design surf seminar 2024

Adobe MAX最新情報とFireflyの使いどころ 〜 アドビの岩本さんに聞いてみよう! 〜

レポート

2024.11.19

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岩本 崇

アドビ株式会社
フィールドプロダクトマネージャー

前田 勝規

株式会社Too
Too Training Center Desi(デジ)講師

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2024 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2024年11月1日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。今回は、業界の最前線でデザインやクリエイティブに挑戦されている方々による8本のセッションを行い、新たな創造の原動力をお話しいただきました。当日のセッションレポートをお届けします。

毎年好評いただいている、Adobe MAXレポートセッション。今年もアドビ株式会社 岩本 崇 氏にご登壇いただきました。Too前田から質問を投げかけながら、重要ポイントをデモを交えて解説していただきました。

今年も登壇いただいたアドビ株式会社の岩本崇さん

いよいよ実務での活用フェーズへ入ったFirefly

セミナー冒頭、会場の参加者に向けてFireflyの利用経験を尋ねたところ、多くの参加者が試用済みでした。しかも、半数以上がPhotoshopやIllustratorのFireflyを実務で使用した経験があるとわかり、「わたしの想像以上に、しっかり仕事で使われていることを感じられました」と岩本氏。

参加者には〇×カードでアンケートに答えていただきました

そして、もう活用する段階に入ってきたというFireflyについて、あらためて2つの特徴を紹介しました。

ひとつ目の特徴は、安心して商用利用できる画像生成AIとして設計されていることです。トレーニングデータにAdobe Stockの商用利用可能な画像やオープンライセンス画像、著作権が失効したコンテンツを使用することで、他者・他社の権利を侵害する画像は学習の非対象となっています。また、生成される画像も、人種、年齢、性別に適切に配慮されたバランスの取れたものになるよう設計されています。

もうひとつの特徴は、クリエイターの味方ということです。トレーニングに協力いただくクリエイターにはしっかり利益を還元します。また、アドビは「コンテンツ認証イニシアチブ(CAI)」という団体を設立しており、コンテンツ生成に生成AIが使用されたことが示される「コンテンツクレデンシャル」機能はPhotoshopにベータ版として搭載されています。

Photoshopの「不要なものを検出」と生成AIの強化

Adobe Photoshopについて、まずは新機能の「不要なものを検出」についてデモンストレーションを交えての紹介です。風景写真から電線を除去したり、観光地の写真から不要な人物を削除する作業が、わずか数クリックで実現できることが示されました。

あまりにも簡単に不要な要素が消えたため会場のリアクションが薄く、Too前田から「みなさん(驚きすぎて)息を飲んだんだと思います」とフォローが入る一幕も。人物の自動検出では、写真の主役となっている被写体以外の人を選んでくれるし、人物の影も検出して消してくれます。従来に比べ劇的に作業の効率化が期待できる魅力的な新機能の紹介でした。

被写体以外の人物を自動で選択。人物の影も選択されています。

つぎに、強化されたPhotoshopの生成拡張機能について紹介しました。ベースのエンジンがImage 3 モデルにアップデートしたことによる品質の向上を実際に見てもらい、さらに「類似を生成」機能が追加されたことで、同じ方向性でのバリエーション作成が容易になったことを解説しました。生成AIでは毎回毎回違ったものが生成されますが、その中から気に入ったものをベースに「類似を生成」で希望の画像に近づけていくアプローチができるようになります。

ベースのエンジンがアップデートして品質がアップした生成拡張

会場の反応も大きかったIllustratorの「パス上オブジェクト」機能

本セッションで特に会場の反応が大きかったのが、Adobe Illustratorに新しく追加された「パス上オブジェクト」機能のデモンストレーションでした。複数のオブジェクトを曲線に沿って自由に配置でき、簡単に順番を入れ替えられる様子が披露されると、参加者からは何度も「おー!」という声が上がりました。生成AIほど派手な機能ではないので、「意外なところで『おー!』をいただけますね」と岩本氏が言うと、Too前田はIllustratorを使っている人が多いからこそのリアクションでしょうとコメントしました。

