design surf seminar 2018

『「デザイン経営」宣言』と「デザイン経営」の実践

レポート

2018.11.08

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中村真広

株式会社ツクルバ
代表取締役CCO
エグゼクティブ・プロデューサー

1984年生まれ。東京工業大学大学院建築学専攻修了。不動産ディベロッパー、ミュージアムデザイン事務所、環境系NPOを経て、2011年、実空間と情報空間を横断した場づくりを実践する、場の発明カンパニー「株式会社ツクルバ」を共同創業。デザイン・ビジネス・テクノロジーを掛け合わせた場のデザインを行っている。昭和女子大学非常勤講師。著書に「場のデザインを仕事にする」(学芸出版社/2017)。

菊地拓哉

経済産業省
クールジャパン政策課 課長補佐
デザイン政策室 室長補佐

経済産業省のデザイン政策担当者。経済産業省特許庁にて、意匠の審査、意匠関連の調査研究やコンテンツ作成などに従事した後、現職。企画・編集に携わったコンテンツに「事例から学ぶ意匠制度活用ガイド」、知財教材「デザイナーが身につけておくべき知財の基本」など。2018年度には、デザイン経営を担う「高度デザイン人材」の育成のあり方に関する調査研究を行う予定。

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2018 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2018年10月12日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。
3回目となる今回も、デザインをビジネスの側面から捉えた8本のセミナーを行い、たくさんの方に来場いただき盛況のうちに幕を閉じることができました。

『「デザイン経営」宣言』に関連深い2人が登壇

2018年5月に経済産業省と特許庁が公表した『「デザイン経営」宣言』。このレポートにまつわるセッションには、経済産業省のデザイン政策担当者・菊地拓哉氏と、2011年の創業から「デザイン経営」を先取りして実践してきたベンチャー企業、株式会社ツクルバのCCO・中村真広氏が登壇しました。

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2018年6月の中村さんのSNS投稿

登壇の経緯として「デザイン経営宣言」の公表直後に、中村さんがSNSで呟いた内容が映し出されました。中村さんはデザイン経営にまつわる言語化や教育に興味があり、経済産業省を訪ねたそうです。今回のセミナー登壇もこれがきっかけとなりました。

デザイン政策の流れと『「デザイン経営」宣言』

日本のデザイン政策は、戦後1950年代後半にスタートし、Gマーク制度などを通じたデザインの盗用防止や啓発を中心とした政策が1990年代まで続きました。2000年代以降、デザインの戦略的活用を促す政策が推進され、2018年5月に経済産業省と特許庁が『「デザイン経営」宣言』を公表しました。

「デザイン経営宣言のレポートは、皆さんお読みになりましたか?」という問いかけに、会場ではパラパラと手が上がります。なぜ、いまデザインなのかという背景やデザイン経営の定義などを、菊地さんが説明しました。

デザインの力で企業競争力を向上

20世紀は、ものを作れば売れる時代でしたが、21世紀に入ると、供給力が需要を上回るようになり、生活者から共感が得られなければ売れない時代になりました。また、経済のグローバル化や情報通信技術の急速な進歩により、ビジネスの世界が劇的に変化していく中で、あるべき未来を構想し、事業課題を創造的に解決するデザインの重要性が高まってきました。

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「デザイン経営」は、ブランド力とイノベーション力を向上させ、企業の競争力を高める

「デザイン経営」とは、デザインの活用によってブランド構築とイノベーションを実現し、企業の競争力を向上させる経営手法です。今回の『「デザイン経営」宣言』では、デザイン経営の必要条件として、「経営チームにデザイン責任者がいること」「ビジネスの最上流からデザインが関与すること」の2点を提示しています。

別冊としてまとめられた『「デザイン経営」の先行事例』に触れつつ、菊地さんからは「デザイン経営の可能性には、まだまだ広がりがあるはず。大企業のみならず、中小企業、小規模事業者、行政機関など。ぜひ皆さまそれぞれの立場でのデザイン経営を追求していただきたい」というメッセージがありました。

「デザイン経営」を実践してきたツクルバ

続いて「デザイン経営」を実践してきたというベンチャー企業、ツクルバのCCOである中村さんにバトンタッチ。まずはどんな事業を展開しているのかを紹介しました。

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ツクルバの事業展開を紹介しました

学生時代は建築設計を学んだ中村さん。2011年に共同創業したときから、その肩書きは「CCO(Chief Creative Officer)」でした。当時は経営層の中にデザイナーがいることがあまり一般的ではなかったけれど、最近の若手スタートアップ企業には、あたり前のように「CCO」「CDO(Chief Design Officer)」が存在するようになったと、少し感慨深そうにお話されました。

その後「建築」「不動産」「テクノロジー」の3つをかけ合わせながら、いくつもの事業を作ってきました。一貫して、コミュニティ形成に興味を持ち続け、現在ではコミュニティ向けのツール提供も始めています。

デザインのスキルをどう経営に結びつけたか

「デザインを形にするとき、デザイナーはそれぞれの思考法をお持ちだと思いますが……」と断りを入れつつ、中村さん流のデザインの思考ステップを紹介しました。

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いいなと思うものに「境界線を引き」、おぼろげな価値観の「輪郭をつくる」、引いて見て「相対化」、違う地の色に置いて「概念化する」、その概念を世の中の「文脈に置く」というステップでした

中村さんにとって、このステップは会社経営やサービスをつくるときも同じで、「デザイン的な考え方で向き合うことに違和感はない」とのこと。ビジネスを生み出し育てていく上では、デザインに加えアート的な要素も必要という考え方も興味深く感じました。

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ビジネスの3つのフェーズ、整理整頓して形を整えるところにデザインの力が必要になる

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このサイクルを回すことがデザイン経営の中でのポートフォリオ戦略になると考えて実践している

キーワードセッションで多面的に捉える

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キーワードセッションでは会場からの質問も受け付けました

『「デザイン経営」宣言』の政策提言には、「⾼度デザイン⼈材の育成について、企業・⼤学等において、事業課題を創造的に解決できる⼈材(⾼度デザイン⼈材)の育成を推進する」と書かれています。

デザインを軸にビジネスもわかる人材育成についての菊地さんからの問いに、中村さんはツクルバでの「若手デザイナーに各サービスごとのCCOを任せ、実践を通して徐々にスキルを培ってもらう」取り組みを紹介しました。

また、「企業経営には共感できるストーリーをいかに紡ぎ出すのかが重要で、そこにデザインの力が必要になっていく」と話す中村さんから、高度デザイン人材は企業戦略のストーリーテラーとなって、企業経営に入っていく道もあるといった可能性の提示もありました。

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さまざまな切り口でデザイン経営を捉えました

「デザイン経営と人材育成」「デザイン起業家」「企業経営と物語」などのキーワードについて、それぞれの視点から意見を交える、和やかなセッションとなりました。

落ち着いた語り口の菊地さんと熱量を持って語る中村さんのやりとりは、経験や実感をともなう話が多く、すんなりと頭に入ってきました。次から次へと話題が拡がったことで、皆さまも『「デザイン経営」宣言』に対する理解が深まり、デザイン経営をより身近に感じられたのではないでしょうか。

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