「アート・シンキング!」

インタビュー

2018.11.01

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こんにちは。Too椎野です。 今日は、Tooでもお世話になっている、経営コンサルタントの町田さんに、最新のビジネスシーンに必要なスキルを教えてもらおうと思います。町田さんは経営コンサルタントであり、画家さんでもあります。

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株式会社ボダイ代表取締役社長 町田 裕治 氏

コンサルタントの仕事って?

Too:基本的な質問ですいませんが、最初にそもそも経営コンサルタントって何をする人なんですか?

町田:企業トップに寄り添い、経営に関わるいろいろな相談を受けるアドバイザーです。私がいたマッキンゼーでは、企業がどうしようと迷ったときに科学的に課題解決する手法を持っていて、80年代当時はそれがすごく画期的でした。分かりやすく言うと、お客さんを見ましょう。競合企業が何をやっているか見ましょう。科学的に分析しましょう。仮説をもとにアンメット・ニーズ(満たされていないニーズ)を調べましょう。制約を外して考え抜きましょう。そして戦略を決めましょう……というような手法です。戦略というのは戦争でイメージされるような「勝ち方」を決めるのではなく、進む方向の全体を決めるようなイメージです。

Too:なるほど。そういった手法が紹介されている書籍もよく見かけます。

町田:マッキンゼーのように分析などサイエンスを基礎にしたものは、全体的に論理的・左脳的であると言われてきました。実際には、解を考えるところはとても直感的・右脳的なのですが。再現性がある手法は社外にも公開していて、そこだけを見ると確かにとても論理的に見えますし、論理で課題を追い込むことはとても大事です。一方で、私はマッキンゼーの中でも右脳的と呼ばれ、右脳的な方法を随分取り入れました。元々アートそのものが好きで、画家もやってきたからかもしれません。

アート・シンキングとは

Too:そんな経歴を持つ町田さんが、いまアツいと取り組んでいらっしゃるのが「アート・シンキング」! ご自身もワークショップを体験しながら、新しいワークショップの構築もされています。アート・シンキングは、デザイン・シンキングとはどう違うのですか?

町田:デザイン・シンキングはデザイナーのように考える。アート・シンキングはアーティストのように考える、ということです。それでは説明になっていませんね(笑)デザイン・シンキングはプロダクトデザイナーさんや広告デザイナーさんから出てきたこともあり、企業活動そのもので問題解決を前提にしています。課題を定義し、クリエイティブな発想で課題解決してゆきます。

一方、アート・シンキングでは、必ずしも論理的な課題解決が求められません。課題自体も大きく変わります。もちろん解決が出るといいのですが、その過程や課題認識、自己動機の方をより重視します。体感や直感を大事にして、何らかのビジネスのアイデアや企画、もしくはアート作品そのものをアウトプットするといった緩やかなものです。

既成概念を外す訓練

Too:なるほど。アート・シンキングは課題解決そのものではなく、ものを作ること。その思考法が、なぜビジネスに役に立つのでしょうか? アート・シンキングについて、詳しく教えていただいてもいいですか。

町田:アート・シンキングは、10年ほど前にスタンフォード大学で発祥して、フランスでワークショップが熟成されました。これは、アート的な直感や感覚をビジネスでちゃんと使いましょう、というものです。

アートって何でしょう。「これがアートだ」と定められたら、アーティストは必ず、それではないものをつくります。アート、特に現代アートはもともと既成概念を壊していくという行為です。そして誰もやっていないことをやっていい。これをビジネスに当てはめて考えると、ビジネスの既成概念を壊していい、新しいビジネスも既成概念を取り外して自由に考えていい、となります。

アート・シンキングでは、ものを作ったり、自己を見つめなおしたりしながら既成概念を外す訓練をします。その際、アートらしく、体感や直感をとても大切にしていきます。またアートは作り手だけでは成り立たなくて、必ず鑑賞者が存在します。観る側の解釈も自由です。製品やサービスをユーザーや利用者と一緒に仕上げる感覚がそこにあります。

そして、完成がないというのもアートなんです。その概念もビジネスにあってもいい考え方ですよね。さらにいろいろなことの境界を超えられるのもアート。ストレートな球だけでは、複雑な社会課題を解決するのは難しいかもしれない。そういったときにこそ、アートの自由で柔軟で「キワ」をとっていくような考え方が有用ではないでしょうか。混ざり合った「キワ」にどんなチャンスがあるかわかりません。

そのような既成概念を外れたところの発想を生み出す感覚こそ、イノベーションが求められる今のビジネスにピッタリかな、と思っています。これをワークショップを通じて身につけるのがアート・シンキングです。

