探訪!オートデスク株式会社
赤井尚子氏
株式会社 コーセー
商品デザイン部 デザイン室
クリエイティブディレクター
コーセーブランド、「アディクション」などのプロダクトデザインを手がけ、現在「デコルテ」をメインとしたハイプレステージブランドのディレクションに携わる。
Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2018 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2018年10月12日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。
3回目となる今回も、デザインをビジネスの側面から捉えた8本のセミナーを行い、たくさんの方に来場いただき盛況のうちに幕を閉じることができました。
株式会社コーセーの赤井尚子さんによるセッション「きれいの先にあるもの」は、「デコルテ」ブランドの商品開発事例を通して、デザインの背景にあるフィロソフィー(哲学)や、ブランドの価値や想いをデザインでどう体現していくのかを解説しました。
デコルテのデザインフィロソフィー
デコルテはコーセーの数あるブランドの一つで、ハイプレステージなブランドを扱うカテゴリに属しています。CMや派手な宣伝はせず主に百貨店で販売しており、美容系雑誌でよく取り上げられるなど、コスメ通の間で知られるブランドとなっています。
「最高品質の化粧品を最高の形で届ける」という想いで48年前に作られたデコルテブランドのデザインディレクションを受け継いだ赤井さんは、デコルテのデザインフィロソフィーを明文化し、常に意識しています。
- 最高品質にふさわしいデザインであるか
- 進取の気性に富んでいるか
- そのデザインにエレガンスはあるか
伝統を守りつつも常に最先端の技術や最高の素材を取り入れ、革新にこだわってきたデコルテ。そのパッケージにも、品質に見合った見栄えや革新性とともに、気品と余裕感、美しさが必要と考えていると話しました。
世界的デザイナーのマルセル・ワンダース氏を起用
デコルテのパッケージデザインに、オランダのデザイナーで世界的に活躍するマルセル・ワンダース氏を起用したのは2010年から。欧米への進出を本格化させるにあたり、グローバルな価値観を取り入れたかったのが理由とのことです。
また、マルセル氏のデザインや作品に向き合う姿勢や考え方が、伝統や歴史を大切にしながら新しいことにチャレンジし進化していこうとする、デコルテの目指す方向性や考え方と合致したことも決め手になったそうです。
マルセルとコーセーの共同作業でデザインを具現化
今年2月に発売されたデコルテのポイントメイクは、マルセル氏によるデザインをコーセーのデザイン室で具現化し完成させたものです。 このポイントメイクのパッケージ作成における、マルセル氏による初期のデザイン案から最終デザインに至るまでの長い道のりを、貴重な資料写真とともに順を追ってじっくりと解説しました。
マルセル氏のデザインに対し、構造・使用性・コストから実現性の検証を行うのはもちろん、「デコルテらしさ」を突き詰めるためデザインの微調整に時間を費やすなど、コーセー側の奮闘ぶりも語られました。
「アートと製品のせめぎ合いがマルセルデザインを具現化する我々の醍醐味でもある」と語った赤井さん。マルセル氏のチームとコーセーのデザイナーがお互いの立場を尊重しながら、時には一歩も引かない構えで議論を交わしてデザインを作り上げていく経緯は、とてもエキサイティングな話でした。
「なるべく機構部が見えないデコルテ品質のクオリティ」「デコルテにふさわしいエレガントなたたずまい」など、一貫して「デコルテにふさわしいデザインか」を基準に考える姿勢がブランドを支えていることが実感できました。
海外のデザイナーとの仕事の進め方
「マルセルには、はっきりとストレートに要望を伝えた方が良い」「通訳はデザインの専門家ではないので、場合によってはイラストを描いて伝えることが効果的だった」など、海外のデザイナーと仕事をする上でのヒントになるようなエピソードも興味深い内容でした。
通常はウェブミーティング(テレビ会議)を行い、デザインの最終決定時にオランダのマルセル氏のスタジオに訪問してミーティングしたとのことで、長い会議が苦手なマルセル氏のチームに考慮し大事なことを早めに伝えるといったエピソードも紹介しました。
赤井さんとデコルテのデザインを支えているのは、デコルテ誕生から約50年の間継承されてきたフィロソフィーと、それを実現化するデザインフィロソフィーです。その製品から生まれる「きれいの先にあるもの」は、「女性一人ひとりがもっているその人だけの物語だと思っています」という話でこのセッションは終了しました。
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