探訪!オートデスク株式会社
中道 大輔氏
株式会社Kitchen & Company
代表取締役・マネージングダイレクター
1975年、東京都生まれ。12歳で単身渡英。European Business School 卒業後、British Airways入社。2001年に帰国。同年 TBWA JAPAN 入社。その後、Fallon Tokyo、Wieden & Kennedy Tokyoなどのグローバルクリエーティブエージェンシーにて adidas、Dyson、Volkswagen、Cartier、Nikeなどの世界的なブランドのプロデュースを担当。2008年、Levi Strauss Japan 入社。マーケティングダイレクターを経て、Levi Strauss & Company のデザイン&マーチャンダイジングダイレクターに就任。2013年、株式会社Kitchen & Company を設立。これまでのグローバルでのcreative brand businessの 経験を生かし、“従来の境界線を越える様々な価値の共有”によって、新しいマーケットを創りだし、文化の可能性を世界の必要な場所に広げることをビジョンとし、東京オフィスとロンドンオフィスの2拠点及び世界各国のパートナー達と、国内外様々なクライアントのグローバルブランドビジネスサポートを遂行中。
Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2023 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2023年11月10日(金)に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催しました。8回目となる今回は、4年ぶりのリアル開催です。コミュニケーションの手法や創造の手段に挑戦した方々による8本のセッションを行い、盛況のうちに幕を閉じました。当日のセッションレポートをお届けします。
グローバル化が進む世界。 私たちをとりまく環境は、ますますボーダレスになってきました。インバウンドも回復し、日本のカルチャーも海外に知られることが増えてきています。しかし、日本に住む私たちが気づいていないモノ・コト・ヒトによって形成される「カルチャー」が埋もれてしまっていることも現状です。
本セッションでは、さまざまなグローバルブランド開発を担当してきた中道大輔氏が、世界から見た日本の現状と、その良さをどう発信していくべきかを体験談を交えながら話しました。
世界の人々は本当の日本を知らないし、伝える努力をしてこなかったことがもったいない
中道氏が設立した株式会社Kitchen & Companyは設立10年目を迎えました。「日本の未開拓な可能性をときはなつ」をミッションに、国内外さまざまなクライアントのグローバルブランドのサポートを行いながら、並行して自社ブランドも展開しています。
自社ブランドのひとつ「a|roundtea」は、日本のお茶をきちんとしたブランドとして世界に出していくことを目指しています。はじめたきっかけは、お茶の消費量が減り国内の緑茶農家が衰退していく一方で、世界の抹茶ブームで消費されているのは日本以外のお茶が9割という状況への危機感からとのことです。まさに本セッションのテーマにつながる、日本の現状とその良さをどう発信すべきかを実践した事例だと感じました。
まずは、人口減や「ビッグマック指数」の低下から考えられる国際的な地位の低下など、今の日本の元気のない状況を解説していきましたが、そこからそれを変えていきたいという前向きな話に展開していきます。世界の人々は本当の日本を知らないし、伝える努力をしてこなかったことがもったいないと中道氏は訴えます。
そして、日本から世界にどう出ていくかを考えるときに、自分たちのことを知ると同時に、世界の人のことも知ることが必要だと強調しました。「人を理解できなければビジネスを理解することはできない」というマーケティングコンサルタントのサイモン・シネックの言葉を引用して、人を知ることの重要性を伝えました。
ブランド構築における3つのPrinciples
次に、ブランド構築においてこれまで中道氏がやってきたことから、コミュニケーションに特化した3つのPrinciples(考え方)を紹介しました。それは「広告ではなくストーリーテリング」「トレンドではなく新しい声を創造する」「探究を信条とし、決めつけない」の3つです。
「広告ではなくストーリーテリング」ではスターバックス、「トレンドではなく新しい声を創造する」ではナイキの例と、世界を代表するブランドの例をあげてわかりやすく説明しました。
「探究を信条とし、決めつけない」では、携帯電話市場を席巻していたBlackBerry(ブラックベリー)が急激に衰退したのはiPhoneの登場が理由というだけでなく、自分たちの商品ありきの考えでターゲットなどを決めつけていたからではないかという話をしました。そしてそれは、人を知る、相手を知ることの大切さの話につながっていきました。
世界の人に伝わることで初めて価値になる日本の優位性
つづいて、中道氏が考える日本の優位性として紹介されたのが以下の4つの項目です。日本人にとっては当たり前と思えることばかりだけれど、世界の人に伝わることで初めて価値になると説明しました。
- こだわり(COMMITMENT)
- 集団性/団結力(COHESION)
- 誠実性(CONSCIENTIOUSNESS)
- 継続性(CONTINUITY)
グローバルに仕事をする中道氏でも、細部へのこだわりや理想を貫くことについて日本は世界の中で次元が違うほどレベルが高いと感じており、その違いを自分たちで意識しながら伝えていくことができればプラスとなると考えています。
また、集団性や団結力にはプラスとマイナスの両面がありますが、サッカー日本代表の最近の戦い方などプラスに働いている事例も多いです。Jリーグに来た外国人監督が、チームを自分よりも前に出して団結することを日本で学んだという話も印象的でした。この話も、日本人の普段やっている当たり前が、世界では当たり前ではないし優位性になるという話につながります。
日本の謙遜する文化は海外の人にはあまり理解されないので、こちらから伝えないと我々が何をしているかがわからない状態のままです。日本の優位性をクリエイティビティを持って伝えることが我々の使命で、伝わって初めて物事は価値に変わると会場の来場者に語りかけました。
どういうパッションを持って何を信じているかを言うことが大事
では、そのために何が必要かについて、中道氏はブランドの創業者や関わる人みんなが、もっとパッションを出して自分が思っていることを言うべきだと主張します。間違っていてもいいので、「こうしたい」「こんな世界を作りたい」と、もっと言うべきだとまさにパッションを出して訴えていました。
ブランド構築における「広告ではなくストーリーテリング」、つまりストーリーが必要という話ともつながると思いますが、特に海外ではブランドとして選ばれる、あるいは商品を選んでもらうときに、ベネフィットやスペックの前に感情で選ばれるようにしないと、選ばれるための土俵に乗れないとのことです。
これから企業、ブランドが海外でスタートラインに立つには、自分たちがどういうパッションを持って何を信じているかを言うことが大事で、それは今の日本の企業や日本人に今後非常に重要なことだと強調しました。
そして最後に、サッカー日本代表の三苫薫選手が子供達に向けて語った「一番大事なのは、ビビらないメンタル」という世界で戦う上での心構えを紹介してこのセッションは終了しました。
日本の未来をどうデザインしていくかをテーマに、自らの体験や世界のブランドの事例をふんだんに交えた解説は、日本の企業・ブランドが世界に出ていくための大きなヒントとなる内容でした。
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