探訪!ローランド ディー.ジー.株式会社

インタビュー

2025.08.07

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メーカーさんを訪問し、皆さまの使っているツールが提供される背景を取材するシリーズ。今回は、イメージ(想像)をカタチ(創造)にするデジタル機器の開発・製造・販売を行うローランド ディー.ジー.株式会社にお話を伺いました。 

ものづくりの現場を支える多彩なデジタルファブリケーション製品を展開

平木さん(以下、敬称略):当社は、静岡県浜松市に本社を構えるコンピューター周辺機器メーカーです。1981年に電子楽器メーカーであるローランド株式会社の子会社として創業して以来、ものづくりの現場を支える多彩な製品の開発・提供に注力してきました。

創業当初はエフェクターの組み立てキットや、モニターの製造販売を手がけていましたが、1980年代中盤からはプロッターやカッティングマシンなどの出力機器の開発・販売へと事業をシフトしました。そして1997年に現在の主力事業であるインクジェットプリンターの開発・販売を始め、以降、切削加工機や、彫刻機、3Dプリンターなどデジタルファブリケーションを支える製品を幅広く展開しています。

市場の多様化や細分化が進んでいる近年では、UVプリンターの開発・販売に注力しています。紫外線(UV)を照射することで硬化するUVインクの「瞬時に硬化する」「多様な素材に印刷できる」「高い耐久性がある」などの特性を活かし、従来の看板業や印刷業での使用に加え、製造業、グッズ制作、教育現場など、幅広い分野へ用途が広がっています。 

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「世界初」の技術で「ワクワク」の連鎖を創り出す

Too:時代や環境の変化に合わせて、さまざまな製品を展開されてきた背景を教えてください。

鈴木さん(以下、敬称略):創業当初より、誰でもスムーズに創造や表現できるような製品を生み出してきました。その根底には、「世界初」の技術を生み出し、お客様の「ワクワク」を創り出したいという想いがあります。時代の変化やお客様の「もっとこうしたい」という声を汲み取り、まだないものをあるものに変えて、そしてあるものには付加価値を与えていく。その積み重ねを繰り返してきました。

たとえば、世界で初めてメタリックカラーの出力を実現した溶剤インクジェットプリンターは、それまで単色シートを切り貼りするしかなかったメタリックの表現に、自由とインパクトをもたらしました。好きなところに好きな色のメタリックを手軽に加えられることで、創造の可能性が一気に膨らみました。また、文字や模様を繊細に箔押しできる「半導体レーザー箔転写機」は、高級化粧品のパッケージなどに傷つけず美しく加飾したいというニーズに応え、感動の声を多くいただいています。

製品をお届けするにあたり、開発担当者も、プロモーション担当者も、販売する私たちも、みんながワクワクしているんです。そして製品を手にしたお客様や、その成果物を目にした一般の方までもワクワクする。そんな連鎖が自然と生まれ、今までになかった新しい製品を時代の変化に合わせて提供できていると思います。

Too:個人的に、「Z軸」技術を使用した製品があると伺いワクワクしました。

神谷さん(以下、敬称略):XYZ軸、つまりよこ・たて・高さを同時制御できる、当社独自のデジタル技術を持った3次元切削加工機や3Dプリンターなどがあります。最初は用紙に図面を描くXY軸制御のペンプロッターが製造されました。そこから、「高さの制御を可能にして刃物を持たせたら立体のものができる。創造物の幅が広がるのでは?」「面白いんじゃない?」「作ってみよう!」という発想から、3次元の表現を可能にする当社最初の卓上型加工機が1986年に生まれました。

3次元のものづくりが可能になったとはいえ、当時はコンピューターの能力的に3Dデータや切削加工用データをつくることは難しく、非常に高価なものでした。そこで当社は、当時のPCで扱えるデータ制作ソフトウエアを開発し、立体物を削り出すという専門的な業務を、誰にとっても身近なものへと変えていきました。そのコンセプトは現在にも引き継がれ、 現行機種もあらゆる製造業の開発部門で使われています。

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Too:高度な技術をより身近にすることで、誰でもイメージをカタチにできる環境を造り出してきたのですね。

鈴木:「誰でも使いやすく、身近に」というのがコンセプトです。操作も簡単で、手順に沿って使えば初めての方もプロと同じようなクオリティに仕上げることができます。どんな方に使っていただいても高いクオリティの成果物を安定して出せるというのが当社の強みです。

