訪問!日本インダストリアルデザイナー協会

インタビュー

2018.10.25

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公益社団法人日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA 
理事長
株式会社GKデザイン機構 代表取締役社長
田中 一雄 氏

Too:今日は日本インダストリアルデザイナー協会(JIDA)の理事長であり、GKデザイン機構のトップである田中さん(以下、敬称略)にお話をお聞きします。


Too:まずはJIDAという団体についてお聞かせください。

田中:JIDAは1952年に創立、1969年に社団法人となりました。そもそもインダストリアルデザインという職能が認知されていない戦後に、ユーザーの立場に立って考えていく、そして職能を確立するということから始まりました。その先に、デザインを通じてより良い社会をどう作っていくのか、世界のデザインとどうつながっていくのかを考えながら、日本の基幹企業とつながって大きく発展してきました。

現在では、日本のデザインというものをどこに向けていくかが団体の大きな使命ですが、デザイン産業として職能団体として、情報交流や技能を高めるという学習の面もあります。デザインミュージアム など、公益団体として後世にどう残していくのかなどの活動も行なっています。

インダストリアルデザインの変化

田中:いま、デザイン自体が変化してきています。ものからことへと言われて久しいわけですが、特に今日のデジタル化社会の中で、具体物のデザインから、サービスや企画、プランニングということが増えてきています。デザインというものが、触れるものから触れないものに拡大しています。

デザインというのはブランドを作っていくこと。そしてイノベーションをつくっていくこと。その両輪を作ることでバランスをとっていく。企業そのものが在りたい形を示していくことなのです。

先ごろまとめられた経済産業省の「デザイン経営宣言」でも、ハードウェアやソフトウェア、ネットワークやAIなどのテクノロジーを一気通貫に捉えていくことが、デザインにとって大事なことであると言われています。

あちらか、こちらか、という話ではなく、より総合的なデザインが求められる時代になっています。Tooでも、かつては絵を描くための筆を売っていましたよね。いまも筆も売ってるかもしれませんが、ことの考え方をサービスするといったような、クリエイティブ産業をどうサポートするのかというように変わってきていると思います。

Too:はい。私どもも変化しています。

田中:同様に、我々も職能団体としても求められることが変わってきていて、どうやって造形するかということから、何をどうやって社会にサービスしていくのかが求められるようになってきています。時代の変化の中でデザインを捉える必要が出てきています。

そういえば戦後、いづみや(Tooの旧社名)がデザインにフォーカスしたことで時代を作ってきましたね。榮久庵(GK創業者の榮久庵憲司氏)がアメリカから持ち帰ったデザイン画材をいづみやに持ち込んだという逸話があります。うちの倉庫にも発売前のいづみやの楕円定規の試作品、というのがまだありますよ。

Too:それはぜひ見たいです! もちろんアナログのデザイン画材は減ってきているのですが、アナログへの揺り戻しもあると聞きます。

田中:最終的には触れる世界の良さがあります。ものの持っている強さというものをリアルスケールで学ぶということを次世代につなげていこうとしています。今後どんどんバーチャルの精度は上がると思います。ただ、何かを作るときに、ものの持っている力というのを忘れてはいけないと思います。

人間の身体性は変わらない

Too:物理的なボタンだったものが、UIデザインになったりなど、デザインする対象物も変わってきています。

田中:どの時代においても、時代を生きていくスキルを持っていればいいのだと思います。テクノロジーは活用すべきものだと思います。時代の中で変わっていくものを捉えないと、非常に近視眼的なことになります。

例えば、iPhoneのボタンは物理的なボタンではなくなりましたが、押すとブブッと振動が伝わるようになっていますね。30世紀になっても、人間の身長が8メートルになったり30センチになることはまずないわけです。人の身体性にリンクした部分はそんなに変わらないと思います。椅子だって変わらないですよね。変わらないものと変わるものをちゃんと見極めてどう使っていくか。そして生命体としての人間の感性において適合するものは何なのか。それを見極めていくことだと思います。

デジタルツールを考えたとき、制作するためのツールは身体の感覚により素直に沿うものに近づいていくと思います。僕の若い頃のCADは数式だったんですからね。いまは「丸」と言えば丸を作ってくれるようになっていますよね。そういう進化はあると思います。

デザインは発想である

Too:プロダクトやインダストリアルデザインで、変化したことはありますか?

田中:工業デザインの最初のころは「ラジオを作ったから表面をかっこよくして」という作業もあったと思いますが、いまは「何をつくるのか」から始まって、エンジニアリングとも関わるので全体的にひとつになってきています。近年においての一番大きな変化は、デザインは造形であるということから、デザインとは発想であるということに変わったことだと思います。

どれだけ物事を考えることができるか、ということがデザインスキルになってきます。表現がしたいということよりも、発想がしたいという時代になっていると思います。もちろん着地をするデザインが必要だということは間違いないのですが。イノベーションと旧来のデザインが一体となって、ハードウェアもソフトウェアもシステムも全部がつながって高次なものを作っていく点にデザインの価値があると思います。

Too:その距離の近さはデザイン経営につながりますか?

田中:それは企業によっても違うと思います。一人の人が全部をやることはまずないので、どうやってひとつの物語を作っていくのか、という話だと思います。一番はっきりしているのは、在り方を考えるということが一番重要になっているのだと思います。

インダストリアルデザインは、変化する生活そのものを作っていくところがあります。より良い世界をどう作るのか。最近では作品のないデザイナーもたくさんいます。計画を作った、調査をしたというのも実績になる。こういう方々もJIDAの会員として迎えたいと思っています。JIDAは作家ソサエティではなく、時代を生きていく職能団体でありたいと思っています。 jida-01.jpg

明日をひらく仕事

田中:公益社団法人としては、政策提言できる団体になっていきたい。国というものがデザインをどう捉えているのか提言していくという立場であるべきだと思っています。例えば、知財の対価に対する国の考え方というところが、いまでも金額と作業員数がベースになっている。デザインの選定においても、見積もりの安いところに出すということをやっていたりするのです。知財に対する理解のなさに対して、団体が提言していかなければならないと思っています。こうした社会的責任をJIDAは担っていると思っています。

インダストリアルデザインは社会と密接につながっている仕事なので、社会課題の解決とデザインをつなげていくということは、学生さんにも興味を持っていただける側面だと思います。持続可能な発展と、デザインをつなげていくということは、我々デザイン団体としても大きなテーマになっています。イノベーションや社会的価値だけではなく、ものの良さとも絡まってないといけなくて、そういう意味ではものの良さや質の高さと、社会的視点が高次に結びついているものをより積極的に評価していこうとしています。

あとはネットワークですね。情報はウェブサイトで取れますが、人と直接つながる価値というのがあります。人と直接つながる、出会えるというのは学びの場があるということです。人と出会えるというのは団体の価値になると思います。学生さんたちにもより積極的に入ってきてほしいですね。私も学生時代から関わっているんですよ。

デザインというのは明日を開く仕事だと思います。次をどう作っていくのか。大きく広がっていくこと。デザインというのは表現であると同時に、考えることです。会社で一緒に働いてほしい人材は、表現力があったほうがいいのですが、ものを考える力のある人がいいですね。


たしかに、言われてみれば人間の身体性はそうは変わらないんですね。そしてテクノロジーは進んでいく。その間を繋いでいくインダストリアルデザインの領域はますます広がっていきます。未来を開いていく使命を感じたインタビューでした。 公益社団法人 日本インダストリアルデザイナー協会

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