訪問!日本クラフトデザイン協会

インタビュー

2018.10.22

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デザイン協会訪問シリーズ第三弾です。こんにちは。Tooの椎野です。 今回はクラフトデザインです!

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日本クラフトデザイン協会(JCDA) 監事 岡本 昌子 氏

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日本クラフトデザイン協会(JCDA) 事務局長 西川 雅典 氏(以下、敬称略)


クラフトデザイン

Too:よろしくお願いします。まずは、クラフトデザイン協会さんのご説明をお願いします。

岡本:クラフトデザイン協会の成り立ちからお話しましょうか。当協会は1956年に「日本デザイナークラフトマン協会」として発足し、1976年に社団法人となるときに「日本クラフトデザイン協会」と改称しました。機能的で反復生産を意識した、当時はまだ新しい言葉だった「デザイン」という言葉を取り入れて団体を作ったのです。

西川:団体ができる前、日本のデザインが確立していない頃には、当時欧米の陶器のデザインを真似したものがたくさん作られていたんですね。当時、産業工芸試験所の方が北欧に視察に行った際に、ある陶磁器メーカーで、その真似をした製品と本物を組みにしてズラーっと並べられたそうです。デザインの盗用を非難されたことや、いい製品を安価に作ることができる技術があるのに、なぜ自分たちのデザインでやらないのかと言われた、なんてエピソードを先輩から伺ったことがあります。そうしたことがクラフトデザインの運動や、その後の団体設立のきっかけになったと聞いています。

岡本:戦後から少し時間が経ち、人々の生活が大きく変わりました。生活が落ち着いてきて、洋風の家が建ちはじめ、スカンジナビアなどヨーロッパのデザインが入ってきた。昔からある伝統的な作風とは違った、生活スタイルに合ったものが新しく必要だったのだと思います。

Too:それまでの製品とどんな違いがあったのでしょうか?

岡本:生活の変化が影響したと思います。例えば洋食が日常のテーブルに入ってきたことで、お椀ではなくプレートやカップが必要になった、とかですね。

西川:私は漆を専門にしています。いまも津軽塗や会津塗などの漆器産地は有名ですが、昔は全国に漆器産地がありました。漆器は江戸時代には各藩の重要な産業だったんですね。漆器はもともと高級品ですし、庶民にとっては日常品ではなかった。クラフトデザインは質が良くて買える値段の、日常で使える漆器を広めたのだと思っています。

Too:そもそもクラフトデザインには、どんな素材やジャンルがあるのでしょう?

岡本:テキスタイル、陶磁器、ガラス、金属、木、漆、竹・籐、あと少し捉え方が違いますが、ジュエリーというジャンルがあります。

Too:生活の中に登場するもの?

岡本:人のそばにあるものですね。

西川:実用品として使えるものもありますが、直接的には使わないものもあります。

岡本:そうですね。「見る」というのも用途であると定義しています。例えば、病院の真っ白な壁にレリーフやタぺストリーを飾ることで人の気持ちを和らげる効果がある。それも用途になるんです。いまでは100円ショップをはじめ巷に商品が溢れ、生活用品を簡単にコーディネートできるようになっています。私の専門はテキスタイルですが、学校を出た頃はテーブルマットとかクッションやラグなど、そういった洋風の新しいアイテムを生活に取り入れることが一世を風靡しました。しかし表面的な価値だけでは行き詰まってしまいますよね。

かっこいいという表面的なことではなく、現在では本当の価値はどこにあるのかが問われています。私たちクラフトデザイン協会でも、自分たちはいま何ができるのか、ということに立ち返っています。そして、それは素材と向き合うことだと考えています。

生活の中での本当の価値

西川:デザインという言葉は難しくていろいろな解釈ができますが、クラフトデザインは、生活の中のものをデザインしていくもので、人に一番身近なデザインであると話すことがあります。また、大先輩から伺ったお話ですが、素材と向き合い、自分たちの手で作りだすクラフトは、云わばデザインの根源ともいえるのだよ、と(笑)

Too:他のデザイン協会さんでは、アーカイブすることも重要な役目のひとつと伺ったのですが、クラフトデザイン協会さんではいかがですか?

