訪問!公益社団法人日本サインデザイン協会

インタビュー

2018.11.08

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公益社団法人 日本サインデザイン協会(SDA 
(写真右)副会長 竹内 誠 氏
(写真左)事務局長 塚本 康生 氏


Too:デザイン協会訪問シリーズ第三弾です。こんにちは。Tooの椎野です。 さて、皆さまは「サインデザイン」と聞いてどんなことを思うでしょうか。今回は日本サインデザイン協会様にお伺いして副会長の竹内さん(以下、敬称略)にお話しを聞いてきました。

サインデザインとは

Too:「サインデザイン」と聞いて何を想像するか人によって違うような気がしますが、まずは「サインデザイン」自体の概念も含めて、団体の紹介をお願いします。

竹内:私たちSDAは1965年設立です。

Too:かなり前ですね。

竹内:そうですね。この時代は「看板屋」という仕事でした。ネオンサインが多かったのですが広告景観が良くないということで、自分たちでも自主規制しなければいけないのではないかと。ネオンサインや看板の意味をもっと掘り下げて、デザイン集団でいいものを作っていこう。単に看板ではなく、サインというカテゴリでちゃんと考えよう。ということで「サインデザイン」というカテゴリで活躍していこうということになりました。現在は、グラフィックやインテリア、私もそうですが建築、景観のそれぞれのデザイナーや、教育機関、研究機関など多様なメンバーで構成されています。

活動としては、今年52回目を迎える日本サインデザイン賞を通して、広く社会にアピールしています。調査研究はビジュアルサインだけではなく、音サインなども研究対象としています。

Too:音サインとは?

竹内:電車の発車サイン音などがそうです。直接音声で案内するものもありますが、直接的なものだけではなく、音が手掛かりとなって人々の行動のきっかけになるサインもあります。エレベーターが到着したときの上下を「ピンポーン」音のイントネーションで伝えたりするのも、この研究対象です。

そして、代表的なのがピクトグラムについての研究です。案内用図記号の標準化、デザイナーの選定や、カテゴリの分類、理解度の調査、将来的にJIS化する、データの配布をするなど全般に関わってきました。特にバリアフリー法が制定されてからは、車椅子マークを使う場所をどうするかとか、トイレやエレベーターマークをどう入れるかなど、ユニバーサルデザインを考える中で、サインの果たす役割はとても大きいと思っています。

ピクトグラムで一番有名なのは、1979年に作成された非常口マークです。多くの犠牲者を出したデパート火災をきっかけに、文字で「非常口」と書いてあるのは認識しにくいという反省がありました。一目でわかるサインを作ろうということで、公募されたものをSDAでとりまとめました。当時、まだ日本はISO(国際標準規格)の会議に参加してませんでしたが、参加後に非常口マークはISO推奨になりました。そのため、このマークは海外でも結構使われているんですよ。

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竹内:いまでこそ、みなさん「ピクトグラム」という言葉がわかるようになりましたが、そもそもは1964年の東京オリンピックで「競技マーク」として開発されたものがきっかけで、それが国際的に大きな評価を受けました。テレビ映像が主体となって、言語がわからない人向けに有効性が認められるようになったのです。その後、大阪万博で迷子やトイレ、警察など多くのマークが作られてきて、ピクトグラムはだんだん体系化されていきました。

例えば、いまでは赤色と青色の人の形があれば「トイレだ」とすぐにわかります。しかしオリンピックや万博の頃は、トイレマークも文字表記がなければわからなかったんです。それが長い時間をかけて、文字がなくてもマークだけで伝わるようになったんですね。

Too:国際的な大きなイベントがあると研究がぐっと進むんですね。

社会との関わり

竹内:ちょうどいまもそのタイミングだと思います。また、サインだけではなく、空間自体をわかりやすくするという動きもあります。ユニバーサルデザインに関わるところでは、福岡の地下鉄七隈線全駅デザインの事例があります。駅舎から車両まで、あらゆる設備をSDAでデザインしました。

交通機関では出口などは色彩コードが決まっています。例えば地下鉄の出口は漠然と「黄色」ということになっています。これは営団地下鉄がサインシステムを全線で導入したのが最初で、その後、私鉄や民営化したJRなどに広がっていきました。すでに社会的なコードになっているものを体系化していく活動も必要だと思います。

また、車椅子の人が電車を降りてすぐエレベーターに乗れるよう、エレベーターをホームの端ではなく、真ん中に置きましょう、ということもデザインされました。センサーが組み込まれた白杖を持っている方であれば、ここに近づくだけでエレベーターが呼ばれるようになっています。

Too:そうなると、もうサインデザインだけではないですよね?

