創り続ける人を応援したい。Orbital2開発秘話

インタビュー コラム

2019.06.20

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株式会社 BRAIN MAGIC
代表取締役
神成 大樹 氏

最新左手デバイス「Orbital2(オービタルツー)」は、クリエイターのために開発された入力デバイスです。開発者でもあるBRAIN MAGICの神成氏に開発秘話を伺いました。


クリエイターの身体的な負荷を減らしたい

Too:あらためて、Orbital2開発背景について教えてください。

神成氏(以下、敬称略):元々、私自身もイラストレーターとして絵を描いていました。ネット掲載をきっかけに、お小遣いレベルですけど、高校生の頃からイラストの仕事でお金をいただいていました。いわゆるソーシャルゲームのバブル期で、ソーシャルゲーム、トレーディングカードゲーム、PCのオンラインゲームなどのイラストなどです。順調に仕事量が増え、大学生のときにはこのまま絵で食べていける、という感覚がありました。

ところが、身体的に非常に大変で……痛み止めを貼りながら休みなく働き続けて、このままで自分自身大丈夫だろうかと心配していました。

そんな折に、当時通っていたデジタルハリウッド大学(以下デジハリ)の大学院で、IoT開発の授業がありました。もしかしたらこれで課題を解決できるんじゃないかと、開発に乗り出したのが最初です。

このカタチに至るまで

神成:初期の構想は「視点」でのコントロールでした。クリエイティブのソフトには、パラメーター調整をする複数のスライダーがあります。これを「スライダーの種類を視点で切り替えるようにしよう」という案です。

いざクリエイターに試作品を触ってもらうと、絵を描いている人はイラスト部分から目を逸らしたくない、画面から視点を逸らすことがストレスだと言われました。たしかにショートカットキーなら手元を見なくても動かせます。この試作から、一箇所のホームポジションで、目をつぶっていても操作できるものが必要だとわかりました。

また、クリエイターの作業を分析していくと、左手のショートカットキー操作は大きく2種類にわけられました。ツールの切り替えなどのシングルキー操作と、パラメーター調整のように連打が必要なものです。ショートカットキー操作には、このシングルキーと連打の入力操作が混在しています。

左手に負荷のかからないシンプルな形で、膨大な数の操作をコントロールするにはどうすればいいのか。たくさんの試作品をつくって行き詰まっていた頃の話です。パスタ屋さんでコショウを回してうまく出ず、傾けて回したら出た、ということがありました。

「倒して回す」ことで複数のアクションを組み合わせられる、この動作ならシングルキー操作とパラメーター調整の2つの機能を持たせられるのかもと思いつきました。Orbital2の形は本当に偶然できたものです。

紆余曲折あって行き着いたカタチ

神成:これまでジョイスティックが2本あるパターンや、その形状やボタン数なども変化しています。手にフィットさせようとするとサイズに合わない人が出てくるので、鉛筆のような持ち方になり、ボタン数を増やさないように画面にオーバーレイするメニューが生まれました。何度も違う形になっては戻ってきました。

トライアンドエラーで進んできた

Too:最初から製品化を見込んでいたのですか?

神成:デジハリの成果発表会で披露したときは、ちょうど特許を申請したタイミングでした。目指してはいましたが、正直製品化するとは思っていませんでした(笑)。

製品のコア部分はできていましたが、まず一番のハードルは資金でした。金型づくりと製品開発にさらに何千万円、その費用はどうしようかと。また、資金繰り以外にも壁はたくさんあります。壁にぶつかっては、デジハリの先生を訪問して「こうしてみれば?」という助言をもらって試す、そんなやりとりを繰り返して、気付いたらここまできました。周囲の人たちが、誰も無理だと言わなかった、これはデジハリの面白いところですね。

Too:クラウドファンディングもされていますね?

神成:クラウドファンディングは、資金より組織としての成長を目的にしました。アーリーアダプターを捕まえ、さまざまなトラブルや質問に対応する、本格的な販売前にそういうことをやるべきタイミングでした。世の中に出してどんな反響が返ってくるかという、テストマーケティングの目的もあります。

営業担当の坂井さんと当時を振り返りながら

神成:クラウドファンディング後には400名程のユーザーにお試しいただきました。ベータ版でも細かいアップデートを103回繰り返しましたが、実際に使ってもらうと想定していない問題が起こります。

ボタンの押し心地など個人の好みの部分と、機能として改善する部分を切り分けるのも難しかったです。0.8〜1Nで押せるボタンじゃないと長時間作業で疲れてしまう、でも押したとわかる感覚も必要。細かい仕様まで作り込みました。

耐久性も大きな課題でした。クリエイターはIllustrator操作で1時間あたり約1,000回のキー入力をします。一般的なリモコンボタンだと寿命が3万回、これだと3日で壊してしまうのです。普通のセンサーでは持たないので、これに耐えられるセンサーを見つけ出すのも大変でした。

センサーの耐久性をはじめ、何度も実験を重ねていることはOrbital2の強みです。既存の操作に対して、どうしたらより素早く、より少ない操作で実現できるか追求しているところも強みだと思います。

製品体験会での様子

海外展開について

神成:我々としては、10年後、20年後もクリエイティブをやっている、新しいことに挑戦している方々にぜひ使ってもらいたいです。そこで日本国内だけではなく、海外のマーケットにも両方にアプローチしています。

まずはアメリカと中国、ハリウッドの最新CG系や中国のすごく進化しているゲーム産業で、第一線で活躍するクリエイター、そのアーリーアダプターの方々からアプローチしています。ツールをミックスして制作方法を固定せず、常に新しい表現にチャレンジされている方々は、新しいツールにも慣れているようで使いこなすまでにあまり時間を要しませんでした。

未来のビジョン

神成:クリエイターのキャリア教育の一環として、出身校でOBとして話す機会があったのですが、そこで「人工知能が絵を描けるようになったら、絵を描く仕事はなくなりますか?」という質問を受けて、すごく返答に悩みました。対話を続けるなかで、「そのとき絵を描くのやめますか?」と聞き返してみたら、その学生からは「やめない。」という答えが返ってきたので、仕事で絵を描くことと、好きで絵を描くことは、切り分けて考えたらいいかもという話をしました。

いつか人工知能が自動で絵を描く時代がくるわけです。さらに進んで、人工知能が「あなたが楽しむための映画を、いま自動で生成しました」という時代がきたとき、人間は何をしているんだろう? と。楽しむだけ、オススメの作品を見続けるだけ、それは嫌だなと。私は、ものを創りたいという人たちがいて、その人たちを応援する社会であってほしいと思っています。

歌を歌う、絵を描く、物語をつくる……それらは人間の根源的な欲求として、失われないだろうと思います。そのために、いま何をするべきかというと、人と人工知能が渾然一体となって、いいものづくりをする方向にドライブすればいい。BRAIN MAGICでも、Orbital2というハードウェア製品の次は、人工知能やビッグデータという文脈のソフトウェア製品を開発しています。

未来では「クリエイター」という言葉が忘れ去られるくらい、世の中すべての人が自然にものづくりをするような世の中になると思っています。だからこそ「創る人」を応援していきたいです。

BRAIN MAGIC Orbital2株式会社Too

Orbital2(オービタルツー)は、デザイン制作や動画編集などで、キーボード操作を無くす事を目的に開発された入力デバイスです。

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