探訪!Blackmagic Design株式会社様

インタビュー

2021.09.09

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メーカーさんを訪問して、皆さまの使っているツールが提供される背景を取材するシリーズ。今回は、総合映像機器メーカーとしてビデオ業界を牽引するBlackmagic Design株式会社のテクニカルサポートマネージャー 岡野太郎様にお話を伺いました。


Too: Tooが開催するウェビナーやイベントでも、Blackmagic Designさんの製品を活用しています。まずは改めて、御社について教えてください。

岡野太郎様(以下、敬称略):Blackmagic Designは2001年にオーストラリアで設立された、カメラや編集ソフト、スイッチャーやモニターなどの映像機器を扱う会社です。創業者であるグラント・ペティが現在もCEOとして指揮を執っています。Blackmagic Designは、従来は放送局やポストプロダクションなど、プロとして映像に携わる方々に向けて製品を作り販売していました。しかし、近年状況が変わりつつあります。プロに加えて、今までは映像制作と直接関わりのなかった一般企業の方や、教育現場の方々、YouTuberなどさまざまな層のお客様が増えているのです。

急速に変化する映像業界

Too:めまぐるしく変化する映像業界ですが、御社が生み出す製品にはどのような特長がありますか?

岡野:我々は変化に対して機能を削ぎ落とした製品を作るのではなく、プロ向けの放送機器を販売してきた延長で製品を作っています。その流れを象徴する製品が、スイッチャーのATEM Mini と動画編集ソフトのDaVinci Resolveです。ATEM Miniはコロナウイルスの流行後特に販売数が伸びています。パワフルな機能を厳選して搭載し3万円ほどの安価な価格で販売しているので、例えばYouTuberがYouTube Liveなどで画面の切り替えを行う際に使用するシーンが増えています。DaVinci Resolveは放送局や映画業界が使うプロ向けのソフトですが、無償版も出ていますので学生さんや趣味で動画制作される方などどなたでも触ることができます。プロ向けの製品を知っているメーカーとして高品質なのはもちろん、価格も他社製品と比べると1/2どころか桁が一つ違うほど安価です。このことから、セミプロとプロ両軸からご好評をいただいています。

BMD2.jpg2019年に登場したATEM Mini

90年代まで映像の王様は放送局でしたが、ここ10年でその勢力図が一気に変わっています。YouTubeや動画ストリーミングサービスが一般的になり、さまざまな人が動画を作るようになりました。さらに、一般企業でも動画制作のインハウス化が進んでいます。制作から配信まで社員が行い、社内にスタジオを作る企業も増えています。

また、コロナウイルスの影響で、教育現場からも注目を集めるようになりました。オンライン授業などの実施のために、とにかく機材を揃えて先生がスムーズに扱えるようにならなければいけないという話をよく聞きます。予算や人手の問題でなかなか進まなかったデジタルの活用が、急務になったのです。コロナが収束した後も、リアルに実施されている学校の集会やセミナーを配信で生徒に見てもらうなど、ハイブリッド的な運用も増えていくと思います。

グローバル展開での日本の立ち位置

Too:それでは、御社のグローバル展開について教えてください。日本向けの製品展開などはされているのでしょうか?

岡野:オーストラリアの本社以外に、アメリカ、イギリス、シンガポール、そして日本と4カ国にオフィスを構えていますが、我々は世界中に製品を展開している会社なので、どの地域でも同じ製品を扱っています。日本のために製品を作ったり仕様変更はしていませんが、このオフィスの構え方に、グラント・ペティの日本の放送機器に対する想いが現れています。

アメリカオフィスは北米から中米、南米を担当しています。イギリスオフィスは南アフリカからヨーロッパ全土、ロシアと100カ国ほどを担当しています。シンガポールオフィスは中国とインドを含むため、膨大なお客様を抱えています。しかし、日本オフィスは日本のみを担当しています。なぜなら、販売やPR、サポート体制の土台をしっかり作って、日本で成功することを目的に作られたからです。グラント・ペティは80年代終わりから90年代ごろ放送業界で働いていたのですが、当時の放送機器はとても高価な上にすぐ壊れてしまい、あまり良い印象を持っていなかったそうです。しかし、日本企業の放送機器は非常にクオリティが高かったと言うのです。そのことから彼の頭の中には、日本で成功する放送機器が本当に立派な放送機器だという考えが強くインプットされています。

映像機器を誰もが触れられる身近な存在に

Too:御社は企業理念として「お客様の真のクリエイティビティを開花させる」を掲げていらっしゃいます。高品質な製品が手に届きやすい価格設定であることと関わりはあるのでしょうか。

岡野:グラント・ペティ自身技術的なことがとても好きな人物なので、放送業界に入った当初はとても喜んでいました。しかし当時の放送機器は非常に高価で貴重だったため、担当外の機材は触らせてもらえなかったそうです。例えば今は無償版も出ているDaVinci Resolveは、当時は一揃いで1億円しました。いい機材はあるのに触らせてもらえないという現実に、フラストレーションが溜まっていたのです。高い製品が狭い世界で売られていて、一握りの人しか使えないのはおかしいのではないかという疑念が彼の中に生まれました。その背景を踏まえて誕生したのがBlackmagic Designなので、多くの人に製品を使ってもらえるように可能な限り価格を抑えています。

