探訪!オートデスク株式会社
山田 理 (Osamu)さん
サイボウズ チームワーク総研 風土コンサルタント
大手銀行で8年働いたあと2000年にサイボウズへ転職。取締役/副社長として財務、人事および法務部門を担当。サイボウズ流の透明性を重視し、100人100通りのワークスタイル、ライフスタイルがあっていいという風土を牽引してきた。 2014年にサイボウズUSA立ち上げのため、シリコンバレーに赴任。2021年より副社長を辞任し風土コンサルタントとして、サンフランシスコをベースとしながら、サイボウズ流チームワークを世界に広げる挑戦をしている。著書に『最軽量のマネジメント』(サイボウズ式ブックス)、『カイシャインの心得』(大和書房)がある。
理想に向かって意思決定をする
Too:入社5年目の古正です。今回は、サイボウズ株式会社のチームワーク総研シニアコンサルタントである山田理(Osamu)さんにお話を伺います。Osamuさんは副業としてTooのアドバイザーをしていただいていて、経営に興味があるTooの若手社員向けの勉強会に協力してくださっています。
このインタビューでは、社長や役員など、会社の経営そのものに携わる「経営者」をテーマにお話をお聞きしたいと思います。
Osamuさん:まず経営とは、理想を実現するために「意思決定」をしていくことです。雇用者と被雇用者という法律上の話はさておくと、シンプルに言えば、意思決定をする人が経営者ということになります。もちろんそれ以外にも、営業したりメディアに出たり、メンバーに助言したり、会社によっていろいろな役割があると思います。
そして経営者にとって大事なことは、意思決定の責任を取ることです。失敗した時に辞めるとか謝るとかではなく、意思決定がうまくいくように全力を尽くし、うまくいったときもいかなかったときも、結果をきちんと振り返って他の人たちに「学び」として共有するのが責任の取り方だと思います。
また、経営者が偉いわけではなくて、あくまで役割の一つです。意思決定をするのが得意な人は経営者になったらいいし、意思決定よりも斬新なアイデアを出すことが得意なら企画をすればいい。それぞれの役割がさまざまな価値を生んで会社がつくられていきます。
Too:Osamuさん自身は以前サイボウズで副社長を務め、経営に直接携わっていました。
Osamuさん:それはやっぱり、サイボウズの企業理念である「チームワークあふれる社会を創る」を実現したかったからです。同じ考えをもつ人たちと一緒に仕事をして、自分の得意なことが活かされて役に立っていると感じているからこそサイボウズに所属しています。今はサイボウズでは経営者ではなく、コンサルタントとして自分の経験をお客様に提供することによって、サイボウズが目指す社会の実現に貢献しようとしています。
疑似体験する機会が重要
Too:経営者を育成する側と、経営者を目指したい側、それぞれ大切なことは何でしょう。
Osamuさん:経営者を育成する側にとって大切なのは、意思決定を疑似体験する機会を設けることだと思います。経営に興味がある人にとっては、自分がもし意思決定をするんだったら、どんな基準でどんな選択をするか体感することで、自分には向いているなとか、自分だったらやれそうだなとか、まずはその段階に立ってもらえます。そこから火がつけば、あとは本人が自分で学ぼうとすると思います。
経営者を目指す側は、まずは目指す必要があるかどうかを考えるといいと思います。人はそれぞれ得手不得手と好き嫌いがありますから、自分の理想に対して主体的に意思決定していきたいと思うのであれば、経営者を目指していけばいいと思います。理想を作るということは問題を発見することです。じっと椅子に座っていても、誰かがやってくれるわけじゃない。理想にこだわり、どうすれば実現できるのかを考えて、自分から行動する。それがしたいのであれば、ぜひ経営する側に一歩踏み出してほしいと思います。
働き方の選択肢が増えている
Too:最近は、企業の中で管理職や経営者を目指す人が減っていると聞きますが、実際のところどうなのでしょうか。
Osamuさん:2極化されているんじゃないでしょうか。経営者になると失うものが大きいという情報も氾濫しているので、趣味の時間や家族との時間などのワークライフバランスを大切にしたいと考える人は、経営者ではない役割を選ぶ傾向にあるのかもしれません。会社に所属すると、基本的には決まったことを遂行していく代わりに、ある程度安定した生活を得られますから。
経営に直接携わりたい人たちは、僕たちの時代のように会社員として出世競争に時間をかけるよりも、起業を選択する人が増えている印象です。自分の意思決定によって報酬を得て、夢や目標に向かって主体的に挑戦したい人にとっては、会社に勤める以外の選択が増えているとも言えますね。
ただ、どちらかしか選んではいけないことはありません。僕は本業としてサイボウズで働きながら安定した生活を営み、副業で起業して自分のやりたいことに取り組んでいます。総合的にクオリティーオブライフを上げていくという意味では、そういう選択も今風でアリなんじゃないかなと思っています。
人生の経営者は自分自身
Osamuさん:少し話が逸れるけれど…上司に「これをやりなさい」と言われるままにインプットのシャワーを浴び続けると、ある日突然「私の人生って何なんだろう」と、分からなくなってしまうときが来ます。選択を人任せにしたり、環境のせいにしてしまうと、他人の人生になっちゃうからなんです。
生き方の理想ができれば、何を食べようか、何を着ようかといった些細な選択も、決断する基準ができてくる。そういうのがすごく大事です。日々現場で仕事をしていると、自分と「経営者」という言葉はリンクしづらいかもしれませんが、悩んで答えを出している時点で、みなさんはすでに自分自身の人生の経営者です。決断した理由を自分の中で残していくことが、人生を豊かにするんだと思います。
Too:確かに、どんなに小さいことでも、自分で決断する瞬間は頭をフル回転させている気がします。
Osamuさん:これと同じことを、チームに所属して、お金、人材、モノなどのリソースを組み合わせていくのが会社での意思決定です。正しいかどうかは結果が出るまで分からない。やってみて違うと思ったらやり方を変えればいいし、目指すところが違うと思ったら目指している理想を変えればいい。それも大切な選択です。
今、Tooの雰囲気に惹かれてどんどん入社してくれている若い人たちが、引き続きイキイキワクワクできる会社にしていくお手伝いがTooでできればいいなと思います。難しいのは、理想に近づけば近づくほど新たな理想が生まれるので、理想が離れていくことです(笑)。でもそれがあるからこそ、会社は成長していくんだと思います。
いち社員からすると雲の上の存在に感じていた「経営者」ですが、その役割は想像よりもシンプルで明確でした。自分自身が人生の経営者であるという言葉も印象的です。山田さん、ありがとうございました。