岡本:クラフトの場合は、50年、60年前の作品からそれほど変わっていません。60年前のデザインの器が現在も販売されていたりします。器なんて、有史以来ずーっとあるものなんです。もちろん新しい素材が出てきたり、関心の方向が時代によって変わったりはしますが、お皿はずっとお皿なんです。そういう意味ではクラフトデザイン協会は他のデザイン協会さんとは少し違うかもしれませんね。

西川:さらに、他の団体と違う点として、アートと距離が近いということもあります。デザインとアートの境界線が曖昧なところも、クラフトデザイン協会の特徴のひとつかもしれません。海外のクラフトではアートの要素が強い作品がたくさんあります。

岡本:豊かに暮らす。豊かさとは何か? ということなんです。たくさんの食器がある中、私たちの作品を買ってもらうのは大変です。断捨離をした最後に残したいと感じてもらえるものを作りたいと思っています。捨てられないものを作りたいですね。

Too:豊かさ。社会に対してのメッセージが問われますね。

西川:いわゆるデザイン製品は作者名が伴うことは少ないのではないかと思いますが、クラフトの製品は誰が作ったものだというのが大事だったりします。農家にスタンスが近いかもしれませんね。「誰々の畑で作った大根ですよ」みたいに「誰々のお椀がまた欲しいな」と思ってもらえる。

岡本:あと場合によっては、作者がメンテナンスしてくれるのもいい点ですね。それから例えば食器なら、100円とか500円とかでも買えるものがあるのに、何千円や何万円とかの値段が付くものを使うのですから贅沢ですよね。ただ、そのこだわりの器によそえば、シンプルな料理がたちまち素敵になりますよ。

Too:視野が広がるんですね。うちにも食器や洋服、生活に必要なものがたくさん家の中にあります。その中で、こだわりを持って生活ができるかどうかが問われている気がします。

異素材の魅力を知る

Too:ではクラフトデザイン協会の魅力を。

岡本:クラフトデザイン協会の魅力は、いろんなジャンルがあっていろんな素材の人がいることです。協会のみなさんは、とにかく素材のことを徹底的に知っている人ばかりです。原材料から作品を作り上げる方も協会には多いのですが、全部を作家がやらなくても材料をよく知っていることが重要です。協会にぜひ入って、いろんなジャンルの素材の人と繋がって欲しいと思います。

Too:いろんな素材の専門家がいる。クラフトに関わる人にとってクラフトデザイン協会は、相談してみようと思える先なんですね。

岡本:そうですね。ぜひ相談してください。私たちもよく異素材の組み合わせで共同作業をします。木工の器に金属の取っ手をつけたり、布に漆をかけたり。協会に入ればお互い仲良くなりますので、作品の幅を広げるチャンスになります。違う素材のことがよくわからなくても、それを詳しく教えてもらえるのはとても良い機会です。例えばテキスタイルひとつとっても、絹や木綿やウールなどいろいろあります。新しい先端技術の繊維もあります。

西川:あとは日本クラフト展ですね。ここを入り口に、ぜひさまざまなジャンルに触れてもらいたいと思います。

第57回 日本クラフト展の会場

岡本:並んでいる作品は人を呼び寄せます。入選したり入賞したりする人たち、特に学生さんたちはしっかり時間をかけ、力をかけて作ってこられるので、作品のパワーがすごい。審査員もぐっと心をつかまれます。

西川:いろいろな素材や分野が集まるので、さまざまな視点で作品に触れられるのはいいことだと思います。日本クラフト展の審査のときによく思うのですが、例えば漆の作品で素晴らしい技術ですごいな、と思っても「これ、いらないよな」と感じるものもあります。日本クラフト展は技術展ではないので。漆芸の世界からだけの目線ですと、そういうのが見えなくなることもあると思います。組織に入らないで自分だけでやるという方法もあると思いますが、いろいろな人と交流する重要性を感じます。

岡本:審査会では審査する人によって評価が大きく分かれることもあり、徹底的に話し合います。こういった審査の過程はとても勉強になりますね。

Too:海外の方の受賞も多いですね。日本のクラフトに魅力を感じてくれる方や日本で勉強される方が多いですか?

岡本:そうですね。最近、意識的に海外展を開いて日本のクラフトを紹介しています。特にアジア各国と交流を持っていきたいと思っています。ありがたいことに日本のクラフトは品質が高いと評価されていますので、それを勉強に来られる方がいらっしゃいます。日本に学びに来る方々は非常にまじめで、一生懸命に勉強されるので伸び方が違います。

西川:なんかガッツが違うよね。

Too:異文化に触れるというのも勉強になりますね。

岡本:私たちにとっても非常に重要なことですし、とてもいい影響を受けています。


豊かな暮らしをするということは……と自分の家の食器棚を思い浮かべあれこれ考えさせられました。 JCDAさんでは、日本クラフト展を開催予定。 ちなみに本記事のトップ画像も、第47回 日本クラフト展大賞で時松辰夫さんの「えびす弁当」という作品です。毎年開かれているこの公募展は素材の制限がなく、さまざまなジャンルの作品が一度に見られてとてもワクワクします。若い方の応募も多いのでぜひご覧になってみてください。

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