design surf seminar 2018

デザインには企(わけ)があり、スタイルには意味がある

レポート

2018.10.18

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福市得雄

トヨタ自動車株式会社
エグゼクティブアドバイザー
チーフブランディングオフィサー

多摩美術大学卒業後、昭和49年トヨタ自動車工業株式会社入社。トヨタ自動車株式会社デザイン本部長、同社取締役、先進技術開発カンパニー先行デザイン担当などを歴任。Lexus International Co. President、Chief Branding Officerを経て、今年エグゼクティブアドバイザーに就任。

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2018 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2018年10月12日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。
3回目となる今回も、デザインをビジネスの側面から捉えた8本のセミナーを行い、たくさんの方に来場いただき盛況のうちに幕を閉じることができました。

トヨタのデザイン部門を牽引した福市得雄さん登壇

今年のdesign surf seminarも「道を極めた人に聞く!」セッションからはじまります。トヨタ自動車のデザイン部門を牽引し、まさにトップを極めた福市得雄さんにご登壇いただきました。

業界関係者やメディアから学生まで、多くの人が集まり注目度の高さがうかがえます

福市さんはトヨタ/レクサスの両方を見るデザイン本部長から、レクサスのプレジデントとして経営にも従事し、トヨタ/レクサスのチーフブランディングオフィサーを経て、今年エグゼクティブアドバイザーに就任しました。

2011年から始めたデザイン改革

トヨタのデザイン本部長に就任した2011年から始めたデザイン改革では、デザインが会社を引っ張っていくという強い意志を持ち、デザイン/デザイナーの重要性を経営者に理解してもらう努力を続けました。会社トップへのプレゼンとほぼ同じ内容を今回お話しいただけるとのことで、会場の期待も高まります。

欠点をなくすモノづくりから、長所を活かすモノづくりへ

デザイン改革は、過去の考えを切り替えることから始めました。たくさんの意見を取り入れて欠点をなくすモノづくりから、長所を活かすモノづくりに変革。100人のうち10人でもいいから熱狂的に「これが欲しい」と言ってもらえるデザインに変えていくことで、役員の意識も改革していったそうです。

トヨタとは違うレクサスのフロントデザイン戦略

トヨタとレクサスとの役割の違いをはじめ、トヨタ/レクサスのブランド戦略に関連する話もいろいろと聞くことができました。トヨタブランドを世界に認識させていくための地域最適化による「フロントデザイン戦略」は、とても腑に落ちるもので印象に残りました。

デザインの専門家ではない経営者・役員にデザイナーを信用してもらう

経営者や役員といったデザインの専門家ではない人に、錯視を利用したデザインの手法を紹介したエピソードもとても興味深いものでした。

錯視を利用したデザインについて、図版や写真を使って紹介

これは今回のセミナータイトルの「デザインには企(わけ)があり、スタイルには意味がある」とも繋がっています。デザインが分からない経営者や役員にそのことを理解してもらい、デザイナーを信用して任せてもらうことが重要だと強調していました。

デザインにおける「三つの信念」

後半は、福市さんがたどり着いたデザインにおける「三つの信念」をはじめ、これまでの経験を元にデザイナーへ伝えたいことを話していただきました。こちらも必聴の内容でした。

福市さんのデザインにおける「三つの信念」

三つの信念とは以下の3つ。

  1. どのブランドにも追従しないオリジナリティ
  2. 常に新しい形にチャレンジ
  3. 形には必然があること

それぞれ、他社(者)をフォローしないこと、時流を変える気持ちでやってほしい、機能性能の見える化をやってほしいということでした。

「三つの信念」それぞれについて解説しました

また、良いデザインと売れるデザイン、形容詞を羅列することの危うさ、価値観によるデザインと、いずれもデザイナーへ向けた含蓄のある話を聞くことができました。

その道を極めたトップデザイナーの登壇ということで緊張感を持ってスタートしましたが、ときおり交える冗談に会場が笑いに包まれることもあり、和やかな雰囲気で進んだセッションでした。

質疑応答では丁寧に答えていただきました

トヨタのブランド価値向上に取り組んできた貴重な話を聞くことができ、ブランド戦略、デザイン戦略についてより深く考えるきっかけになったのではないでしょうか。また、長年にわたり培ってきたデザインに対する考え方や信念は、幅広い年齢層のデザイナーの心に響いていたと思います。

質疑応答の時間も設けられ、学生の質問者に「頑張ってください」と温かい言葉をかけていたのも印象的でした。

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