design surf seminar 2024

デジタル革命時代のサービスデザイン - プリティーシリーズの革新

レポート

2024.12.11

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塚田 裕太

株式会社フューチュレック
プロデューサー

1989年、群馬県出身。筑波大学大学院システム情報工学研究科修了。株式会社チームラボにてWEBサービスなどのシステム開発の経験を経て、2019年より現職。FUTUREKでは、プロモーション案件や事業開発におけるシステム開発のディレクションとプロデュースを担当し、スマートフォンアプリから遊園地のアトラクションまで、幅広いジャンルのシステム開発を担当。

松本 紘平

株式会社タカラトミーアーツ

藤原 彩花

株式会社タカラトミーアーツ

2024年4月からアミューズメントゲーム・テレビアニメを展開中の「ひみつのアイプリ」のプロデュース・開発・マーケティング等を担当。

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2024 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2024年11月1日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。今回は、業界の最前線でデザインやクリエイティブに挑戦されている方々による8本のセッションを行い、新たな創造の原動力をお話しいただきました。当日のセッションレポートをお届けします。

株式会社フューチュレックのプロデューサー塚田裕太氏、株式会社タカラトミーアーツの松本紘平氏、藤原彩花氏を登壇者に迎え、プリティーシリーズの事例を中心に新しいサービスデザインについて紹介していただきました。

プリティーシリーズは、タカラトミーアーツが2010年から展開しているアミューズメントゲームとアニメのシリーズです。お子様の「なりたい夢を叶える」をコンセプトに、歌やダンス、おしゃれを切り口としています。

異なる複数のシステムを組み合わせて1つのユーザー体験や演出を作り出す

会場の参加者に挙手していただいたところ、プリティーシリーズのアミューズメントゲームで遊んだことのあるユーザーも参加しており「実際にユーザーさんがいるのは、なかなかの緊張感です」と語る塚田氏が、まずはフューチュレックの会社紹介をしました。フューチュレックはデジタルコンテンツを扱う開発プロダクションで、デザインと企画のクリエイティブチームと、システムインテグレーションの技術開発チーム、それらを繋ぐマネジメントチームを社内に持つのが特徴です。

フューチュレックが携わる業務では、ライブ演出とスマホアプリを連動させるなど、異なる複数のシステムを組み合わせて1つのユーザー体験や演出を作り出す事例が増えています。本セッションではアミューズメントゲームとWebサイトが連携する、プリティーシリーズの「マイキャラルーム」の事例を中心に紹介していきます。

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マイキャラルームが実現した遊び方の深化

2024年4月からアミューズメントゲームとテレビアニメの展開が始まった最新作「ひみつのアイプリ」では、2種類の筐体で異なるターゲット層にアプローチしています。この2つの筐体のお店での遊びと、おうちでの遊びを繋ぐシステムとして機能しているのがマイキャラルームです。

前作「プリマジ」から始まったマイキャラルームは、3つの明確な目的を持って開発されました。藤原氏は「まず1つは、おうちからWebのマイキャラルームを通してお店に遊びに行きたいと思う仕掛け作り。2つ目には、これまでアナログで対応していた各種応募キャンペーンのデジタル化などユーザビリティ向上のためのインフラ整備。そして最後に、お店で遊んだゲームの思い出をおうちでも持ち帰って、家族との話題の種にするための仕掛け作りやユーザー間のコミュニケーションを促進しました。」と説明します。

続いて塚田氏は、実際のマイキャラルームのスクリーンショットを使った機能説明と、システムとしての仕組みの紹介を行いました。仕組みとしては、従来のゲームデータを管理するサーバーとは別に、ゲームのプレイ結果や画像などのデータを管理するWebサイト専用のサーバーを設けたといった説明がありました。

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ゲーム筐体+マイキャラルームの体験について

反響が大きかったのは自分やみんなのフォトが見られる機能で、「マイキャラの画像を使って、SNS上で見せ合うといったコミュニケーションが自然に生まれたのが、マイキャラルームをやってきての大きなポイントだった」と塚田氏は語りました。マイキャラのオリジナルの設定を考えて投稿したり、短編のストーリーを作って文章や動画を投稿したり、複数のキャラクターを作ってユニットとして披露するなど、マイキャラルームの遊びを深く楽しむ人たちも現れました。

