design surf seminar 2019

アフターデジタル オフラインが無くなる時代のUXのありかた

レポート

2019.11.18

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尾原和啓

IT批評家、藤原投資顧問書生

京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、Google、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を専門とし、経産省 対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターアドバイザー等を歴任。現在13職目 、シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡いでいる。ボランティアでTED日本オーディション、Burning Japanに従事するなど、西海岸文化事情にも詳しい。シンクルはApple 2016年ベストアプリ10選に。著書「モチベーション革命」は2018年Amazon Kindleで最もダウンロードされた本に。「ITビジネスの原理」はKindle 年間ランキングビジネス書部門 2014、15年連続Top10のロングセラー(2014年7位、2015年8位)**。韓国語、中国語版にも翻訳されている。
15/6/11 Kindleランキングにて、書店はABC六本木、渋谷Book 1st 6/15調べ
**14/8/30 ランキングにて、年間でも2014年Kindleビジネス書7位

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2019 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2019年10月18日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。 4回目となる今回も、デザインをビジネスの側面から捉えた11本のセミナーを行い、たくさんの方に来場いただき盛況のうちに幕を閉じることができました。当日のセミナーレポートをお届けします。


すべてがデータで可視化され、身の回りのものがデジタルで包まれている現代。優れたユーザー体験を提供するためには、リアルをどう捉えればよいのでしょうか。IT評論家である尾原和啓氏に解説していただきました。

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セミナー中はリアルタイムで質問を受け付けてくださりました。

東南アジアでは、フリクションレスな移動が始まっている

シンガポール、マレーシア、タイなどの東南アジア各国では、配車アプリ「Grab」を使って移動する人が増えています。安くてスマホ決済できるクルマをリアルタイムで呼ベるのはとても便利。車内から立ち寄りたいカフェのコーヒーを買い、受け取り、また次のクルマへ。まさに摩擦のない “フリクションレス” な移動です。

ドライバー側にもメリットがあり、例えば収入を上げたい場合、空き時間に仕事を増やす、車内外に広告を付ける、水や食品を販売するなどのほか、マイクロファイナンスという選択肢もあるとのこと。安全に運転をしている実績があり、お客さまからの評価が高ければ、低金利でクルマの購入ができるため、4シーターから6シーターに買い替えることも可能です。きちんと仕事をすれば、国籍、人種、宗教などは関係がない。そんな時代を描く「Grab」のコンセプトムービーからセッションは始まりました。

デジタルを起点に、リアルで何が提供できるか

また、中国の飲食店ではテーブルのバーコードを読み込み、注文も決済もスマホ。あらゆる体験のファーストコンタクトがデジタルになっている一方で、リアルが重要でないわけではないと尾原さんは語ります。

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例えば焙煎工場併設のスタバは画像でも映えるけれど、現場に行かないとわからない面白さがあるし、それを目指して人は集まる。スマホが誕生して11年の間にコンサート市場が2.5倍になったことも同様です。“すべてがデジタルに置き換わるのではなく、デジタルに包まれているからこそリアルという貴重な場で、信頼獲得や感動提供をどうできるかが重要になる”とのこと。築地のように楽しい海鮮売場を持ち、その楽しい記憶を呼びさます海鮮食品を30分で配送するという中国のスーパー「フーマー」が、優れたユーザー体験の例として挙げられました。

オフラインにオンラインを溶け込ませる平安保険

ドラスティックにユーザー体験を変えた中国の「平安保険」のお話も興味深いものでした。解説されたのは「グッドドクター」という万歩計アプリ。日々のアクセスによってポイントを加算し、利用者6500万人に、歩数に合わせた運動提案などを配信するものです。24時間365日チャットでの健康相談も可能。受診が必要な場合もデジタルで予約ができ、診療時間の5分前にメッセージが来るまで院内で待つ必要もありません。処方箋もデジタルでもらえるし、薬を家に届けてもらうこともできます。従来の保険会社はトラブルが起きたときにのみ対応するものでしたが、平安保険はお客さまを常にデジタルで包み、リアルでも健康に対する憂いを解決してくれる。オフラインにオンラインが溶け込んでいるという意味が、よく理解できました。

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企業が提供するべきは、「製品」から「体験」へ

お客さまに選び続けてもらうために、企業はタッチポイントを設計します。まずテックタッチは自動配信メールや動画コンテンツ、続いてロータッチはワークショップやイベント、ハイタッチとして個別の会議やサポートが相当します。ここで大切なのが段階を踏む必要はないということ。“テックタッチは常にお客さまを見ていられるし、お客さまはテックタッチ、ロータッチを経たからハイタッチに辿り着き、サービスがほしいと思うわけではないから”と尾原さんは説明しました。「赤ちゃんがミルクを飲まない」「飲んだ帰りにラーメンが食べたくなった」というように欲求とは衝動的なもの。点でしかコミュニケーションできない時代には順を追って対応するしかありませんでしたが、お客さまと常に接点を持っていられるいまでは、状況を理解しつつ、先回りして提案やおもてなしができる。

さらに面白かったのは、ユーザーの属性は関係ないという指摘です。確かにミルク問題で困っているのはパパでもママでも、ラーメンが食べたいのは20代でも40代でも構わない。“状況”をターゲッティングできないため、“属性”を基準にしていたけれど、ジョブが発生する状況がわかれば、個人情報は必要なくなるとのこと。「生後3ヶ月 ミルク」「六本木 ラーメン」など、今までは検索ワードくらいしか察せなかった状況にユーザーが喜んでログを提供してくださるようなると、それに先回りのオモテナシを提供することが必須になってきます。

アフターデジタルな世界は、人がより人らしく

モバイルの浸透によって、アフターデジタルとも言える世界が到来しました。デジタルがすべての起点となるこの時代では、リアルを信頼獲得や感動提供ができる貴重な場と捉えます。

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デジタルで包み込むことで、人がより人らしくすることができ、場所により顧客提供価値を込めることができるというのが本セッションのまとめでした。経産産業大臣世耕氏も“日本がすすめるべきデジタル化の道しるべ”と推薦する尾原さんの著作「アフターデジタル」(日経BP)も、ぜひお読みください。

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