design surf seminar 2018

ヒットのつくりかた

レポート

2018.10.29

シェア

篠原誠

株式会社 篠原誠事務所
クリエーティブディレクター

一橋大学卒業後、95年電通入社。18年篠原誠事務所設立。マスからデジタル、店頭にいたるまでの統合コミュニケーションの構築を得意とする。au、UQ、家庭教師のトライ、湖池屋、富士フイルム、エステー、WOWOW、パイロット、JT、タマホーム、一番搾り、ジャンボ宝くじ、ソイジョイ、賢者の食卓、カローラスポーツ、サロンパス、タウンワーク、MステウルトラFESなどを担当。auのCMソング「海の声」「みんながみんな英雄」「やってみよう」「見たこともない景色」「笑おう」やみんなのうた「デッカイばあちゃん」の作詞も手がける。2015年クリエイター・オブ・ザ・イヤーのほか、TCCグランプリ、ACCグランプリ、ADC 賞など受賞。NHK BSドラマ「嘘なんてひとつもないの」の原案と共同脚本。

齋藤太郎

株式会社 dof 代表
CC INC. 共同代表

株式会社電通入社後、テレビ局、営業局を経て、05年にコミュニケーション・デザインを生業とする、株式会社dofを設立。事業戦略から、サービス・商品開発・マーケティング戦略立案、メディアプランニング、クリエイティブの最終アウトプットに至るまで、コミュニケーションの川上から川下まで「課題解決」を主眼とした提案を得意とする。サントリー「角ハイボール」「トリスハイボール」、資生堂「エリクシール」コーポレートスローガン「一瞬も 一生も 美しく」、夢の通訳機「ポケトーク」、JR東日本「行くぜ、東北。」などを手がける。

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2018 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2018年10月12日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。
3回目となる今回も、デザインをビジネスの側面から捉えた8本のセミナーを行い、たくさんの方に来場いただき盛況のうちに幕を閉じることができました。

数々のヒットを手掛けてきた二人

昨年の登壇が好評だったコミュニケーションデザイナー齋藤太郎さんが今年のパートナーに選んだのは、人気CMを数多く手掛けるクリエーティブ・ディレクターの篠原誠さん。

電通の同期という二人は、現在それぞれ独立して広告制作をはじめ、さまざまな分野で活躍中です。数々のヒットCMを手掛け、今年独立して篠原誠事務所を設立したばかりの篠原さんに、独立して約14年という齋藤さんが話を聞くスタイルでセッションは始まりました。

齋藤太郎さん(左)と篠原誠さん(右)は、電通入社当時は同じ寮で寝食を共にしていたそうです

齋藤さんは、企業だけでなく自治体や学校など多岐にわたるクライアントから依頼を受け、さまざまな領域での課題解決に携わっています。デジタルもあれば印刷物もあり、事業計画も作るなどアウトプットも幅広いのが特徴です。サントリーのウイスキーのブランディングを手掛け、ハイボールをヒットさせた仕掛け人でもあります。

篠原さんは、auの三太郎シリーズや、UQ、キリン 一番搾り、家庭教師のトライなど、誰もが知るヒットCMを手掛けたヒットメーカー。齋藤さんからは、「三太郎、トライ、一番搾りなど、息が長い(CMが多い)のが感心する」との篠原さん評がありました。

リアルタイムに質問を受け付け

このセッションは、slidoというサイト/モバイルアプリでリアルタイムに質問を受け付けました。スマートフォンから匿名で質問できる便利なサービスで、二人のプロフィール紹介が終わった時点で、早速いくつかの質問が寄せられます。

来場者からリアルタイムでの質問がどんどん届きます

以降は、来場者から寄せられた質問を齋藤さんが選び、篠原さんに問いかける形式になりました。どんな質問でも、齋藤さんの巧みな進行で、「ヒットのつくりかた」に関する話へと繋がっていきました。

ヒットCMはどうやって作られるのか?

「ヒットは生まれるべくして生まれたのか、結果論なのか、狙いに行くのか?」という齋藤さんの問いに、「ヒットしたいと思って狙ってる」と答えた篠原さんは、「こうなったらいいな」を最初に決めるそうです。

たとえば、格安スマホの広告では、その分野で「ライバル会社と2強に見えたらいいな」と決めたところから、クリエイティブを組み立てたとのこと。そこからどういう発想でどういう仕掛けをしていったのか、くわしい話がありました。

ヒットメーカー二人のCM制作の裏側に来場者も興味津々です

篠原さんは「こうなったらいいな」を自分の中にとどめておく一方、齋藤さんはコンセプトとなる言葉をスタッフ全員で共有するそうです。ハイボールのブランディングでは「新オヤジに角ハイボール」をコンセプトワードに、ウイスキーのターゲットの若返りに取り組んだというエピソードも興味深い内容でした。

篠原さんの「世の中の面白いものってほぼ理屈がない」という指摘も考えさせられる内容でした。「どう考えても積み上げ式では生まれてこないもの」を作るためには、「シチュエーションを決めてから考える」「この歌を使うと決める」「『○○編』など題名から決める」といった発想のヒントも紹介していただきました。

二人の考えるテレビの未来

「テレビの未来をどう考えるか」という問いは、誰もが興味を持つ質問だと思います。

齋藤さんが来場者からの質問をどんどん拾っていきます

篠原さんは、みんなが大袈裟に言うほどテレビは弱っていないという前提で、徐々にゆっくり弱くなっているとの答え。齋藤さんは自分や自分の子供がテレビを見ないこともあり、テレビの未来を悲観的に見ているとのことでした。

二人の意見で共通していたのは、ネットがテレビに取って代わるのではなく、広告費をつぎ込めば一気に国民の90%にリーチできるメディアが、日本からなくなってきているということです。

また、地方の人はネットムービーを見ないけどテレビはまだまだ見られているなど、東京と地方との違いに二人は気をつけているとのこと。「日本全国東京じゃない」という篠原さんの指摘に、齋藤さんもうなずいていました。

クリエイターに刺激を与えるセッションでした

篠原さんが作詞したauのCMソング「海の声」の印税は篠原さんに入るのか、電通に入るのか? といった話を面白く紹介するなど、息の合った二人の掛け合いに笑いの絶えないセッションでした。

「仕事が楽しい」という二人の楽しくもためになる話の数々でした

数々のヒット作を生み続ける2人の発想のヒントや裏話を知ることができ、クリエイターに刺激を与える内容だったと思います。

この記事に付けられたタグ

関連記事

【design surf seminar 2018】きれいの先にあるもの

2018.11.20

【design surf seminar 2018】ブラさず伝える!〜デザインアライアンスのためのVisualization(視覚化) & Verbalization(言語化)〜

2018.11.19

【design surf seminar 2018】制作プロダクションにおけるIT活用事例

2018.11.15

【design surf seminar 2018】『「デザイン経営」宣言』と「デザイン経営」の実践

2018.11.08

【design surf seminar 2018】メーカーが「顧客体験」に取組む理由とデザインの役割

2018.11.01

【design surf seminar 2018】働き方を探す旅 ― 変わるデザインという仕事、生まれる新しいライフスタイル

2018.10.29

【design surf seminar 2018】デザインには企(わけ)があり、スタイルには意味がある

2018.10.18

design surf online

「デザインの向こう側にあるもの」ってなんだろうを考えよう。
design surf online(デザインサーフ・オンライン)はTooのオンラインメディアです。

 design surf onlineについて

おすすめ記事

探訪!オートデスク株式会社

訪問!日本デザイン学会様

探訪!Jamf Japan合同会社