design surf seminar 2025

Adobe MAX最新情報とFireflyの更なる進化 〜 アドビの岩本さんに聞いてみよう!

2025.12.03

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岩本 崇

アドビ株式会社
フィールドプロダクトマネージャー

前田 勝規

株式会社Too
Too Training Center Desi(デジ)講師

Tooは、特別セミナー「design surf seminar 2025 - デザインの向こう側にあるもの - 」を、2025年11月7日(金)に泉ガーデンギャラリーで開催しました。10回目となる今回は、最前線でデザインの可能性に挑戦する皆さまの、トライアンドエラーの過程やノウハウ、創造の原動力を盛り込んだ8本のセッションを行い、盛況のうちに幕を閉じました。当日のセッションレポートをお届けします。

毎年好評いただいている、Adobe MAX直後に最新情報を紹介するセッション。今年もアドビ株式会社 岩本 崇 氏にご登壇いただきました。アドビアプリのデザインスクール「Desi(デジ)」講師の前田とのコンビで、新機能のデモを中心に解説していただきました。

前回に続き○×でのアンケートも。Fireflyを仕事で使ってる人は50%くらいでした

Photoshopの新機能「調和」で合成をリアルに

Adobe Photoshopの新機能としてアドビ岩本さんが最初に紹介したのが「調和」。名前はシンプルながら、さまざまな制作シーンで重宝しそうな機能です。

Photoshop上で背景となる写真の上に人物を合成したあと、「調和」機能で馴染ませる処理を実演しました。人物を切り抜いて背景に重ねただけだと、どうしても「他から持ってきた感」「浮いてる感じ」が出てしまいます。「調和」の処理が終わると、色味や光の当たり方などを自動で調整して自然な仕上がりになることが一目瞭然でした。

「調和」機能でイラストに自動で影が付きました

次に、人物写真だけでなく人物のイラストと背景写真との合成にも「調和」は有効なことを紹介します。さらに、バス停の交通広告のモックアップ作成を想定した処理も実践しました。濡れた路面への反射など、合成した素材以外の部分にも自然な調整が入る点に、Too前田も「すごいですね」とコメントしていました。

生成AI機能でFireflyだけでなくパートナーモデルも選べるように

今回のPhotoshopアップデートで大きな注目を集めたのが、アドビ独自のFireflyモデルだけでなく、他社の生成AIモデルをPhotoshop上で使えるようになったことです。Adobe MAX 2025でも最重要トピックとして語られていました。

生成アップスケールで解像度を高精細に

まずは、アップスケール機能の強化として、「生成アップスケール」にFireflyに加えてTopaz GigapixelとTopaz Bloomという2つのパートナーモデルが追加されたことを紹介しました。

生成アップスケールでは2つのパートナーモデルを選べます

スマホやデジカメで撮影した写真が解像度不足なことは今どき少ないですが、写真の一部を大きく使いたい場合にアップスケール機能は便利です。ここでは、岩本さんが写った旅行の写真をベースに、生成アップスケールを使って細部のディテールを失わずにキレイに画像の解像度を上げられることを実践しました。

Gigapixelは人物やポートレートを得意とし、Bloomでは元画像に忠実な補完から大胆に調整を加えたディテール生成までスライダーひとつで調整できるといった、モデルごとの特徴も実例を見てもらいながら紹介しました。

生成塗りつぶしで「他は変えない」指示が可能に

次に紹介したのは、「生成塗りつぶし」です。パートナーモデルとして、Black Forest LabsのFLUX、GoogleのGemini 2.5(通称Nano Banana)が使えるようになりました。

Nano Bananaでは、「他は変えない」「あとはそのまま」といったプロンプトを入れることで、不要な人物だけを自然に消したり、昼間の景色を夜景へ違和感なく変えられることをデモで紹介しました。従来の生成AIによく見られた「意図していない部分まで変更されてしまう」問題が大きく改善されたことがわかり、実務に使える期待が高まります。

