探訪!アドビ システムズ 株式会社 前編

インタビュー

2019.03.14

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Tooは制作環境のさまざまなツールを販売しています。ここでは、皆さまの使っているツールが提供される背景を、メーカーさんを訪問して直接取材していきたいと思います。今回はアドビにおじゃまして、マーケティング本部の西山さんにアドビの開発方針を伺いました。


Too:アドビというと、IllustratorとかPhotoshopのイメージが強いと思いますが、その他にも強力なツールをいろいろ持っていらっしゃいます。全体的な話から聞かせてください。

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アドビ システムズ 株式会社
デジタルメディア ビジネス本部
営業戦略本部 執行役員 本部長
西山 正一 氏

アドビのツールが目指していること

西山さん(以下敬称略):まず、アドビのツールがどういう方向に進化しているかを最初にお伝えさせてください。

新しいバージョンが出ました、新しい機能が付きました、と発表すると、結構な頻度で「その作業はいま使用しているPhotoshopでもできます」と言われます。確かに現在日々生み出されているクリエイティブに最新機能が必要か?というと必ずしもそうではなく、数年前のツールで十分対応できるケースも多いと思います。では、アドビは何をしているのかというと「完成に至るまでのプロセスをどこまで楽にできるか?」というところです。

アドビのツールは、お客様のクリエイティブを異質なものに変えてしまうとか、クリエイターの皆さまがやっていた仕事を奪うとか、そういうものではありません。クリエイターの頭の中にある完成形のアウトプットを、どれだけ生産的にお手伝いできるかだと思っています。そういう視点で見ていただけると、アドビの進化する方向のイメージがつくと思います。

Too:アドビのツールって、Creative Cloudがあって、その他にもExperience Cloudや、Document Cloudがあります。全部ひっくるめてそうなんですか?

デジタルマーケティングの世界

西山:そうです。我々がDXと呼んでいるExperience Cloudに含まれるWeb解析ツールなども、Creative Cloudユーザーにとって無関係ではありません。たとえば新製品の良さを広告で訴求するなど、何らかの目的を達成するために作られているわけです。以前は、過去の経験や実績になどに基づき「XXさんにデザインしてもらったこれでいこう!」と決めたクリエイティブを世に出し、結果をみてみるということをやっていました。

Experience Cloudの役割をクリエイティブ側の視線で簡単に説明しますと、「そのクリエイティブはちゃんと目的を果たせているだろうか?」をきちんと計測するためのものです。Experience Cloudのユーザーは主にマーケティングに携わる部門であり、クリエイターがCreative Cloudと併用して利用するという類のものではありません。ですが、Creative Cloudで作ったクリエイティブを取り込み、お客様の元へスムーズに届けるための連携はさまざまな領域で実装されています。

自分の作ったクリエイティブが成果を出したのか、出せなかったのか。出せなかった場合、どこをどう直せば改善が見込めるのかがデータとして返ってくる。「あれよかったね」みたいなホワッとした評価ではなく、どれだけのお客様に届き、どれだけの成果を得ることができたのかを計測できるというのは、クリエイティブを世の中に出す上での大きなブレイクスルーだと思います。

このようなテクノロジーの導入が進むと「響くクリエイティブ」に対する評価を公正に数値化できるようになり、クリエイティブ側の人とマーケティング側の人との会話もより建設的なものになっていくと思います。

Too:「これでよかったはずだ」と思ってやってきたクリエイターさんは、どうやって切り替えていけばいいんでしょうか。

西山:働き方改革的なテーマ - 例えば、よくある話として「デザインのバリエーションをもうちょっと作ってくれる?」という依頼が気軽に飛んでくるケースがあると思います。それが偉い人からの指示である場合はなかなか断れないですよね(笑)作業量は2-3倍になるけどギャラは一緒で……というのはなかなかしんどいと思います。 こういった場合、数値的な裏付けに基づき、例えば「過去の御社の広告バナーのデザインごとのデータを見ると『ロゴを中心に配置し背景は黒』というパターンが最もクリック率が高く、いまご提案いただいた『ロゴなし』の場合とクリック率で2.5倍ほど違いが出ます」といった説明ができるようになります。

