探訪!オートデスク株式会社
今井 保氏
TOHOマーケティング株式会社
管理本部副本部長 兼 情報システム部部長
1993年 東宝株式会社入社。現在、TOHOマーケティング株式会社に勤務。経営学修士(MBA)。中小企業診断士として多くの企業の支援を行うと共に、広告代理業の企業内診断士として様々な社内改善を行う。また映画・演劇業界で培ったプレゼンテーションテクニックを広める講師としても活躍中。
Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2021 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2021年11月2日(火)・4(木)・5(金)の3日間オンラインで開催しました。今年のdesign surf seminarは、よりリアリティのある形で、次の時代への取り組みをテーマにしたセミナーが集まりました。全国からたくさんの方にご参加いただき、オンラインながら盛況のうちに幕を閉じることができました。当日のセミナーレポートをお届けします。
デザイナーも含めた全社員が自分の好きな場所・時間で働くことができるTOHOマーケティング株式会社。中小企業診断士としての顔も持つ今井保氏は、自社の働き方改革に取り組み、この環境を作るために奮闘しました。どういった順番で改革を進めていったのか、苦労した点や工夫したポイントなどを赤裸々に話していただきました。
もう昭和のワークスタイルはやめましょう
TOHOマーケティング株式会社はエンターテインメントに特化した問題解決型企業で、親会社は東宝株式会社です。社員120人程度の「まさに普通の中小企業」で、「世の中よりちょっとだけ先を行く」を経営方針としています。今井氏曰く「先進的過ぎず、ちょうどいいくらい」な施策の実例は、多くの企業の幅広い人々の参考になったと思います。
企業内のサラリーマンと中小企業のコンサルの二足のわらじで活動している今井氏ですが、社内の上下関係がある中で説得していかなくてはいけない、自社の改革が一番難しいとのことです。そんな今井氏の取り組みを6つの項目に分けて紹介しました。
企業はビジネスの仕組みを根本から変えるよう国から求められている中、TOHOマーケティングが考えたのは以下の3段階での働き方の改革でした。
- 第1段階 長時間労働の改善
- 第2段階 多様な働き方の実現
- 第3段階 生産性向上とイノベーション
そこで出てきたのは「もう昭和のワークスタイルはやめましょう」というフレーズです。昭和のワークスタイルとは、スーツを着て、毎日満員の通勤電車に乗って会社に出社し、自分のデスクに座って仕事をし、終わったらまた電車に乗って帰宅すること。今はIT機器が発達・普及し、自宅でも会社と同等の業務やコミュニケーションが行えるようになっているので、いまだに昭和のワークスタイルを続ける必要はないという提案です。
テレワークを選択できない従業員がいない会社を目指したい
働き方改革における3つの自由として紹介されたのがフレックスタイム/フリーアドレス/テレワークです。いつ、どこで仕事をしても良く、最も快適で効率的な働き方を自分で選択できる働き方になります。
特に始めるのが大変なのがテレワークですが、「今日の仕事は出社するよりもテレワークの方が生産性が上がる」と判断したときに、テレワークを選択できない従業員がいない会社を目指したいと考えたそうです。
また、この3つの自由はあくまでも手段であり、手段と目的とを取り違えないようにというのも、今後取り組む企業にはとても参考になる言葉だと思いました。テレワークも手段であり、何か目的が達成されるからテレワークを導入するという考え方になります。
デザイナーはテレワークに向いている職種のはず
実はTOHOマーケティングでは、デザイナーはまだフリーアドレスを始めていません。しかし、2022年からは実施できる手応えを感じているそうで、それはデザイナーへテレワークを導入できたからです。
デザイン制作部の部長がまず自らMacBookがデザインワークに使えるかを試してみて、使えると確信したので全員のマシンをMacBook Proにしたそうです。会社でも家でも使える上、客先でデザインを見せて、簡単な修正はその場でできたりとメリットは大きいとのことでした。
さすがにMacBookのモニターだけではデザイン作業には作業領域が狭いので、外付け用にディスプレイを会社と自宅に用意するなどの工夫は必要ですが、デザイナーのテレワークを推進するにはMacBook Proの導入が最初のステップになりそうです。
一般的にテレワークは自己完結性の高い職種に適していると言われていて、本来デザイナーはテレワークに向いている職種のはずとのことでした。
フリーアドレスに「仕事がしづらい」とやってもないのに猛反対
多くの企業が組織図通りに職場の席を配置していると思いますが、縦割り意識が強くこれからの時代に必要な部門横断的な協働環境には向きません。これをやめてフリーアドレスにすることを提案したところ、賛成したのは2人くらいで百数十人の社員が反対し、役員も反対したそうです。
「これじゃ仕事がしづらい」「今のままでいい」「うちの会社に合わないことをするな」といった意見が出たとのことですが、実際にやってみると反対の声がなくなり、やはりフリーアドレスの良さを実感したそうです。
進めるにあたってはジョン・コッターの「組織変革のための8段階のプロセス」を実践したとのことです。いきなり大きなことを提案するより、小さいことから始めると意外とうまく行くという体験談は大きなヒントとなることでしょう。また、プロジェクトチームを作って進めたというプロジェクト推進体制の話も参考になります。
なかなかうまくいかないと思うけど諦めないで
「失敗しないテレワークの始め方」の項目では、「なかなかうまくいかないと思うけど、諦めないでください」という勇気を与えるメッセージが発せられました。人類が初めて体験するワークスタイルの大変革なので上手くいかなくて当たり前ですし、やってみて問題があればその都度直していけばいいとのこと。さまざまなITツールの活用で、たいていの問題は解決できるという発言も背中を押してくれます。
実際に働き方改革をやってみて今井氏は、業種特性や住環境、ライフスタイルなどにより従業員によってまったく状況が違い、従業員120人の同社には120通りのワークスタイルがあることが分かりました。また、どこでも働ける柔軟性のある多様な働き方が求められていると同時に、人と会って仕事を進める重要性にも気づいたそうです。
最後に、中小企業の強みは意思決定の速さ、ダメなら方向転換しやすいことだと、これから改革を始める会社へのアドバイスで締めくくりました。TOHOマーケティングもまだまだ取り組みが必要で、特にテレワークの導入で人事評価が難しくなっているといった話もありました。
残りの時間はリモートでもらった質問に丁寧に答えていただき、さらにセッション終了後にTwitter上でも質問に対して返事をしていただいた真摯な姿も印象に残りました。
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