや、デザイナーの仕事への魅力について國分氏は語ります。入社したばかりの頃は表面的なデザインにとらわれがちだったと話す國分氏。しかしながら、キャリアを積み重ねるうちに、デザインは課題解決の役割を担っていると感じたと述べます。アートとは異なり、デザインのその向こう側にはクライアントが、さらにその先にユーザーが存在し、課題を解決することによって人に喜ばれ、人の役に立てることが魅力であると話します。そこに喜びを感じているからこそ、デザイナーとしてのキャリアを続けられているとのことです。

「自己理解」へのまとめとして岩楯氏からの、「デザイナーである一番の意味や価値を一言で表すと?」といった問いかけに対して、佐々木氏からは「自分の人生を成長させる要素が詰まっている、ポジティブに生きるための要素のひとつ」。國分氏からは、「人に喜んでもらい、人の役に立てるのがデザイナー」と語られました。

変化の捉え方:変化からキャリアの意味を見出す

続いて話題は変化の捉え方に移ります。「これまでにどんな変化があったのか?それに対してどう行動したのか」について話し合われました。

國分氏は、18年間のキャリアでたくさんの変化があったと語ります。異動での環境の変化、転職での変化、役職の変化、そして表現媒体での変化などが挙げられました。最近の変化は、今年の人事・労務部マネージャーへの就任だと述べます。絶えず新しい変化に挑んでいますが、変化には不安がつきもの。逃げずに進み続けることに意味があると語られました。

佐々木氏は、コロナ禍で在宅勤務が続き気分が沈みがちだった時期に「朝の朝食にこだわる」というルーティーンを作りました。頭をクリエイティブに切り替えるスイッチとして、自分の機嫌を自分で取るマインドコントロールの重要性に改めて気がついたそうです。ネガティブなコロナ禍が、ポジティブを生むきっかけにもなり得ると語りました。

consent2.png在宅勤務期間中、佐々木氏が朝食に作成したトーストアート。総枚数は70枚以上に上るとのこと。

二人の話を受けて岩楯氏からは、変化から自分なりの意味を見出すことで、クリエイティブな行動につながったのではないか、捉え方次第で自分らしいキャリアにつなげることができるとまとめられました。

偶発的な出来事がキャリアの機会に

続けて、変化を自分らしいキャリアに活かすヒントとして、心理学者ジョン・D・クランボルツ氏の「計画された偶発性理論」が紹介されました。岩楯氏がキャリアについて悩んでいた時期、この理論を深め実行し、立ち直ったことがあったそうです。すべての人のキャリアにおいて、予想しない偶発的な出来事が重要な役割を担っていると言われてもいるとのこと。偶発の出来事をキャリアの機会として創造・利用するための5つのスキルが紹介され、これらのキーワードを参考にしながら、キャリアを築いてきた中でどんな傾向がありそうか、気になることなどディスカッションが続きました。

consent_1.jpgジョン・D・クランボルツ氏の「計画された偶発性理論」を紹介した当日のスライド。

國分氏は、4.楽観性以外は以前に比べたらより身についてきたと話します。中でも1.好奇心と3.柔軟性の二つの要素によって、環境や表現手段の変化に対応できているとのことです。また、デザイナー職とは一線を画すように見える人事・労務部のマネージャー職も、「課題解決」という意味で組織のデザインとして捉えていると語りました。

後悔することが何よりも悔しいと語る佐々木氏は、1.好奇心と5.リスクテイキング/冒険心が強く現れているとのこと。常に現状に満足しないようにしているそうです。失敗した方が清々しいという心持ちで、トライアンドエラーを繰り返していると語りました。

キャリアのオーナーは自分自身

セッションの最後には、design surf seminarにちなんで佐々木氏が描いたサーフィンのイラストが表示されました。波は、回転がかかったり、激しくなったり穏やかになったり、常に変化を続けています。波(=変化)をボート(=自身の価値観)で乗りこなしていく姿勢が、自分の人生をデザインする上で重要だと語ります。これを受けて岩楯氏は、価値観は成長する、成長させるものだと思うので、「デザイナーである意味や価値を考えてみる」ことを、忙しい毎日でも継続的に繰り返すことが大切だと振り返ります。キャリアのオーナーは自分自身。自分が腑に落ちてOKサインを出せることが大切だと締めくくられました。

consent_nami.png常に変化を繰り返す波(=変化)を、自分がコントロールするボート(=価値観)で乗りこなしていく姿勢を表現。

また、最後には本セッションのグラフィックレコーディングが表示され、今日のテーマを抽象化して考える手助けとなりました。自分自身を理解し軸を持つことの重要性や、日常で変化に出会うことがすでにチャンスなのだと、改めて考えるきっかけとなるセッションとなりました。

consent_4.jpg長沼氏によるグラフィックレコーディング


グラフィックレコーディングのタイムラプスはこちら
株式会社コンセント

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