design surf seminar 2021

デジタルで広がるIP創出、「音楽」×「デザイン」のミライチズ。

レポート

2021.12.24

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田村 優

株式会社インクストゥエンター
代表取締役/音楽制作者連盟理事

1980年生まれ。東京都出身。大学在籍中に数々のトランスコンピを制作し、累計で300万枚以上を売り上げる。04年6月に株式会社インクストゥエンターを設立。06年よりマネジメントも始め、初音ミクを使用した、ボーカロイドCDとしては世界初となるメジャー作品「Re:package / livetune feat.初音ミク」をビクターエンタテインメントよりリリースしたlivetune、supercellらと専属契約。また、自社レーベル「TamStar Records」も設立している。

杉本 和貴

株式会社インクストゥエンター
執行役員

04年レコードレーベルエグジットチューンズの創業メンバーとしてレーベルを立ち上げ 同レーベルにて初音ミク作品としては史上初のオリコン1位を獲得、日本レコード協会ゴールドディスクを三度受賞。
ダンスミュージック、アニメ、ネットカルチャーやゲーム等のサブカルに造詣が深い。

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2021 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2021年11月2日(火)・4(木)・5(金)の3日間オンラインで開催しました。今年のdesign surf seminarは、よりリアリティのある形で、次の時代への取り組みをテーマにしたセミナーが集まりました。全国からたくさんの方にご参加いただき、オンラインながら盛況のうちに幕を閉じることができました。当日のセミナーレポートをお届けします。

近年の音楽コンテンツは、インターネットと切っても切り離すことができません。ニコニコ動画、YouTube、TikTokなどの普及により、コンテンツのつくり手の活動にも大きな変化が訪れています。インターネットとクリエイターが結びつくことで、IPコンテンツにはどのような変化が生じているのでしょうか。その黎明期より、ネット発のクリエイターと共に歩んできた株式会社インクストゥエンター。同社代表の田村優氏と執行役員の杉本和貴氏より、「デジタルで広がるIP創出、『音楽』×『デザイン』のミライチズ。」と題して、ネット発の音楽とデザインの現在についてお話しいただきました。

ネット時代のメディアミックス

セミナーは株式会社インクストゥエンターのあゆみを振り返る形で始まりました。代表の田村優氏は、中学生時代にDJ活動とPCでの音楽制作を開始し、大学在学中には数々のトランス・コンピレーション・アルバムを制作、シリーズ累計で300万枚以上のセールスを記録しています。

インクストゥエンターを立ち上げたのは2004年、24歳のときのこと。取引先のレコード会社から法人化を勧められる形で起業しました。

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2007年には、クリプトン・フューチャー・メディアより、音声合成ソフト/キャラクターの「初音ミク」がリリースされ、一気に話題をさらいました。ニコニコ動画を中心に、初音ミクを使った楽曲制作者の「ボカロP」が大量に出現しました。

その中でも高い人気を誇っていたのが、ソロユニットのlivetuneです。その活動に着目した田村氏は、レコード会社に働きかけ、ビクターエンタテインメントからボーカロイドCDとしては世界初となるメジャー作品『Re:Package / livetune feat. 初音ミク』のリリースが実現しました。同作が10万枚以上の売上を記録したことをきっかけに、現在ではlivetuneをはじめ、supercell、HoneyWorks、EGOIST、八王子Pなど、ネット発の人気クリエイターを多数マネジメントしています。また、子会社の株式会社キャラメルハニーパンケーキでも、Eve、Sou、wabokuなど、複数のアーティスト・イラストレーターをマネジメントしています。

同社がコンセプトとして掲げるのは、ネット時代の新しいメディアミックス。「日本」と「リアル」から「世界」と「ヴァーチャル」へ、独自のマーケティング戦略によって、音楽を主軸とした幅広いコンテンツを発信・展開しています。 ターゲットは、国内の既存市場(音楽コンテンツ市場、ライブ市場、MD市場、FC市場など)に加えて、まだまだ開発の余地が残されている海外の新規市場。ジャパンコンテンツの人気は依然として高く、テクノロジーの発展とともに、これからますます国際的なコンテンツ展開が期待されていると語ります。

5軸の主力事業

続いて田村氏は、同社が「ネット時代の新しいメディアミックス」を目指して取り組む5つの主力事業について説明しました。

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1つ目のマネジメント・エージェント事業については、先述したように、ネット発のクリエイターたちをマネジメントしています。

