探訪!オートデスク株式会社
松川 隆 氏
株式会社Too HRデベロップメント部、株式会社サイボウズ 人事部
1972年東京生まれ。大手銀行で9年働いた後に広告代理店にて勤務。さらに自らテニススクールを立ち上げる。2012年サイボウズ入社。パートナー営業部を経て、現在人事部。2017年にToo入社。3児の父親。
Too:こんにちは。Tooの椎野です。今回は、Tooで働き方や人事についてサポートいただいている松川隆さんにお話をお伺いします。松川さんの本業は、多様な働き方で有名なサイボウズ株式会社の人事部。複業としてTooでも働いていらっしゃいます。えーと、いろんな引き出しをお持ちだと思うのですが、まずはどの引き出しからいきましょうか。
松川:働き方とか人事のことって幅広いよね。
Too:では、Tooのお客様の業界でもよく聞く、人材不足の話からお願いします。
Too HRデベロップメント部、株式会社サイボウズ 人事部 松川 隆 氏
松川:よくお話しするのですが「いま流行っている『働き方改革』っていう言葉、よくわからない方向にいっちゃっていませんか」と。「働き方改革をしましょう」となると長時間労働の削減という方向ばかりで、20時以降に電気を消すとか、強制的に帰らせるとか。一方で、売り上げや生産性は落とすなと言われて板挟みになり、「楽しくないなこれ」「何のためにやっているんだ?」みたいな状況になっています。本当にある職場の問題ってなんだろうと。
バランスをとる
松川:これはよくある例ですが、「コミュニケーションは、Face to Faceが基本!」なんて上司がいると、「そう言われてしまうと、リモートワークとかやりたいですって言いにくいよね」という雰囲気に周りもなってしまう。ITツールが会社には用意されているのに使われていなくて、会議でも相変わらず紙の資料を配らなくてはいけない。会議のための資料作成に多大なコストをかけていて、これでは生産性が高いとは言い難いですよね。
このような働き方は、特にITツールを普通に使いこなす人たちにとってはギャップがあって、息苦しく感じてしまうようになって、いつの間にか会社や仕事に対するやりがいとかが無くなってしまう。もっと効率的にコミュニケーションができて、本来の業務に邁進できるような働き方ができる会社があるんだったら、そちらの会社の方が魅力的になって転職してしまう、なんてことになるわけです。
だけど「Face to Faceが基本!」という声も無視はできません。Face to Faceのコミュニケーションも、それはそれで大事なことでもあるので、バランスをとる、というのが必要なんじゃないかと思います。どっちかだけじゃないといけない、ではなく。
Too:バランスというのは世代間のギャップを埋めること?
松川:世代間もあるかもしれませんね。Face to Faceという場合、テレビ会議はどうなんだろう。リアルにそこにいるべきと思う人と、思わない人がいる。いまどきの若者世代は、LINEでつながっていればFace to Faceと思っているかもしれない。いろんな形があると思います。
例えば、イベントなどの最後にQRコードを渡してアンケートに協力してもらうとき、若者世代は送信がめちゃくちゃ速い。5分もすればざっとその場で回答が集まる。逆に、少し世代が上がるとなかなか回答が集まりません。世代が違えば、ITツールを使う感覚もリテラシーも違います。どっちが正しいとかではなく、柔軟に双方を効率よく使える環境がいいなと思います。
若者たちが求めているもの
Too:たくさんの就活生と会っている松川さんですが、いまの若者たちが職場に求めているのは、どういうものでしょう。
松川:働く場所を選んでいる若い世代にとって、その会社がどんな事業をやっているかはもちろん大事なんだけど、それに加えて「心も含めて人生が豊かでいられるかどうか」という判断軸があるんじゃないかと思うんです。「社畜」なんて言葉も普通に使われるようになり、選んだ会社によっては、自分が望んでいる人生に近づかずに不幸になってしまう可能性がある。そんな見方をしている人は少なくないような気がします。
人生100年時代と言われ、長く働きたいと思う人が増える中では、仕事のやりがいや自分の成長があって、さらに自分のライフとも無理なくバランスをとれる環境を求めて、会社選びをする人は多くなっているように思います。
例えばダイバーシティだ、柔軟な働き方だ、といった文言がウェブサイトに書いてあっても、先輩社員に「実際のところどうですか?」って聞いてみたら「う~ん、そうでもない」なんて返事が返ってきちゃったりして。いまの時代、会社の評判のようなものはネットなどを通じてすぐに広がりますし、「会社説明会やOB訪問で社員の方とお話をしたら、掲げている理念や取り組みと実際にギャップがあるかないかはわかります」と話す学生もいます。企業理念の浸透って大事ですよね。