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直感的なひらめきを大切に

Too:デザイナーさんは直感的にできている方も多いように思いますが、どうでしょうか。

町田:確かに、比較的アートに近い場所にいるデザイナーさんはアート・シンキングを、そうは言わなくても自然に実践している方は多いと思います。ただ仕事をしていく上で、例えば自由な発想で提案してもクライアントが受け入れてくれない、経営層が受け入れてくれない、という場面に多く出会いますよね。アート・シンキングワークショップは、まさしくそんな「クライアント」や「経営層」にも受けてもらえたらと思っています。

提案側もですが、受け手のクライアントや経営者にこそ「直感的なひらめき」がいかに大事かを理解してもらいたいのです。そのひらめきには、ゼロからイチを生み出す力があります。そして、イチと思っているけれど、そこから広がらないとき、そのイチ自体を見直すにも使えます。もちろん提案側もさらに柔軟に、発想を自由に、あたらめて自分を発見し、課題設定を変えることになるでしょう。

Too:町田さんご自身も、アート・シンキングワークショップの主催を準備されていらっしゃいますよね。どのような特徴がありますか?

町田:私がいま考えているアート・シンキングワークショップでは、自己動機や課題認識などアート思考の基本を抑えつつも、加えて禅の考えを取り入れたいと思っています。

欧米のワークショップだと、たとえば発想を膨らませたり壊したりするために、仮想敵を作ってそれを打ち破るには、権力奪取するには……といった仮説設定がされたりします。闘争によって自由と権利を得てきたとても欧米らしい手法と思います。ただ、全体の調和を重んじる日本人には感覚的にわかりにくい部分もあります。日本人に言うには、人のものさしに合わせる必要はないですよ、ということを言う方が分かりやすい。さらに、二項対立を乗り越えましょう。その際に直感をもっと大事にして、論理的な条件も抑えつつ、もっと感覚を使います。

バランスですね。個人の知性や感性と、全体の調和。両方のバランスをうまくとりながら、新しい可能性を見出すことができると、よりイノベーティブな解の方向が得られるのではないかと思っています。

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「体験」が重要

Too:このワークショップは、実際に体験しないとなかなか理解が難しいですね。

町田:その通りです。「体験」が重要です。起業家でアートをつくられる方は、事業をつくるのと、アート作品をつくるのとはとても似ている、と言われる方が多いです。例えば、絵を描いている間の没頭感や直感、ひらめき、というような感覚は、体験したことがあればわかる人も多いと思います。あの没頭感や自由なひらめきこそ、今ビジネスシーンで求められている感覚・発想そのものなんです。それを体感で引き出してゆきます。

ワークショップでは、自分がいかに既成概念の中で物事を考えているかを実感します。頭やデータで考える常識や既成概念で課題を設定して、既成概念で課題を解く必要はありません。

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町田:物事の本質はどこにあるのか、課題はなんなのか、自分のパッションはどこにあるのか、内発的動機は何か。自分を見つめ、過去の先入観を壊しながら、感じたり、突き詰めて考えたりしていきます。論理も使いますが、今の時代は論理を使いすぎているので、人間が全身全霊でバッと感じる感覚をより大切に進めていきます。感覚や体験を重視することで、論理と感覚の間を何度も行き来します。

課題の再定義ができることで、アウトプットが変わってきます。たとえば家電の次の製品を考えるのに、なにも家電の枠で考える必要はない。本当の課題に気づくと、モノを作ることだけが解ではない、ということに気がついていくのです。アート・シンキングで課題を再定義すると、より深く、より本質的なものになるので社会にとって重要なイノベーションが生まれるんじゃないかと感じています。

Too:体感を重視するからこそ、まずは体験してみることが大切だと。うーん。やはり実際に受けてみたいですね。

町田:実際にやってみる経験が重要なんです。例えば競合製品について、データを見てあれこれ言うことはできます。でも実際に自分で使ってみる人はどのくらいいるでしょうか。同様に、新しいサービスを考えるとき、粘土でいいので、プロトタイプをつくって反応を見る。さらに、プロトタイプでは飽き足らず、課題の投げかけ自体をアート作品でやってみる。直感でパッと伝わるかもしれない。 アウトプットも自由です。ビジネスやサービスのアイデアでもいいし、アート作品や模型だっていいのです。それで社会がグッと動くのなら、それにはとても意味があります。

ぜひTooでもやってみましょう!


アート・シンキングワークショップを受けると泣き出してしまう人もいるとか。自己を見つめ直すってちょっと怖いですが、自分の既定概念を破れるのは楽しみです。小さい頃から絵を描き、マッキンゼーで経営コンサルタントを長年していた経験から、町田さんはどのような成果を見出しているのか。それこそ「自分で体験」しないとわからないのかもしれません。

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