最近DaVinci Resolveのウェビナーを行ったのですが、驚いたことに3日間の募集で約1,000人の申し込みがありました。当時は一握りの人しか買えなかった製品のウェビナーに、これほど多くの人が集まるということは、彼の狙いはある程度実現されてきているのではないでしょうか。

BMD1.jpgInter BEE2019のDaVinci Resolveトレーニングの様子

彼は価格だけではなく、機材の質にもフラストレーションを覚えていました。日本製の放送機器のクオリティは高いものでしたが、他社製は数千万円出した製品でも頻繁に壊れていたそうです。彼は当時エンジニアとして修理も担当していたので、こんなに大枚を叩いて購入しているのになぜ頻繁に手をかけないといけないのだと不満が溜まっていたと言っています。彼が若い頃に味わったフラストレーションの結果たどり着いたのが、低価格な製品を快適に使うことができる環境を我々が作るべきだということです。Blackmagic Designの企業理念である「お客様の真のクリエイティビティを開花させる」という言葉の裏には、こうした背景があるのです。

Too:高品質で低価格なんて、ユーザーからしたらいいことだらけです。そもそもですが、どうしてそのようなビジネスを実現できるのでしょうか?

岡野:我々もボランティアではありませんので、グラント・ペティはインタビューで「DaVinci Resolveの無料版をみんなが使ったら我々の会社は成り立たない」と本音を語っています。嬉しいのは、無償版が入り口となりカメラやモニター、DaVinci Resolveの周辺機器などの製品を買われるケースが多いことです。まずは無償版でBlackmagic Designを知ってもらい、ゆくゆくは他の製品を使ってもらうという循環ができています。

DaVinci Resolveの無償版もクオリティがかなり高いので、仕事は問題なくできるはずです。その仕事で得られたお金で有償版やカメラを購入してもらい、もしそのカメラでまた案件を獲得できたら、次は別のものを購入してもらって…というように、ユーザー自身がより良い案件を得られるように成長し、ユーザーと一緒にBlackmagic Designも成長できる。そんな相互関係が生まれたら嬉しいということを、グラント・ペティも話しています。

5年先も10年先も、柔軟な姿勢でお客様の課題を解決する

Too:御社は常に新しいことに挑戦されている印象があります。この先の展開について教えてください。

岡野:我々にとっては一番難しい質問ですね(笑)。一般企業では、5年後10年後にどのような製品を作るかロードマップがあって、そこに向けて進むのが基本的な在り方だと思います。もちろんグラント・ペティの頭の中にはこの先どのような製品を作りたいかざっくりとした構想はあると思いますが、我々が一番重視しているのは柔軟性です。Blackmagic Designにはロードマップのようなカッチリとした縛りがない分、自由に製品作りができます。例えばATEM Miniは2019年に出た製品ですが、2020年4月にATEM Mini Proという製品が出て、さらに上位機種であるATEM Mini Pro ISOが2020年7月に出ました。ATEM Miniが出た時からISOを出すと決まっていたわけではありません。ATEM Miniを出して、意外なお客様層が手に取ってくださったり、思いがけず世界中からフィードバックが寄せられたため、それをもとに作られた製品です。ProからISO発表までのスパンは、他のメーカーからするとかなり速いペースだと思います。

他にも、ポケットシネマカメラの例は非常に面白いと思います。このカメラが最初に出た時は、名前の通り屋外で映画を撮影するための製品でした。しかしこのコロナ禍でスタジオカメラとして使えるように大きなアップデートを加え、ATEM Miniでコントロールできるようにしたのです。それもやはりお客様のフィードバックをもとに、困りごとをなんとか解決したいということで対応したものです。アップデートで対応できるならどんどんアップデートして新機能つけ、対応できないのであればATEMのように新しい製品を出していきます。

BMD3.jpgBlackmagic Pocket Cinema Camera 6K Pro

また、グラント・ペティという人間が技術者であることも大きなポイントです。放送局業界でエンジニアとして毎日働いていた中で、いろいろな人が持ち込む課題を自分で分解して検査して解決していました。その姿勢がBlackmagic Designのビジネスにも生かされています。お客様の課題を把握して、解決できる製品を作る。彼にとっては非常にシンプルな考えなのです。

Too:お客様を第一に考えているからこそ、柔軟な展開を大切にされているのですね。最後に、御社にとってTooはどのようなパートナーか教えてください。

岡野:Tooさんはクリエイティブ分野に限らず、とにかく幅広い層のお客様とお付き合いがあります。特に最近Blackmagic Designが力を入れている教育分野でも、非常に強いつながりがあります。学校現場ではまだまだ映像機器の導入は手探り状態のところも多いので、Tooさんからの様々な導入事例を通して多角的なご提案ができればと思います。先生だけでなく、生徒の皆さんも機材に触れるような環境が作れたらより面白そうですね。また、マーケティングチームがこれほど強いパートナーさんもなかなかいません。Tooさんと新たなチャレンジができることを、とても楽しみにしています。

Too:お客様からのフィードバックに常に耳を傾け、最適な解決方法を導く。Blackmagic Designさんが、世界中で愛用されている理由を垣間見ることができました。これからもお客様を一緒にサポートしていきたいと思います。岡野さん、ありがとうございました!


Blackmagic Design株式会社
ATEM Mini
DaVinci Resolve

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