絵が苦手な人こそ楽しめる!コピック・アートの魅力

インタビュー

2021.02.18

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コピックを使用した大人のぬり絵「コピック・アート」。いくつかの福祉施設や公共施設のデイサービスでは、教室も開かれています。そこで今回は志木市総合福祉センターで開催されたコピック・アート教室に伺い、講師を担当するコピック・アートエキスパート山崎芳嗣氏にお話を聞きました。

コピック・アートで脳を活性化

Too:まずはコピック・アートについて詳しく教えてください。

山崎芳嗣氏(以下、敬称略):コピックを使用して、年齢問わず楽しむことができるぬり絵です。写真から画像ソフトで抽出した線画に色を塗っていくため、特別な技術もいりません。また、作品を制作した満足感を得られるだけでなく、ぬり絵は脳の活性化にも最適で認知症の予防にも良いとされています。

Too:認知症予防にも効果があるのは驚きです。やはり色を塗ることで手を動かすからでしょうか?

山崎:もちろん手先を動かす事による効果もあります。しかし意外にも、認知症予防として一番効果がある瞬間は、色を選んでいるときなんです。例えば「この葉っぱは緑に塗ろうか、それとも紅葉した様子を表現しようか」とか、同じ線画を渡しても、色の選択肢は無限にあります。線画を見たときに、このシーンは昼なのか夜なのか、冬なのか夏なのかによっても、色合いは変わります。そのため教室ではなるべく色の指示をせずに、自分のイメージに合った色で塗ってもらいます。

photo1.jpg

Too:なるほど、自分でどんな色を塗るか考える行為が重要なのですね。ところで山崎さんは、どのようなきっかけでコピック・アートを始めたのでしょうか。

山崎:絵に苦手意識があったり、下手だと思い込んでいる人に向けて何かやりたいと思ったのがきっかけでした。絵が得意だったり上手い人は自分で絵画教室に行くことができるので、それで満足感を得られます。一方で、絵に対して興味はあるけれど苦手意識がある人にとって、そういう場に行くこと自体ハードルが高いし、周りが上手い人ばかりで浮いてしまうのでは、といった不安を抱えている人が多いです。そんな人たちをどうしたら巻き込むことができるか…と考えたときに、ぬり絵なら大丈夫じゃないかと思いついたのです。

そもそも、どうして絵が下手だ苦手だと思い込んでしまうかというと、絵を描くときの第一歩であるデッサンのハードルが高いからです。例えば風景画を描こうとした時に、建物の柱を描いて、壁を描いて…とやっていくうちにどこかでパースが狂ってしまう。この段階で嫌になってしまう人が多いんです。一方塗り絵であれば、線画があるのでデッサンのハードルはクリアしています。

photo4.jpg着彩の見本(上)と線画(下)

ハードルという点では、コピックが気軽に使える画材というのも大きいです。塗り絵と聞くと色鉛筆と思う人が多いかもしれないけれど、線が細いので完成に時間がかかり、ストレスに感じる人もいます。コピックなら、ペン先を使い分けることで広い面も一気に塗ることができるし、細かい部分に描き込むこともできます。他にも、家や教室だけでなく、病院で使うこともできますね。病室のベッドで水彩画や油絵はなかなか難しいけれど、コピックなら1セット用意するだけで大掛かりな片付けはいりません。

「本格的」に取り組むことが自信につながる

Too:生徒さんの中には、お互いに作品についてアドバイスしあっていたり、教室で制作した作品から年賀状を作成されていたりと、さらなる楽しみ方を見つけている方もたくさんいらっしゃいました。参加者からはどのような感想が多いですか?

山崎:「自分は絵が下手だと思っていたけど、意外とできるじゃんと思った」という反応はとても多いです。そう気づいてもらえるように、教える時のトークは重要です。自分の作品を家族や友人に見てもらえると、満足感を得られますよね。コピック・アート教室では、作品を仕上げるだけでなく講評会を行うこともあります。生徒さんの作品をずらっと並べて、作品の特徴をコメントしていきます。そのときに「上手いですね」「すごいですね」と、当たり障りのないコメントをするのではなくて、「この赤があることで作品に締まりが出たね。どうしてここに使ったの?」とか「この部分のこうした塗り方はあなたにしかできないね」とか、それぞれの作品に必ずある個性を拾い上げて、生徒全員の前でコメントしています。具体的に言葉にすることで、生徒さんの自信に繋がるんです。そうすると、より楽しみながらコピック・アートに触れることができます。

photo2.jpg施設利用者のコミュニティづくりにも役立っています。

山崎:あとはやはり、ホンモノの道具を使うことで満足感を得られる生徒さんも多くいます。紙もマーカーも、プロが使うものと同じものを用意して本格的な体験をしてもらっています。完成した作品を展示する際も、壁にペタッとテープで貼るのではなく、額縁に入れてワイヤーで吊って、小さなギャラリーのように展示しています。絵を描くことにハードルを感じている人たちにとって、形から入ることもモチベーションを上げるためにとても大切なことです。

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Too:私も趣味で絵を描くことがあるのですが、自分の作品が額に入って飾られると、なんとも言えない高揚感があります。さて、先日コピックアートについての書籍『四季と名所をめぐる 大人の癒し塗り絵』が出版されましたが、山崎さんがこの先新たに挑戦したいことはありますか。

山崎:次にやりたいことといえば…YouTuberデビューです!コピック・アートについてやコピックの使い方を、動画で発信できたらと考えています。教室に通っている生徒さんもそうですが、タブレット端末やスマートフォンを持っているご年配の方も少なくありません。特にシニア向けのコンテンツは今は少ないですが、絶対に需要があるマーケットだと思います。

気軽に見ることができる動画という媒体を生かして、硬い教え方ではなくてライトなノリで話せたらなと考案中です。お昼のニュース番組の代わりにパチっと付けて、ご年配の方でも笑いながら見られるチャンネルを作ってみたいですね。


教室開始1時間前から訪れ、自主的にコピック・アートに取り組んでいる生徒さんもいるなど、参加者の熱心な姿勢が印象的でした。山崎さんのコピック・アート活動のさらなる進化も楽しみです。ありがとうございました!

コピック・アート
書籍『四季と名所をめぐる 大人の癒し塗り絵』

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