パス上にオブジェクトを配置して、パスを編集している例

また、トレース機能のアップデートにより、グラデーションの自動抽出が可能になりました。さらに、パス数がより少なく最適化されたトレースができるようになったことが、新旧のトレース結果の比較で確認できました。

20年ぶりに刷新されたIllustratorのテキストエンジン

Illustratorのテキストエンジンのアップデートはとても重要な話題です。20年間使われてきたテキストエンジンが刷新されるということで、1年かけて情報発信してきた岩本氏ですが、まだまだ周知されてないことが会場へのアンケートでわかり残念そうでした。このセミナーに合わせてブログを更新したのでぜひ見て欲しいとアピールするとともに、「皆さん、もう知らないとは言わせませんからね」と強調すると、会場からは温かい笑いが起きました。

テキストエンジン更新前と更新後のテキストを同時に表示している例

Illustratorは非常に歴史のあるツールなので、トラブルを避けるために過去に作ったファイルを新しいバージョンで開くケースへ配慮しています。更新前と更新後のテキストを色を変えて同時に表示して、変更箇所を確認できる機能を紹介しました。

新しい3DツールProject Neo(ベータ)とInDesignのアップデート

新たに発表されたProject Neo(ベータ)は、ブラウザベースの3Dデザインツールです。直感的なUIで3Dオブジェクトを作成でき、ベクター形式のファイルをIllustratorに送ることもできます。既に試用可能ですが、今回はデモンストレーションはなく動画で紹介しました。

Project Neo(ベータ)で3Dデザインをしている様子

Adobe InDesignにもFireflyの機能が追加され、生成拡張や画像の生成がInDesign上で利用できます。ほかにも数式組版のサポートや、Adobe Expressとの連携もできるようになりました。

AIで動画の尺を引き延ばせるPremiere Pro(ベータ)の生成拡張

今回のAdobe MAXで発表されたアップデートで、「多分一番注目されたのがPremiereじゃないか」という話から、現在ベータ版として提供されているAdobe Premiere Pro(ベータ)の生成拡張機能を紹介しました。

駅のホームで撮影された約7秒の映像を使用し、最後から2秒間分動画の尺を引き伸ばします。動画なのでPhotoshopの生成拡張よりは時間がかかりますが、あっという間に追加の動画が生成されました。駅のホームを歩く岩本氏が、追加の2秒間もそのまま歩いていく自然な映像が生成され、Too前田は驚きを通り越して笑ってしまいました。

撮影した映像(上)と生成された映像(下)

今のところ生成できるのは2秒間ですが、映像の最後に余韻を残したい、文字を入れたいといったケースなどで重宝しそうです。「こんなすごい時代になっちゃいましたね」という岩本氏の言葉に共感した人も少なくなかったでしょう。

アドビからの情報発信のチェックを

最後にあらためて、岩本氏から自身の情報発信に関する紹介がありました。今回のセミナーに合わせ、テキストエンジンアップデートの集大成となるブログ記事と、印刷関連の方々向けの「PDF&出力の手引き」を公開しており、ぜひチェックいただきたいと強調していました。

また、「わたしのXアカウントでは、とくに今回のIllustratorのテキストエンジン更新について、1年かけて情報を発信してきました」と自らの情報発信について語りました。アドビのツールに興味を持っていただいている皆さんは、岩本氏のXのアカウントもぜひフォローしてください。

実務で活用する段階に入ったFireflyの強化されたポイントや、驚きのPremiere Pro(ベータ)の動画生成、地味ながらも重要なIllustratorのテキストエンジン刷新など、盛りだくさんな内容のセッションでした。


・design surf seminar のアーカイブ動画はこちらからご覧いただけます。視聴期限は2025年3月31日までです。
岩本崇氏のX(旧Twitter)アカウント
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