デザイン案「A」と「B」のどちらがより広告として響くのか?Adobe Experience Cloudのようなデジタルマーケティングの技術を使うと、それをきちんと数値化して証明することが可能になります。このようなデータから導き出されるインサイトを読み解くことで、従来よりも自信を持って「これでよいのだ」と言えるようになるのだ、と考えていただけると良いかもしれません。

結果として、デジタルマーケティング技術の普及により、クリエイティブは「量の無駄撃ち」が減り、より「質」が重要視されるようになっていくことになると思います。

PDFの世界

Too:では、Document Cloudについてはどうでしょうか。

西山:デスクワークの世界では、PDFファイルはいまや「電子的な紙」として普及しており日常的に利用されているので、ことさら「これはPDFファイルだなぁ」と意識することもないかもしれません。

一方でスマートフォンの世界ではどうでしょう?少なからずの方が、メールに添付されたPDFをスマホで開こうとしたことがあると思いますが、これがどうにも小さくて読みづらいですよね(笑)ピンチしてスクロールしてどこを読んでいるのかわからなくなって閉じる……という経験をされている方も多いと思います。

今後、ビジネスシーンにおけるスマートフォンの活用頻度は増えていくとアドビは考えています。そういった流れの中で、どうすればPDFがより便利なファイルとなり得るのか?より読みやすく、より共有しやすく、より業務プロセスを円滑にするための「PDF体験」を実現させるために、現在リソースを集中させ、開発に取り組んでいます。ここでも機械学習の成果をふんだんに盛り込んでいくことになるはずです。

Too:ビジネスサイドとのつながりは?

西山:まだ9割以上の方が、Acrobatでオンライン校正ができることをご存知ありません。オンライン校正機能(Acrobat上の「注釈」機能)は、かなり以前から実装されているのですが、最新のAcrobat - すなわちサブスクリプション版のAcrobat DCでは、非常にシンプルかつ使いやすく進化しています。「レビュー用に送信」という機能を選択し、校正作業に参加してほしい人のメールアドレスを入力するだけで、校正したいPDFファイルがDocument Cloud上にアップロードされ、そのファイルを校正メンバー全員で参照し、赤字を入れることができます。仮に複数の人が同じ箇所に違う修正指示を入れたとしてもそれがリアルタイムで可視化されるので「ではXXさんの修正を反映させましょう」という判断をその場で行え、手戻りの数を激減できます。これは校正作業に携わる全人類にお使いいただくべき機能だと思っています。

Too:見積もりとか企画書とか、電子ドキュメントとしてセキュリティも気になります。

西山:PDFは「最終形態として固めたファイル」と認識されている方が多いと思いますが、実はそうではありません。現在、いろいろなアプリケーションからPDFに書き出すことができますが、書き出した『だけ』のそのファイルは、実はAcrocatでひらけば誰でもどのようにも編集できてしまいます。「PDFファイルに変換すればだれも編集できなくなるので安全だ!」思っている方には認識を改めていただく必要があります。アドビとしては、この点は啓蒙していかなければならないと強く考えています。

そしてAcrobatでは、かなり細かいセキュリティの設定ができます。例えば閲覧は可能だが編集はできないようにする、印刷も禁止する、など。さらにExperience Cloudの機能と組み合わせることで、送信してしまったPDFを『あとから閲覧できないようにする』といったこともできます(PDFを配布する際に権限設定をして、開くたびにサーバーに認証を取りにいくようなイメージです。認証の確認ができない限り、閲覧ができない)。システムの導入コストはかかるものの、情報をきちんと守るという意味では最強のサービスだと思います。機密情報を扱う部門の方には「PDFは正しく運用してこそ万全のセキュリティを実現できる」という点をご理解いただきたいと思っています。


後編は「Creative Cloudについて」です。

後編はこちら

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