【現場を変えるMobilityのアイデア】第33話:Apple ID管理の「解」来たる!?
岡崎 咲子氏
株式会社SmartHR
ブランディング統括本部 ブランドコミュニケーションデザイン部 マネージャー
大学卒業後、出版社にて雜誌・ムック・書籍の編集・インタビュー・記事執筆に従事。その後、デジタルプロダクションに転職。ウェブサイトを中心としたプロジェクトマネジメント・ディレクションを担当。その後、フリーランスを経て、2022年にSmartHRにディレクターとして入社。2024年1月より現職。
沖山 直子氏
株式会社SmartHR
ブランディング統括本部 ブランドコミュニケーションデザイン部 クリエイティブディレクター
アートディレクターとして企業ブランディングやアートディレクションに貢献。 経営戦略に基づくコンセプト提案、ブランドの世界観構築を手掛ける。2016年よりデザイン組織構築を主導し、2021年、これまで組織構築を主導してきたデザインファームの取締役に就任。 2023年からはDXコンサルファームでUI/UX・BXデザイン部門を統括。2025年より現在、SmartHR ブランディング統括本部のクリエイティブディレクター。
田嶋 諒氏
株式会社SmartHR
ブランディング統括本部 サービスコミュニケーションデザイン部 サービスデザインユニット チーフ
デザイン事務所にて、デザイナー兼チーフとしてグラフィックデザインやエディトリアルデザインに従事。 2022年にSmartHRに入社し、アートディレクター兼デザイナーとして活躍。 現在は、SmartHRブランディング統括本部のサービスデザインユニットでチーフを務める。
Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2025 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2025年11月7日(金)に泉ガーデンギャラリーで開催しました。10回目となる今回は、最前線でデザインの可能性に挑戦する皆さまの、トライアンドエラーの過程やノウハウ、創造の原動力を盛り込んだ8本のセッションを行い、盛況のうちに幕を閉じました。当日のセッションレポートをお届けします。
株式会社SmartHRは、クラウド型の人事労務システムを提供する会社です。サービス開始から10年を迎えた同社のブランディング統括本部から3名の登壇者を迎え、コミュニケーションデザインの変遷や最新のクリエイティブ事例が紹介されました。
登壇したのは、ブランドコミュニケーションデザイン部の岡崎咲子氏、沖山直子氏、サービスコミュニケーションデザイン部の田嶋諒氏の3名です。事業成長とともに進化を続けてきたデザイン組織の「これまで」と「これから」について、事例を交えて語っていただきました。

社会を「well-working」にするため成長を続けるSmartHR
はじめに岡崎氏からSmartHRの事業概要が紹介されました。同社は「well-working 労働にまつわる社会課題をなくし、誰もがその人らしく働ける社会をつくる。」をコーポレートミッションに掲げ、人事労務業務の効率化やタレントマネジメントなどを支援するクラウドサービスを提供しています。
2025年6月にはサービスビジョンを「worker-friendly(ワーカーフレンドリー)」に刷新、働くみんなが使いやすいシステムを開発していく思いが込められています。このビジョンを実現し、2030年までに売上1,000億円規模のビジネスを作り、社会を「well-working」にするインフラ企業となることを目指しています。
柔軟に変化してきたSmartHRのデザイン組織
引き続き岡崎氏が、コミュニケーションデザイン組織の変遷を説明しました。
2016年に1人目のデザイナーが入社。最初は、1つのチームでプロダクトデザインを中心にVI、サイト制作、イベント制作、CMなど「なんでもやる」時代でした。
2019年にはプロダクトデザインとコミュニケーションデザインに分かれ、さらに2024年にはコミュニケーションデザイン領域を「サービスデザイン/ブランドデザイン/新規事業・グループ会社」の3領域に分けることになりました。
岡崎氏は「その時々の事業、目標、課題に向き合い、組織を柔軟に変化させながら会社・サービスの成長と信頼獲得に寄与してきたのがSmartHRのコミュニケーションデザインの特徴」と語りました。
打ち上げ花火にはしない―10周年企画でのチャレンジ
つづいて、2025年に迎えた創業10周年の企画のデザインについて、沖山氏が紹介しました。沖山氏は今年1月に入社し、最初の仕事が10周年企画のクリエイティブでした。
10周年をどう盛り上げようかと考えながら参加した最初の会議で「漠然と感謝や決意を伝える打ち上げ花火のような施策は実施しない」「周年という貴重なタイミングを活かし、中長期的なブランド価値向上にチャレンジしたい」といったプロジェクトの方針を聞き、プレッシャーとともに「面白そう」とワクワクしたそうです。
徹底的な顧客志向で人や社会のニーズを形にしていくSmartHRの姿勢を表現するため、デザインコンセプトは「洞察する力」に決定。SmartHRのこれまで積み上げたブランドイメージを大切にしつつ、新鮮さや驚き、未来への期待感を付与してトーン&マナーを再定義しました。「未来への期待感」に内包されたキーワードを紐づけていくことで、カラーパレット、写真、モーション、タイポグラフィなどを設計していったと解説しました。