このような反響を受け、最新作「ひみつのアイプリ」では、SNSのような形でリアクションし合うことができたり、プロフィールアイコンとしてフォトを使えるなどフォト関連機能をさらに強化しました。また、カードが必須だったゲームへのログインが、スマートフォンで表示した二次元コードだけで可能になることで、より手軽にゲームを楽しめるようになりました。

アミューズメントゲームとウェブサイトの連動における工夫と成果

つづいて、タカラトミーアーツの松本氏が、サービスデザインに関する話をしました。最新作では、アニメのキャラクターたちと同じライブ体験ができる直感的なリズムゲーム「ひみつのアイプリ」と、よりコアなターゲット向けの「アイプリバース」の2種類の筐体を用意することで、さまざまなニーズを持つユーザー層に受け入れてもらうサービスデザインになっているとのことです。

さらに、フォトやカードをマイキャラがより大きく写り主役となるように変更したことや、お友達のキャラクターと一緒に遊ぶフレンド機能がデジタルで完結するようになり利便性がアップしたことなどの進化について紹介しました。

塚田氏からは、ゲーム筐体から配出されるカードや、アニメにも登場する「コーデブック」と呼ばれる本にも使われているデザイン上のあしらいを、Webサイト側のデザインにも取り入れているといった工夫が語られました。作品の世界観とWeb上で見ているものの世界観が地続きであることがわかるための取り組みです。

アミューズメントゲームの体験にデジタルで何を付加するかの解説

さらに塚田氏は、ゲーム筐体からのデータ連携により「ゲームセンターに行かない日も、自分のプレイを振り返ったり、ほかの人のプレイを見て刺激を受けたり、タッチポイントを作ることでアミューズメントゲームとウェブサイトの連動を成し遂げられた」と成果を語りました。スマートフォンでマイキャラルームにログインすることで、自分の集めたコーデアイテムやほかのユーザーのコーディネートを見たり、プレゼント配布やイベントの告知などが見られることで、日常の中でもゲームのことを考えてくれるサイクルが実現しています。

最後に運営サイドの話として、紙で管理されてきた応募キャンペーンのデジタル化について紹介しました。マイキャラルーム上の管理機能で応募告知から選考、結果告知までデジタル上で完結できることで、運用負荷が軽減されるとともに、より頻度を上げて次の施策を打ち出すことも可能になっています。

ローンチしたタイミングでは張り付くぐらいの勢いでSNSを見ていた

質疑応答では、参加者からユーザー層の設定や機能の複雑化への対策、ユーザーの声の収集方法など、具体的な質問がさまざま投げかけられ、登壇者たちの取り組みがより明らかになりました。

ユーザーの声の収集については、定量・定性両面からのアプローチが行われているとの回答でした。松本氏は、親御様と一緒に答えていただくアンケートによる定量データの収集とともに、ゲーム筐体のあるお店やイベント会場での子供たちの反応や遊んでいるご家族の反応を見るといった、定性的な観察も重視していると説明します。

SNSでの反応も大きく意識しており、塚田氏は「特にローンチしたすぐのタイミングでは、開発チームも張り付くぐらいの勢いで見ていた」と語り、ユーザーの声に迅速に対応してアップデートを繰り返したという経験談を語りました。

藤原氏は、SNSへの投稿を促す発信を継続してきたことで「お母さんが、娘がこういう感じで遊んでますといった投稿をXなどでしてくれるようになった」という変化も指摘し、そこからゲームプレイへの反応を見ていると説明しました。

アミューズメントゲームというリアルな場での体験を大切にしながら、デジタル技術でその価値をいかに拡張できるかを示したプリティーシリーズのマイキャラルームの事例は、新しいユーザー体験を生み出すサービスデザインを模索する多くのビジネスにとって示唆に富む取り組みといえそうです。


株式会社フューチュレック
プリティーシリーズ ひみつのアイプリ
プリティーシリーズ アイプリバース

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