探訪!オートデスク株式会社
Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2021 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2021年11月2日(火)・4(木)・5(金)の3日間オンラインで開催しました。今年のdesign surf seminarは、よりリアリティのある形で、次の時代への取り組みをテーマにしたセミナーが集まりました。全国からたくさんの方にご参加いただき、オンラインながら盛況のうちに幕を閉じることができました。当日のセミナーレポートをお届けします。
昨年に引き続き、公益社団法人日本広告制作協会(OAC)所属のクリエイターが登壇したこのセミナー。「課題解決」の実際とおもしろさについて、株式会社スタヂオ・ユニ 樋口牧子氏のファシリテートで、株式会社アクロバット 田中貴弘氏、株式会社電通テック 小野愛佳氏、株式会社博報堂プロダクツ 佐藤翔吾氏が楽しく語り合いました。
冒頭は人形劇でスタート!佐藤氏の楽しい演出で人形たちがクリエイティブの波を語ります。セミナーのテーマである「課題解決」を、
1.相手のことを考える
2.コンセプトを考える
3.解決策(アウトプット)を考える
この3つに分けて紐解いていきます。
それぞれの目線に立つ
まずは「相手のことを考える」について。ここでのポイントは大きく二つ。一つは、課題を抱えているクライアントのことを考えること。もう一つは、サービスの受け手のことを考えることです。まずは、クライアントのことを知るために、クリエイターの皆さんが大切にしていることを聞いていきます。
雑談を大切にしている、と答えたのは小野氏。クライアントの潜在的な意図を汲み取るために、ヒアリングでは飼っているペットのことまで話題が広がることもあるそうです。一見仕事とは関係ないようなところから、クライアントの製品に対する想いを引き出せると話します。
田中氏は、クライアントの要望と自分の理解に相違はないかを常に念頭に置いているとのこと。これには一同同感で、自分の中だけでアイデアが膨らんで軌道修正が必要になってしまわないように、クライアントと意識のスタートラインを合わせることを心がけているそうです。
続いて、お悩み相談室のようにヒアリングすると答えたのは佐藤氏です。言語化しづらいけれど感覚的に認識していることを引き出すために、クライアントに寄り添うことを心がけているそうです。セミナー冒頭で場を和ませてくださった、佐藤氏らしい意見でした。
これらを踏まえて、自分がターゲットではない製品の依頼をされたときに、「自分事」にする方法について樋口氏が問いかけます。
佐藤氏は、まずはその製品を使って体験することで、想像ではわからないことを見つけ出す作業をするそうです。一方で、「知らない」ことを存分に活かすことで、クライアント側も気がついていなかった製品の印象に気が付くこともあるため、二つの方向からアプローチするとのことです。
女性向けのコピーを依頼されることもあるという田中氏は、女性向けの雑誌を読んだり、過去に読んだ小説の女性キャラクターを自分に憑依させることもあるそうです。商品を使っている様子を想像して、受け手になりきることが多いそうです。
三者三様の手法で、クライアントの意図を汲み取るのと同時に、製品やサービスの受け手目線にも立っていることがわかりました。これらの意見を受けて、クリエイティブを作る上で重要な「コンセプト」はどのように立てていくのかに話題が移ります。
「コンセプト」を軸にクライアントとクリエイターが伴走する
新商品や新サービスを手がける場合、クライアントとクリエイターで共通認識をもってモノづくりをしていくことが非常に大切です。チーム全体がブレないための「コンセプト」は、どのように言葉にしていくのでしょうか。
コピーライターの田中氏は、意外なことに言葉からの発想が得意ではないと言います。若い頃に上司に相談した際に「感覚型のコピーライターなんじゃないか」とアドバイスを受け、今では絵を描くなど、言葉にこだわらない手段でコンセプトを導き出すことが多いそうです。
ひたすらアウトプットを意識していると語ったのは小野氏です。最近はメモ帳に、単語やフレーズなどをとにかく書いて机に貼って、分類分けをしながらコンセプトを作っていくそうです。書くことによって頭の中を整理しつつ、ずらっと並んだメモ帳を眺めることでモチベーションも上がると言います。
またこれを受けて樋口氏は、書いたものを俯瞰してみることも自分の考え方を把握するのには良いかもしれませんと語ります。
佐藤氏は、クリエイティブの良いところは、自分一人で悩まなくていいところだと語ります。どこかで行き詰まったときは、デザイナーやコピーライターなど、別の視点を持つクリエイターに、積極的に意見を聞くそうです。そうしたやり取りで、コンセプトがはっきりしてくるとのこと。「チームで作り上げるところにおもしろさがある」というコメントには、共感する視聴者も多いのではないでしょうか。
「想像」と「創造」が課題解決の鍵
最後は「解決策(アウトプット)を考える」について。クリエイターが本領発揮するポイントですが、メディアが爆発的に増えている現代で、共感やワクワクを与えられるアイデアはどのように生み出されているのでしょうか。
とにかく最初に資料を探すと答えたのは、小野氏です。一方で、広告を作る際に広告の資料を探すと既存のアイデアに引っ張られてしまうので、服のデザインや建築のデザインなど、直接関係のないデザインを参考にすることが多いそうです。そうして探し出した資料を活用することで、発想が生まれていくと言います。田中氏はそれに加え、すっぱり忘れることも一つの手段だと語ります。ぼーっと歩いているときやお風呂に入っている時など、一回離れることでふとした瞬間にアイデアが浮かぶこともあると言います。
佐藤氏は、自分なりの観察眼を大切にしていると語ります。例えば移動中の電車や、旅行先の風景など、同じものを見たとしても、人によって蓄積される情報は変わります。自分の経験や体験からのアウトプットを信じて、表現できるようにと心がけているそうです。
最後に樋口氏から、「課題を解決できるこの仕事は面白いですか」という質問が投げかけられました。
「面白いです」と即答したのは佐藤氏。難しく捉えられがちな「問題解決」ですが、その先にあるのは人を楽しませたり元気にすること。人が笑顔になる瞬間に立ち会いたいというのが、クリエイティブに携わる理由だそうです。
小野氏は、ときには鬱陶しく感じられることもある広告で、相手を楽しませられた瞬間に達成感を感じるそうです。膨大な量の広告が発信されている現代で、いかに好意的に見てもらえるかを、作り手として意識していきたいと言います。
身近な友達から「おもしろいね」「いいコピーだね」と言ってもらえるのもすごく染みます、と率直な感想を述べたのは田中氏。基本的には誰も見ていない、という状況が根底にある広告で、例えばSNSで一つでも反応があると、きちんと届いたんだと幸せな気持ちになるそうです。
3人の率直な意見を受け樋口氏は、クリエイティブには誰かの気持ちになってみる「想像」と、作りあげる「創造」の2種類があると語ります。この二つを掛け合わせて解決策を生み出すことがクリエイターの仕事であり、クリエイターに依頼する価値がここにある、という言葉でセミナー全体を振り返りました。
リアルで対面するのが初とは思えないほど和気藹々とした雰囲気だったためか、セミナーの最後には視聴者からたくさんの質問が寄せられました。ときにはライバルでもある4人も、同業者と考え方を共有する機会はそうないということで、新鮮な経験だったと語ります。クリエイターの皆さんそれぞれの、「課題解決」との向き合い方に触れることができたセミナーでした。
公益社団法人日本広告制作協会(OAC)
株式会社スタヂオ・ユニ
株式会社アクロバット
株式会社電通テック
株式会社博報堂プロダクツ
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