そうやって完成した、10周年プロジェクトのための特別色を設定したカラーパレットやタイポグラフィ、一番特徴的だったというグラフィックモチーフ、10周年ロゴを紹介していただきました。そして、社内のクリエイティブメンバーと共に作り上げたものをベースに、外部のスペシャリストたちと一緒にWebや冊子の制作をしていったそうです。

最後に沖山氏は「未来を想起する、もっと魅力的になることを予感させるなど、イメージを更新できるのもデザインのできること」「これからも課題解決のその先を狙って作っていきたい」と語りました。
新サービスビジョンに見る「できるだけデザインしない」選択
次に、SmartHRの「これから」を象徴する事例として、新サービスビジョン「worker-friendly」のコミュニケーションデザインについて田嶋氏が紹介しました。
このプロジェクトでは、10周年の華やかなクリエイティブとは対照的に、「できるだけデザインしない」という選択がなされました。その理由は、社内に対しても浸透しきっていない新しいビジョンなので、派手なプロモーションを打つのではなく社内外に浸透するためのベースを固める必要があると考えたからだと解説しました。

その結果作られたアウトプットは、長期的にさまざまなシーンで使われるベースとなる、シンプルなロゴタイプとメインコピーです。どんなところでも使いやすく、古くならない王道なビジュアルで、シンプルなルールで運用できる基礎的なデザイン要素となっています。

田嶋氏は、「作らないという選択」もデザインの1つの考え方であり、デザインの向こう側にいる人のために何ができるかを考えることが、本当のデザインの力だと語りました。
SmartHRのコミュニケーションデザインのこれから
セッションの最後には、SmartHRのコミュニケーションデザインの今後について、3名がそれぞれの視点を共有しました。
沖山氏は、過去のクリエイティブに感じた「遊び心」をSmartHRの個性と捉え、バックオフィスという硬い分野を扱うからこそ、その先にいる人を見据えた柔らかさを持ち続けることが、コミュニケーションデザインチームがやるべきことだと語りました。
つぎに田嶋氏は、SmartHRで働く人たちの真摯さから話し始めました。「相手を喜ばせることや社会を良くすることを、真面目に楽しく考えている人たちが集まっている」「会社の規模が大きくなっても、このカルチャーを発信していくことが大事」と述べました。
岡崎氏は両者の意見を受け、「変化の激しい会社の中で、楽しんで前に進み進化を止めなかったのは、遊び心やカルチャーがあったから」と総括。これからも、遊び心と確かな土台のバランスを取りながら、信頼感とともにワクワクする期待感を醸成する高い品質のクリエイティブを提供していきたいと語り、セッションを締めくくりました。

10周年という節目を迎え、さらなる高い事業目標を掲げ成長を続けるSmartHR。その挑戦を支えるコミュニケーションデザインの考え方や実際のクリエイティブには、事業会社のデザイン組織が直面する課題へのヒントが詰まっていました。
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#design surf seminar #グラフィックデザイン #コミュニケーション #デザイン思考 #デザイン経営 #ブランドデザイン
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