design surf seminar 2018

メーカーが「顧客体験」に取組む理由とデザインの役割

レポート

2018.11.01

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石井龍夫

アドビ システムズ 株式会社
エクスペリエンスクラウド法人
営業本部
エグゼクティブフェロー

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2018 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2018年10月12日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。
3回目となる今回も、デザインをビジネスの側面から捉えた8本のセミナーを行い、たくさんの方に来場いただき盛況のうちに幕を閉じることができました。

「顧客体験」を追求する、石井龍夫さんが登壇

元・花王株式会社でデジタルマーケティングセンター長を務め、現在はアドビで「顧客体験」を研究され続けている石井龍夫さんが登壇。デジタルが生活に浸透している時代の顧客体験について、花王での事例を交えて解説していただきました。

デジタルの浸透により、消費者自身が変化

「生活スタイルの多様化」「"マス"ターゲットの消滅」という変化により、これまで成功していた日本のメーカーのビジネスモデルが大きく揺らいでいます。まず前段では、どのような変化によって従来のビジネスモデルが通用しなくなったかを説明しました。

洗濯用洗剤へのニーズも「洗浄力」中心から、「除菌」「香り」「すすぎの減少」など多様化

顧客を理解する

ではいかに顧客理解をすればよいのか、と挙げられたのはビッグデータ活用です。ふたつの事例を通して、SNS解析から生活者を理解して広告を変化させた話を聞きました。

ヘアカラー製品『リーゼ プリティア』の例では、その購買ターゲットを探るため、過去1年間の「髪を染めたい」というTwitterのつぶやきを収集して解析したそうです。

SNS解析から顧客ターゲットを発見しました

大半は予想通りでパネル調査とも一致しましたが、それとは違うつぶやきがポツポツ見られました。その少数ユニットを詳しく調べると「価格への抵抗」「お洒落に対する恐怖心」があること、仮に『プリティア』製品を知っていても自分向けの製品だと思えずチャレンジしていなかったことが浮かび上がってきました。

その層向けに、広告ツイートがタイムラインに流れるようにパーソナライズして発信しました。コンテンツに連動したマス広告は行っていないそうです。

結果、Webページへの流入が急増し、売上増や継続したシェア獲得に結びつきました。これはビッグデータを活用してこれまで見逃していた新規顧客層を発見した事例でした。

ターゲットが共感できるクリエイティブを用意

これらの事例では、ビッグデータによる顧客理解と同時に、パーソナライズされたクリエイティブによって、広告を「自分ごと化」できることが重要だとも語られました。

製品自体をパーソナライズする

広告による顧客体験をパーソナライズする話から、続いて紹介されたのは、製品そのもののデザインをパーソナライズしていく発想のブランドです。

自分の憧れるライフスタイルに合った製品をセレクトできる

クレンズケアシャンプーの『PYUAN』は、香りとパッケージデザインの違いで、目指したいライフスタイルに合わせてバスルームに置きたいものを選べるというもの。お客様の「自分の目指したいライフスタイルにあったものが欲しい」という欲求に応えています。

このときは、よりパーソナライズされたコミュニケーションを提供するために、製品ごとに41種類の広告クリエイティブを用意しました。

Adobeが提供すること

デザインはさまざまな顧客接点になります。これまでは一種類の広告クリエイティブだったところが、パーソナライズのためにデザイナーの仕事が増えてきていること、さらに多様化するお客様それぞれが「自分ごと化」できるよう、デザインの果たすべき役割が大きくなってきていることががわかります。

「リサイズするだけの"作業"ではなく"仕事"をしよう」というメッセージとともに、Adobeが提供するAIである「Adobe sensei」が、さまざまなパターンを一瞬で生成してくれるデモ動画が紹介されました。

効率化しながらお客様に価値をお届けするには

マーケティングは体験型になること、顧客のインサイトを素早く集めることなど、多くが求められる中、テクノロジーは作業を減らして仕事を楽にしてくれます。

「では、どう使いこなしていくのか」という問いかけは、マーケティング側から長年メーカーのものづくりに携われた石井さんからの真摯なものでした。

"ストーリー"を伝えるデザイン

最後はマーケターがデザインに求めること。お客様を取り巻く環境が変化してもデザインはさまざまな顧客接点を持っています。マーケターが求めるのは、"インサイト"に基づく"ストーリー"を持ったデザインだと石井さんは言います。

顧客理解に基づいて、行動を動機づけるクリエイティブが求められている

製品を選んでもらうためには、「なぜあなたがこの商品を買わなくてはいけないのか」「なぜあなたにとってこの商品があっているのか」を、お客様文脈のストーリーで伝えていく必要があります。ここにデザインの力を期待しているという話でした。

セッションは、石井さんの「クリエイターがより価値のある仕事をしていくには、どうすれば良いかを考える機会になったでしょうか。」という言葉で幕を閉じました。

デジタルマーケティングの実例が多く紹介された石井さんの話により、お客様の変化の機微を捉えるビッグデータ活用の凄さを実感しました。顧客体験におけるデザインの意味合いやクリエイターの仕事を、あらためて考えさせられたセッションとなりました。

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