探訪!オートデスク株式会社
さまざまな生活の場面で一気に身近な言葉になった「オンライン化」。教育現場にも大きな変化が起こりました。品川エトワール女子高等学校様では、オンライン授業は当たり前になり、さらに一歩踏み込んだ授業を展開されています。いまの学校現場の様子について、教務部 国際教育部 外国語科主任 目次祐子先生にお話を伺いました。
取材させていただいた日は、国際キャリアコース1〜3年生の生徒を対象に「海の上の学校『ホクレア号』~内野加奈子さんオンライン講演会~」を実施していました。登壇した内野加奈子さんはハワイの伝統航海カヌー「ホクレア号」日本人初のクルーで、「コミュニケーション英語Ⅰ」の授業で用いる教科書にも掲載されています。カヌーでの生活や伝統航海術についてや、内野さんの学生時代の夢などをお話しいただく、なんとも贅沢な内容でした。
学校での学びを実生活とつなげたい
Too:貴重な講演を聞かせていただきありがとうございました!ハワイにいらっしゃる内野さんと品川エトワール女子高等学校をつないで行った、今回の講演のきっかけを教えてください。
目次先生(以下、敬称略):授業では常に、現実に結びつくような学びができるように工夫しています。特に英語は、単語や文法を覚えるだけでなく、相手の文化的背景を知ることで、コミュニケーションの幅が広がります。この「コミュニケーション英語Ⅰ」の授業では、教科書に載っているストーリーに関連するビデオを見たり、機会があれば外部の方を招いて話をしていただいたり、調べ学習をしたり、さまざまなアプローチをしています。
今回はご縁があり、素晴らしい経験をされている内野さんにハワイからオンラインで講演会を実施してもらうことになりました。教科書に載っている方が目の前にいる体験はなかなかできません。教科書をただ読むだけではない、「英語を使ったら世界の見方がこんなふうに変わるんだよ」というのを学んでほしいという思いで開催しました。
世界のできごとを体感する
Too:「ハワイと日本を繋ぐ」と聞いただけでワクワクします。講演会はオンラインでしたが、双方向的な内容だったこともあり1時間半のめり込むように聞き入ってしまいました。
目次:大勢での対面授業や体験型の授業が難しい中で、今回の授業もただの鑑賞に終わらせず、いかに体験・体感してもらえるかを考えていました。
今回は内野さんが授業展開を工夫してくださったこともあり、生徒もカヌーに乗っている擬似体験ができたかのではないかと思います。例えば冒頭に、「海の上にカヌーが浮かんでいて、皆さんがカヌーに乗っている様子を想像してみてください」と声かけをしてもらったり、世界地図が描かれたスライドを投影してカヌーが航海する規模を視覚的に表してもらいました。教室にいながら、まるで自分自身が航海しているような感覚で授業を聞くことができたのではないでしょうか。
Too:オンラインだと自宅からの受講も可能ですが、今回は教室に生徒の皆さんを集めた形式での開催でした。
目次:自宅で受けるか、教室で受けるかによっても生徒の授業に対する入り込み方は異なってくると思います。講演会の中で内野さんから「水平線上に島が見えませんか?」など、たびたびこちら側に話を振っていただいたので、「右側かな?」「左の出っ張っているところじゃない?」と生徒同士で自然に対話が始まっていました。自宅でモニターに向かって一人で授業を受けるのとは違った、教室にいたからこそ生まれた一体感だと思います。
世界で話題になっていたり社会問題になっているトピックも、日本に住んでいると現実味がわかないこともあります。話を直接聞いたり、写真や動画で見ることで、少しでもリアルに感じてもらいたいです。生徒もそうした授業を通して、いつか「あんなことがあったな」と思い出してくれれば、この先思い悩んだりしたときに立ち帰れる経験になるかもしれません。
増えた選択肢を教育に活かす
目次:感触や匂いなど、実際に触れてみないと分からない事はたくさんあります。個人的には、語学は海外に行くのがいちばんの勉強法だと思いますが、今できることを最大限にという意味では、オンラインとリアルな体験をいかに融合できるかが直近の課題だと考えています。
ここ1年で本校ではオンライン授業は当たり前になってきました。今までは対面の授業という選択肢しかなかったのが、選択肢が増えたと捉えています。オンライン授業、対面授業はあくまで手段なので、その時々の学びの目標に適した手段を選んで、使えるものをすべて駆使するのがこの先に必要な工夫かもしれません。
Too:コロナ禍が落ち着いたからオンラインは完全に無くす、ではなくその時に合った手段として活用していきたいということですね。他にも挑戦したいことはありますか?
目次:生徒は一人一台のiPadを持っているのですが、さらに主体的に使えるような授業ができたらと思っています。現状だとアンケートフォームに入力してもらったり、送った資料を見てもらうなど、生徒にとっては受け身な活用に留まっています。例えば、いまは感染症対策で音楽の授業では歌うことができないのでアプリで曲を作って提出してもらったり、テキストでのレポートではなく動画を作ってもらったり。生徒たち自身が主体的になれる授業ができたら面白くなりそうです。
あとはやはり、教員自身も楽しまないと授業は成り立ちません。このコロナ禍で大変なこともありましたが、教員同士で情報交換をしたり工夫を重ねたり、できる限りのことに挑戦していきたいとも思います。今回の「ホクレア号」の講演会に限らず、これまでもオンラインホームルームで世界各国とつながったり、インドとの交流授業なども行ってきました。思いつきで授業を企画してしまうこともあるのですが、当校ではそんなチャレンジが許される環境だと思います。
もちろん英語科の授業も、もっとiPadを活用してインタラクティブな内容にしていきたいです。教員対生徒のやり取りだけでなく、生徒同士でも積極的にやりとりできる環境が理想ですね。iPadもオンライン授業と同じ手段の一つに過ぎません。それらを活用して、生徒が自分自身を存分に表現できる授業を目指していきたいです。
Too:つい「オンライン」「iPad」といったツールに目が行きがちですが、自分が本当にしたい目的は何か、ツールは目的ではなく活用するものだと意識していなければいけませんね。目次先生、ありがとうございました!
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