竹内:トータルデザインですね。人の行動を考えるときに、サインを考える視点がとても重要になってきます。すると都市計画そのものもサインの仕事に入ってきます。

例えば富山市のライトレールの案件があります。街の活性化にあたっては、いいデザインで、住んでいる人たちが街を良くしていくこと、誇りを持てることが大事だということで、電車やサインだけでなく、架線や電柱、電停広告のあり方までデザインしています。いまの都市計画ではこうしたデザインの重要性が認められています。

Too:大きい話なんですね。

竹内:そのほか、医療介護支援ピクトグラムと呼ばれるものもあります。かつては、患者の食事やベッドの角度などの制限事項が、各自のベットに手書きで貼られていました。これは患者側も嫌だったし、介護側も医療事故につながりやすいと、わかりやすいピクトグラムを研究して作りました。社会に貢献するという意味では非常に重要な仕事です。

また震災の際には、津波のサイン、標高、避難などのサインを、いろんな人がいろんなものを作ったので、それらを統一するような活動もしました。

さらに、SDAで受託した大きな事業としては、各都道府県の景観ガイドライン作成があります。新宿区の屋外広告物や、青森県、群馬県でも活動しています。ガイドラインは単なる規制ではなく、その地域の商業を活性化することも大切です。看板や暖簾などを含めて街全体をまとめ、人を集める工夫をする。ワークショップをしてマークを作ったり、街づくり全体を考えて活動することもあります。来てくれる方におもてなしをして、街をアピールする、そんなお手伝いをします。

Too:SDA自体で受託するのですね?

竹内:そうです。こういった街づくりの話は、地方自治体の予算は限られているし、民間にお願いしにくいのです。入札してしまうと思想までたどり着けない。公益社団法人だからできることがあります。我々メンバーは、ほぼボランティアに近い活動予算で動いていることが多々あります。

Too:その代わり仕事のスケールは大きいですね。

竹内:仕事の結果を自慢したくなりますね。街ってこう見えたらいいよね。こうなるといいよね。というのを実現できるスケールがあります。

団体活動のいいところ

竹内:若い人たちは団体活動に興味ないのかな。僕が協会に入ってよかったなぁと思うのは、いろんな人たちと話ができて、情報をもらえるところです。インターネットの中だけでデザインしているのはもったいないなと思います。もっと広く見てもらって、人と会って喋るのって大切ですよね。

Too:特に人の行動に影響を及ぼすような仕事をされる方は、ますますそうかもしれませんね。 そのほか、協会員ならではのことはありますか?

竹内:SDA内で公募がありますので、大きなプロジェクトへの参加ができます。

Too:これから都市計画やサインデザインに関わりたいという人は、どうしたらいいのでしょう。

竹内:いま一番多いのは、グラフィックデザインからサインデザインに加わるパターンです。ジャンルにとらわれないで自由なスタンスで取り組むと、サインデザインという仕事はマッチングしやすいと思います。最終的にどんなデザインをするとしても、人の動きを捉えるサインデザインの考え方は役に立ちます。社会に役立つ、人のためになる、ということをサインデザインはとても実現しやすいジャンルだと思います。

Too:文字をキレイに書く、ということから、建物内のデザイン、そして都市デザインと、サインデザインは変化してきたのですね。

竹内:領域が広がっていますね。よく建築の方々が話すのは「俺たちはサインをつけたくない」ということ。私たちも好き好んでつけたいわけではない。究極は、サインがなくてもわかりやすい空間、なのではないかと。サインのない空間を目指していきたいのですが、空間が複雑な場合はどうしても必要なんですね。

複雑な複合施設では「きれいなサイン」が必要なのではなく、ある程度、動線のためのロジックが必要です。そして仕事の中では、建築家やさまざまなジャンルの方々と対話することになります。そういう意味では、いろんなことに興味を持って勉強をしている方がいいですね。

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SDAさんでは、雑誌「signs」への全面協力もしています。 都市設計、オリンピック、交通機関、介護医療…など私たちの生活に密接に関わるサインデザイン。 日本の街の景観や、社会行動を作っていく大きな仕事なのだと、あらためて知りました。

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