design surf seminar 2023

ソニー・ホンダモビリティにおける新たな共創デザイン開発

レポート

2023.12.21

シェア

石井 大輔

ソニー・ホンダモビリティ株式会社
デザイン&ブランド戦略部 デザイン&ブランド戦略ヘッド

1992年ソニー入社。2度の英国赴任を経て帰国後、ロボティクス、モビリティなどの新規領域や、R&D、コーポレートブランディング等幅広い領域のID/UIUX/CDを含む統合的なクリエイティブディレクションを担う。2021年よりクリエイティブセンター長に就任。2022年、ソニー・ホンダモビリティ デザイン&ブランド戦略部ヘッドに就任。iF Award(ドイツ)、DFA Award(香港)、GOOD DESIGN賞(日本)審査員、ミラノ工科大学客員教授。

河野 拓

ソニー・ホンダモビリティ株式会社
デザイン&ブランド戦略部 ゼネラルマネージャー

1992年本田技術研究所4輪デザイン開発室入社。主にエクステリアデザインに従事し、アコード、シビック、CR-V、Acura RDXなどを担当。商品企画室や北米駐在などを経て2017年デザイン開発室室長に就任。2022年ソニー・ホンダモビリティ デザイン&ブランド戦略課ゼネラルマネージャーに就任。

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2023 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2023年11月10日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。8回目となる今回は、4年ぶりのリアル開催です。コミュニケーションの手法や創造の手段に挑戦した方々による8本のセッションを行い、盛況のうちに幕を閉じました。当日のセッションレポートをお届けします。

2022年、ソニーグループ株式会社と本田技研工業株式会社のジョイントベンチャーとして、「ソニー・ホンダモビリティ株式会社」が発足。同社が手がけるモビリティの1stプロトタイプとなる「AFEELA Prototype」を発表しました。

そのブランディング戦略をはじめとして、エクステリア、インテリア、CMF、UIUX、コミュニケーション、空間デザインなどを一手に担っているのが同社の「デザイン&ブランド戦略部」です。

今回はメンバーのお二人を迎え、会社設立から「AFEELA Prototype」開発までのストーリーと舞台裏をお話しいただきました。

デザインの各専門領域を担うスペシャリストが集結

はじめに石井氏から、デザイン&ブランド戦略部について紹介がありました。組織は「Brand」「Product」「UIUX」3つの役割を有しており、それぞれの専門領域を担いつつ、ワンチームとしてディスカッションを重ねながらデザインに関連するあらゆる業務を進めています。

ソニーホンダ1.png

小規模のベンチャー企業だからこそ、これまでのキャリアでデザインをコアとしてきたメンバーも、プロダクトデザイン以外の領域——例えばゼロからブランドを創出するプロセスや、完成したプロダクトを訴求する方法の模索、ひいては経営陣とダイレクトにコミュニケーションを重ねながら会社そのもののロードマップ策定にまで関わることになります。

同部署でゼネラルマネージャーを務める河野氏は、HONDA、SONY両社から各分野のスペシャリストが集い、それぞれの専門性を拡張しながらプロジェクトを進めることで、それらが重なり合い、混ざり合いながらデザインの領域を拡張していると感じているそうです。

新ブランド創出において、デザイナーが関与したプロセス

ソニー・ホンダモビリティの新ブランド「AFEELA」を創出するにあたり、デザイン&ブランド戦略部は主に次のような役割を担ってきました。

1)企業全体のパーパス策定

デザイナー自身が全社員にインタビューを実施し、その中からキーワードを抽出。トップマネジメントと議論を重ねて、パーパスを策定しました。

ソニーホンダ2.png

2)開発コンセプトの策定

パーパス策定と同様、デザインチームのメンバーがエンジニアにインタビューを行い、コアとなるテクノロジーを抽出。議論を繰り返してプロダクトを開発するためのコンセプトを策定しました。

ソニーホンダ3.png

3)ブランド名の開発

100以上の案を作成したうえで、調査・議論を重ねブランド名及びロゴのデザインを制作。最終的にブランド名は「AFEELA(アフィーラ)」に決定しました。

ソニーホンダ5.png

カルチャー・価値観が異なる2社が、どのように共創したのか

新ブランド「AFEELA」の1stプロトタイプを開発するプロセスにおいて、ジョイントベンチャーであるために2社間のカルチャー、価値観の違いに戸惑うこともあったと、両氏は話します。

例えば車体のデザインに着手したとき、HONDAのメンバーはスケッチやクレーを使って初期デザインを作成しましたが、SONYでは最初から3Dモデルなどを作成するフローが一般的だったため、まずは開発手法や進行方法を協議する必要に迫られたそうです。

とはいえ車をデザインするためにはどちらのプロセスも不可欠であるため、結果的に、デジタルでデザインしてからフィジカルで確認する流れでプロダクトデザインが進行しました。

また、 デザイナーの視点にも違いがありました。河野さんいわく、HONDAのデザイナー陣は「車がフリーウェイを走る」「お客様が洗車をしている」「お客様が車内で楽しんでいる」などの具体的な利用シーンを念頭に置いてデザインすることが多いそうですが、それに加えてSONYのメンバーが「美術館に展示するとしたらどう見えるか」「ブースでどのように美しく映えるか」など、さらに細かいところまで目を配っていることに感銘を受けたといいます。

はじめは業務内で使用する専門用語すら異なっている状態で、お互いに歩み寄りながらプロジェクトを進めていくプロセスは非常に難易度が高いものに思えた、とのこと。

しかしすべてのデザインプロセスをオープンにし、それぞれのメンバーが自分の専門領域を超えて積極的にフィードバックし合うことで、結果的に大きなシナジーが生まれました。試行錯誤を重ねながらブランドやプロダクトを生み出していく行為が、同時に会社そのもののカルチャーを形づくっていったのです。

ソニーホンダ4.png

「AFEELA」は現在、急ピッチで開発が進められており、2025年の前半には先行受注を開始、2026年後半を目処に、国内の顧客のもとに届き始める予定だそうです。

日本を代表する企業2社から生まれたジョイントベンチャー。彼らが世に送り出そうとしている新プロダクト誕生までの、バックストーリーが語られた本セッション。ブランドを創出するプロセスにおいて、デザイナーが果たす役割とその大きな可能性を改めて感じることができました。


ソニー・ホンダモビリティ株式会社

関連記事

【design surf seminar 2023】Whateverが「見たことがないもの」を生み出し続けられる理由

2024.01.12

【design surf seminar 2023】設計事務所における横断型クリエイティブについて

2023.12.28

【design surf seminar 2023】10年でどう変わった? デザインとあの(業務・お金・知財・契約)話 ~実態調査アンケートから読み解くデザイン業界のリアル~

2023.12.26

【design surf seminar 2023】拡張する空間概念 地中から空中まで

2023.12.25

【design surf seminar 2023】Vision To The Future:日本の未来をどうデザインしていくか

2023.12.07

【design surf seminar 2023】Adobe MAX最新情報と人工知能が目指す道  ~アドビの岩本さんに聞いてみよう!~

2023.12.05

【design surf seminar 2023】クリエイターのワクワクは止まらない2023 カラダで創り出そう、クリエイティブ!

2023.11.24

design surf online

「デザインの向こう側にあるもの」ってなんだろうを考えよう。
design surf online(デザインサーフ・オンライン)はTooのオンラインメディアです。

 design surf onlineについて

おすすめ記事

探訪!オートデスク株式会社

訪問!日本デザイン学会様

探訪!Jamf Japan合同会社