2つ目は、音楽、コンテンツ制作事業。エンジニアも在籍するレコーディングスタジオを保有することで、企画立案から制作・アウトプットに至るまで、一気通貫したプロデュースを実現しているとのこと。

3つ目はライブ・イベント事業。自社アーティストのライブ・イベント実施のほかに、主に海外に向けて、モーションキャプチャー技術を用いたバーチャルライブを展開しているそうです。

4つ目は広告代理店・エージェンシー業務。東南アジア最大級のジャパンコンテンツコンベンションAFA(Anime Festival Asia)の主幹会社SOZO(シンガポール)と業務提携することにより、AFAの全面サポートや、アーティストのアジアツアーを開催しています。

そして5つ目はIP・アニメ・ゲーム・VR・ヴァーチャルアーティストの開発運営事業。アーティスト/クリエイターの楽曲開発に加えて、楽曲が原作となって展開する多様なコンテンツ(アニメ、ゲーム、小説、映画など)の開発を実施。さらに、これから大きな成長が見込まれるヴァーチャルアーティストの開発に力を入れていきたいとのことです。

具体例から見る音楽コンテンツの未来

メインスピーカーが執行役員の杉本和貴氏に移り、ネット時代の新しいメディアミックスを体現する例として、ふたつのコンテンツ事例が紹介されました。

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最初に紹介されたのは、ボカロPとして活動するはるまきごはんのコンテンツです。幻想的で美しい音楽とアニメーションで知られる はるまきごはん は、楽曲から映像に至るまで、すべて一人で制作しているという点に最大の特徴があります。作曲、作詞、演奏、歌唱から、絵コンテ、原画、撮影、編集から投稿に至るまで、すべて一人で行っている はるまきごはん は、まさにDTM(デスクトップミュージック)時代のクリエイターといえるでしょう。

0から100までを一人でできてしまうので、自らのアイデアやイメージをピュアに表現することができます。そのピュアな作風を武器に、2021年9月には、ニコンのブランドムービーの制作にも一部関わりました。

通常ならば、楽曲の制作と別にアニメーションスタジオにも依頼が必要な案件が、一人のクリエイターで完結する道筋が示されたことで、これからさらに、個人のクリエイターが活躍する未来が提示されているのではないかと杉本氏は語ります。

「HoneyWorks」は“ハニワ”という通称で親しまれているクリエイターユニットです。楽曲を制作するメンバー2人(Gomとshito)と、イラストを担当するメンバー(ヤマコ)の3人で構成されて、その音楽性は「キュンキュン系」や「青春系」などと呼ばれ、10代や20代を中心に若いファンを獲得しています。

HoneyWorksのユニークな点は、その活動のスタイルです。たとえば、まずGomやshitoが楽曲をつくり、できあがった楽曲をもとにヤマコがアニメーションを制作し、YouTubeやニコニコ動画に投稿するといったプロセスで行われます。代表曲の「告白予行演習」は、2014年の投稿以来、YouTubeで2,200万再生を越える人気コンテンツになりました。YouTubeチャンネルの登録者数は200万人を越え、そのうちの4割は海外のファンだそうです。

音楽/映像コンテンツを制作するクリエイターでありながら、巨大メディアのような影響力ももつハニワは、近年ますますその活動の幅を広げています。 従来的な音楽/映像コンテンツに加えて、動画をもとにした小説(『告白予行練習』)のリリース、小説をもとにしたテレビアニメ(『ヒロインたるもの!』)の公開、映画の劇場版アニメ(『ずっと前から好きでした。』)の制作、音楽とストーリーを組み合わせたスマホアプリ(「ハニプレ」)のリリースなど、多岐にわたるメディア展開を行なっています。 その幅広さは、まさに「ネット時代の新しいメディアミックス」を体現しているかのようです。

HoneyWorksは次の一手として、バーチャルアイドルのプロデュースも進めています。2016年にリリースされたバーチャルアイドルの「LIP×LIP」は、すでに映画化が実現し、CDがオリコンチャートで2位を記録するなど、実在するアイドル同様の高い人気を誇っています。いまもなお人気を伸ばし続けるLIP×LIPのように、テクノロジーの発展とともに、その活躍の可能性はまだこれからも広がっていくことでしょう。

代表の田村氏は、デジタルとデザインの進化によって、これからもさらなる変化が見込まれるコンテンツ制作を発展させることで、新たなエンターテインメントの形を提示していきたいと結びました。

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