地域ごとの特性に対応する柔軟な開発力

Too:御社が生み出す創造する楽しさを世界200以上の国と地域に届けられていますが、日本と海外では市場の動きに違いはあるのでしょうか。

鈴木:日本と海外では、求められているものや流行するものが異なります。たとえば、日本は一つの看板を数年単位で長く掲示するため耐候性の高いプリンターが好まれます。しかし海外の看板は1年ほどで交換されることが多く、耐候性をそれほど重視せず、短期用のメディアが使われたり、布やフィルムなどによるソフトサイネージが好まれる地域もあります。またUVプリンターに関しては、日本ではアクリルキーホルダーへの印刷が流行していますが、欧米では看板の装飾として使用されることがほとんどです。同じ製品や同じ業界であっても、印刷する素材や用途が国や地域によって大きく異なります。さまざまな地域のどんな特性にも対応できるよう製品をアップグレードしています。

Too:世界の多様な需要に柔軟に対応することを大事にされているんですね。海外展開するうえで、日本本社と世界のグループ会社はどのように関わりあっているのでしょうか。 

鈴木:当社では、グローバルワイドに連携しながらビジネスモデルを作っています。成功事例を共有し、他国で横展開することも多いです。たとえば、世界共通で看板業界に広く販売されていたUVプリンター。日本は一つひとつの市場が他国と比べて小さく、看板業界で販売網を増やしていこうとしても限界があります。より多くの方に製品をお届けできるよう、印刷物のワークフローを調べたりネットショップのトレンドを分析するなど、新しい需要の開拓を行いました。その結果、ラベル製作や印刷工程の前のカンプ、スマートフォンケースの装飾など、多様な用途でさまざまな業界にUVプリンターが広がっていきました。この事例を海外にも共有し、他国でもUVプリンターが多方面で活用されるようになりました。  

image3.jpgUVプリントが施されたさまざまなサンプル

神谷:開発元である日本本社の、市場や顧客のニーズを素早く製品に反映できるという強みを活かし、用途の変化に合わせて対応した技術をグローバルに展開していくことが多いですね。

また、日本の市場はユーザーの要求が非常に細かく、高度なレベルの品質を求められることが多いです。その厳しい基準に応えられる技術力が日本のメーカーにはあり、当社の製品が海外でも信頼され広がっていく理由の一つだと思います。

デジタル技術の力で創造の喜びを世界に広める

Too:グローバルワイドで密に連携をとりつつ、日本のメーカーならではの開発力を活かしているのですね。 さまざまな製品を展開されている、御社の製品提供にかける想いを教えてください。

鈴木:ローランド ディー.ジー.の「ディー.ジー.」は「デジタル・グループ」という意味です。創業当初から一貫して、デジタル技術の力で人々の生活をより豊かにしていくことを目指してきました。そして、私たちのものづくりの根底にあるのが、スローガンに掲げている「創造の喜びを世界に広めよう」という理念です。また、私たちは常に「BEST」であり続けることを目指しています。それは製品の品質だけでなく、お客様へのサービス、販売やサポート、そしてパートナー企業との関係においても同様です。どんな場面においてもBESTでありたいという姿勢が息づいています。これらが積み重なることで、ものづくりの領域を広げる新たな価値を創造できると思っています。 

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さらなる創造の可能性を追求すべく、新たなジャンルへ

Too:これから新たに注力していきたいことについても教えてください。

鈴木:これまで展開してきた製品とは一味違う、新たなジャンルの製品をリリースすることで、新たな創造の可能性を追求していきたいと思っています。

たとえば、熱を加えて発泡させ、表面に2ミリほどの凹凸を加えることで、立体的なテクスチャ表現を可能にするプリンターがあります。見るだけでなく、触れて楽しむこともできる表現を誰でも簡単に実現できます。また、陶製品を造形できる3Dプリンターは、高度な職人技が必要となる複雑な形状を、誰もが自由に作れるようにしました。まだ走り出したばかりですが、あっと驚くような技術で、新たな分野で創造の喜びを広めることを目指し、挑戦しています。

image5.jpg(左)ユニークで立体的なエンボス表現ができるプリンター「DIMENSE(ダイメンス)」で出力したもの。
表面がポコポコしていて触っても楽しむことができました。
(右)陶製品を造形できるパウダー3Dプリンターの出力物。 人の手では難しい繊細な表現が施されていました。

Too:新たなジャンルへの挑戦でものづくりの領域を広げているのですね。それでは最後に、Tooはどのような企業かお聞かせください。

平木:当社にとってTooさんはアナログからデジタルへの転換期を共に歩んできたパートナーです。Tooさんは当社がインクジェットプリンターを初めて世に出した頃から、デザイン現場で主流であったMacを販売しており、デザインの現場を一緒に支えてきました。近年では教育現場や製造業へも、創造の可能性を提案しています。当社の理念や活動と親和性の高いパートナーだと思っています。

Too:Tooも一緒に、さまざまな方に創造する喜びを届けていきたいです。鈴木さん、神谷さん、平木さん、ありがとうございました!

image-6.jpg製品と、出力例となるサンプルが多く並べられたショールーム。
製品を活用するイメージが具体的に湧くような空間となっていました。


ローランド ディー.ジー.株式会社

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