design surf seminar 2021

「社員の幸福と生産性の両立」が実現する新しい時代の組織デザインとは

レポート

2021.11.15

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山田 理

サイボウズ株式会社
元取締役副社長 兼 組織戦略室長

大阪外国語大学卒業後、1992年日本興業銀行入行。2000年、経営者の人柄・考え方に惹かれ社員約15名のサイボウズへ転職。取締役として財務、人事および法務部門を担当。ベンチャー企業ならではの離職率、採用苦戦による社員の疲弊を受け、リストラクチャリングや人事制度の策定に精力的に取り組む。現在のサイボウズの透明性を重視する考えや、100人100通りの人事制度があっていいという考えは、山田が牽引し大切にしてきた考え。2014年グローバルへの事業拡大を企図しサイボウズUSA立ち上げのため、シリコンバレーに赴任。現在は新設した組織戦略室長として、日本も含め、アメリカ、アジアなど、サイボウズのグローバル展開を支える組織づくりに邁進している。著書に『最軽量のマネジメント』(サイボウズ式ブックス)、『カイシャインの心得』(大和書房)がある。

石井 剛太

株式会社Too
代表取締役社長

株式会社Too代表取締役社長。1972年生まれ。1996年、慶應義塾大学経済学部卒業。同年に日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行し2000年トゥーザイロン役員。2003年ソフトウェア・トゥー代表取締役社長(現任)。2005年ニュージーランド ミルブルック・リゾート マネージングディレクター(現任)。2009年Too取締役を経て2011年にToo代表取締役社長(現任)。株式会社トゥーマーカープロダクツ、株式会社G-Too代表取締役社長。他Tooグループ各社の取締役を務める。2019年ミルブルック・リゾートにてゴルフNZ Open開催。2019年Too Corporation America、Too上海を開設。

松川 隆 氏(モデレーター)

サイボウズ株式会社
チームワーク総研 シニアコンサルタント 兼 株式会社Too HRデベロップメント部 風土コーディネーター

慶應義塾大学法学部卒業後、1996年日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。為替ディーラー、金融法人営業を経験し、広告代理店に勤務した後、テニススクール事業を立ち上げ独立したが思うように行かずに断念。2012年サイボウズに入社し、パートナー営業部を経て、人事部にて採用や研修、制度策定などに携わる。現在はチームワーク総研にて研修の講師を担当。著書(共著)「わがままがチームを強くする」(朝日新聞出版)。

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2021 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2021年11月2日(火)・4(木)・5(金)の3日間オンラインで開催しました。今年のdesign surf seminarは、よりリアリティのある形で、次の時代への取り組みをテーマにしたセミナーが集まりました。全国からたくさんの方にご参加いただき、オンラインながら盛況のうちに幕を閉じることができました。当日のセミナーレポートをお届けします。

「100人100通り」の働き方を掲げて様々な人事制度を導入し、離職率を4%に抑えて「働きがいのある会社ランキング」に7年連続ランクインするようになったサイボウズ株式会社の山田理氏と、100年を超える歴史を持つTooの社長・石井剛太が登壇。変化に対応していくための「組織デザイン」をテーマに話しました。モデレータは、サイボウズの社員でありながらTooでも副業している松川隆氏がつとめました。

働き方をフレキシブルにすることで優秀な人を雇用できる

3人が旧知の仲であることが感じ取れる和やかなムードで始まったこのセッション。サイボウズの会社紹介からの流れで「離職率を下げる」話となりました。

山田氏によると、生産性を上げるためというより、せっかく縁があって入ってもらった人が苦しんで辞めていくのを見るのはつらいと感じるところからの離職率を下げる取り組みだったそうです。業績を上げるのは簡単ではないけど、社員に向き合い働きやすい環境を作るのはやろうと思えばできるという言葉が印象的でした。

サイボウズのご紹介

松川氏によるTooは今採用が好調といった言葉を受けて、石井は、採用に力を入れても中身が伴っていないとすぐばれることに気付いた話をしました。そして、一番生産性が悪化するのは社員の離職で、離職率が下がるだけで生産性向上と言い切ってもいいくらいだと経営者の視点での発言をしました。

サイボウズはまだブランド力や信用が低かった時代に、働き方をフレキシブルにすることが武器になると気付きました。大企業では制度を変えるのは難しいけど、自分たちは時間を制約して働いてもらうことが工夫でできるため、優秀な女性が大企業から来てくれることになったそうです。

サイボウズ株式会社の山田理氏

雇用する側は、働く時間が限られている分、大企業にいたときほどの報酬を払う必要がなく優秀な人に働いてもらえます。働く側はフレキシブルな働き方ができて会社に感謝する、Win-Winの良い関係が築けたそうで、社員の幸福と生産性を両立する良い例だと感じました。

女性のための制度で男性が働きやすくなることも

Zoomを使ってオンラインで行われた今回のセミナーですが、Zoomウェビナーの質疑応答(Q&A)機能でたくさんの質問をいただきました。

「ママデザイナー」として働き方を模索している方からの質問に対し、ママである=時間と場所の制約があることがいまだにハンデになっているとしたら、そういう現状を変えるべく「頑張らなあかんな」と山田氏は発言。続いて松川さんは、柔軟な働き方を提供することで、優秀な人が集まることを経営者の人に気付いてほしいと話しました。

働き方について語る上であまり「女性が女性が」と言い過ぎるのもよくないとの石井の発言から、山田氏の、女性をターゲットに考えた制度により男性が働きやすくなることもあるといった話につながりました。

柔軟な働き方が選べることは、一家の大黒柱という十字架を背負い無理やりフルコミットして疲弊している男性の助けにもなるかもという発言に、共感する人も少なくないでしょう。

サイボウズの「公明正大」とTooの「風通しと透明性」

社長と社員の距離感が近く感じられるTooでの、上手にコミュニケーションを取る仕組み作りについて質問を受け、石井はこのセッションのリハーサルのときの話をしました。

株式会社Too社長の石井剛太

山田氏がTooのスタッフに対し本音を聞いたところ、「会社も変わったけど剛太さんが変わった」とスタッフのひとりが答えたことが、とてもうれしかったというエピソードでした。

石井は、日本企業に当たり前にある「面従腹背」が嫌いで、裏表があることを当たり前にしたくないと考えているそうです。それが、社内の「風通しと透明性」を重視する姿勢につながっていて、サイボウズの「公明正大」という行動指針と通じるものがあるとのことでした。

社員の評価の仕方について

最後に、社員の幸福を追求すると社員の評価が難しくなるんじゃないかという質問に答えました。

石井は、評価には時間と労力を惜しみなく割くのが前提として、リファレンス制など現在のTooでの取り組みについて話し、最後は納得感しかないという言葉で締めました。

山田氏による、お金に限らず働き方も報酬のひとつなので、何が欲しいのかを社員に聞くことから始めるという答えも、社員の評価を考える上でのヒントになることでしょう。

セッション直前のリラックスした記念撮影

3人は銀行員時代の先輩後輩でテニス仲間でもあったそうで、仲の良さと信頼関係が伝わる笑顔の多いセッションでした。具体的な事例や体験談を多く聞くことができ、経営層も雇用される立場の人も、いろいろな気付きを得られるセッションとなりました。

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