例えば高校の野球部で考えたとき、すべての野球部が「甲子園で優勝するぞ!」って目標を掲げる必要はないと思うんです。「県予選で一回戦突破」でもいいし、「楽しく野球をしよう!」でもいいんじゃないかと。
企業理念だってそんな感じで、企業によってオリジナルなものでいい。大切なことは「理念にメンバーが共感して、そのように行動しているか」だと思うんです。クリエイティブ業界、デザイン業界などは、ユーモアなども交えてセンスあふれる企業理念を掲げて実行してほしいですね。
Too:一方、現実としてデザイナー職はきつい仕事のイメージが強くあります。
松川:「クライアントは神様」みたいな感覚があるようなことを聞きました。「明日までにこれを仕上げて!」って無理強いにも、ひたすら応えなきゃいけない、みたいな。きつい仕事っていうイメージはそういうところから来るんでしょうか。ただやっぱり、そういう環境はみんなで変えていかなければ、この業界で働きたいという人が限定されて縮小してしまうかもしれませんね。
クライアントも含めて一緒のチームという感覚で仕事ができれば、いい関係が築けるのではないでしょうか。無理を強いられる関係というのは長続きしないと思います。それだと一緒のチームという感覚もないかと思うので、場合によっては離れていくことも必要かもしれませんね。勇気がいることですけど。でも、必ず一緒のチームとして働けるクライアントが現れると思うので、そういった行動ができる会社というのは魅力的だと思います。
オープンで公明正大な環境
松川:サイボウズでは、情報をオープンにすることを大事にしています。会社全体でオープンにして「この件に対して、こう経営判断をした」という情報も共有しています。理想に共感した人がこの会社にいるという前提のもと、オープンかつ「嘘をついてはいけません」と言っている。
また、多様性も大事にしています。多様性といっても女性や外国人を採用する話ではなく、人は一人ひとり違っていて、例えば僕とあなたは違う人間で、好みも価値観も違う。違うということを前提に認め合おうという話です。
多様性を認め合っていれば、「僕はこんなことをしたい」という発言があった場合に、「こいつ、何言ってんだ?」ではなく、「なるほど、そういう意見があるんだ」となる。自分の価値観からすると変わったことを言う人がいるかもしれないけど、それも聞く。こうやって、どんなことを言っても大丈夫だという安全な環境をつくってあげるわけです。
そうすると、みんなが勝手なことを言い始めます。「スタバで仕事したんですけど、コーヒー代を経費にしてもらえませんか」とか。多様な意見をまずは聞き、都度議論して決断していきます。議論はすべてオープンになっているので、どんなことがどんな温度感で議論されてどう決まったのか、経緯も含めてみんなが見えるようになっています。僕も最初は「え?コーヒー代??」と反射的に思ったけど、じっくり言い分を聞いてみると一理あるなと思ったり。時間はかかるけど、聞く側の考え方も徐々に変わっていきます。
言いたい放題にすると、会社がカオスになってしまうのでは? と思われるかもしれませんが、理念に沿って判断していくというのが明確であれば、あんまり変なことにはならないと思います。
Too:全員が意見を出せるようにするには?
松川:それに関しては、Tooもどんどんチャレンジしてるよね。ガラス張りの会議室だったり、オープンな社長室とか。社長室の前にあるフリードリンクサーバーとかは、社長と気軽なコミュニケーションが取れる仕掛けだし。ドリンクの順番待ちは他部署の人とちょっと話すきっかけになったり。フリースペースで頻繁に勉強会が開かれているのも、すごくいいことだと思います。
松川:ある社員が社内SNSに「おーい。ゴミはちゃんと捨てようよ。」というような書き込みをしたときに、すごくいっぱいの人が共感して「いいね!」を押しているのを見て、コミュニケーションが気軽にとれる会社だと思いました。
でも、いきなりみんなが全社朝礼で発言できるようにはなりません。ただ会議室なら言える人もいるかもしれない。コミュニケーションは飲み会だ!といっても飲み会が嫌いな人もいるわけなので、いろんな種類の場を用意するのがいいと思います。
Too:それも多様性ですね。
Tooでも自分たちの個性を生かした環境改善の取り組みが広がっています。組織や人を取り巻く環境って、すぐには変化を実感しづらいかもしれませんが、IT環境なども日々変わりつつあるいま、前進し続けることが重要なのだなと思いました。