ほかの要素は極力変えずに夜の風景を生成

また、FLUXモデルを使い写真内の看板の文字を「BEVERLY HILLS」から「DOGGY VILLAGE」に変更するデモも披露。質感やフォントも違和感なく仕上げてくれます。なお、日本語の文字については、現時点ではうまくいかないことが多いとのことでした。

生成AIというのはツールであって、最終的にイメージを作り上げるのは皆さん

ほかにも生成AIを使ったデモは続きます。会場で撮影したばかりの写真にAdobe Stockから入手した氷の入ったバケツの写真を重ねて、Nano Bananaを使ってあっという間に写真の中の岩本さんにバケツを持たせることに成功しました。バケツの画像は切り抜きもしていない状態です。

さらに、その画像をボタンひとつでウェブ版のFireflyに送って動画を生成しました。時間の都合であらかじめ生成していたものですが、「バケツの水を頭からかぶって楽しそうに慌てる様子」の岩本さんの動画が音声付きで完成しました。大声で笑いながら水をかぶるシュールな動画に会場は微妙な空気になりましたが、「皆さん引いてます?」のひとことで笑いが起きて一安心でした。

会場を水浸しにする岩本さんの動画はAIが生成したフィクションです

生成AIに関する一連のデモは、面白く紹介していただいたことで笑いの起きるシーンも多かったのですが、岩本さんは「生成AIはあくまでもツールであって、最終的にイメージを作り上げるのは皆さん」と強調していました。作りたいイメージはユーザーの頭の中にすでにあり、アドビのツールの様々な機能を駆使していく中で、生成AIを活用するアプローチもあるということです。

さらに、パートナーモデルの生成AIが使えるようになったことで、慣れ親しんだアドビのツールの上で余計なステップを踏むことなく処理ができる利便性も大きいはずです。生成AIを活用する時期はもう来ているので、機能をよく知った上で使ってもらいたいと岩本さんはアピールしていました。

なお、Fireflyは商用利用が可能ですが、パートナーモデルについては各社の規約に従う必要があります。利用条件は各ユーザーが自分で確認してほしいとのことでした。

「生成AIはあくまでもツール」と語る岩本さん

スマートフォン版Photoshopにも動きがあり、従来のiPhone版に加えてAndroid版の提供も開始しました。無料で使うこともできるモバイル版にも「調和」など生成AI機能(一部クレジットを消費)が搭載されているので、外出先でも高度な画像編集を楽しめます。

Illustratorにはユーザー目線で効率化に繋がるアップデートが多数登場

次に紹介するのはAdobe Illustratorです。ユーザーのリクエストに応える多くの進化を実装したIllustratorの新機能として、最初に紹介したのはフォントメニューのアップデートです。

「フォント選びに時間がかかる」課題に応える機能強化として、よく使うフォントを「ライブラリ」に登録できるようになりました。ライブラリは仕事別、クライアント別などいくつも作れますし、同じフォントを複数のライブラリに入れることもできます。

Illustratorのグラデーションに「視覚的」が新登場

Illustratorの代表的機能であるグラデーションには、プリセットが増えたことに加え、「視覚的」という方式が登場しました。従来の方式「クラシック」ではビビッドな色などで中間が濁ったりトーンジャンプすることがありましたが、「視覚的」ではきれいに扱えるよう調整されています。なお、「視覚的」はRGBベースの処理のため制限事項があることには注意が必要です。

ほかにも、日々使用する機能の利便性を高めるアップデートとして、「幾何学ガイド」も紹介しました。垂線や接線をパスで描くときのサポートとして、ガイドが表示されるようになりました。

Illustratorベータ版の目玉機能「ターンテーブル」

生成AIを使ったIllustratorの機能として、ベクター生成にFirefly Vector 4という新しいモデルが追加されて、より精度が高い生成が可能になったことを紹介しました。従来のVector 3に比べて不自然な生成が減り、より実務で使えるレベルになっているとのことです。

そして、Adobe MAX 2025のキーノートでも時間をかけて説明していた、Illustratorの目玉の新機能と言える「ターンテーブル」の紹介です。今はまだベータ版のIllustratorでしか使えませんが、平面のオブジェクトから、まるで3Dデータを扱うように回転させたイメージを作れる機能です。

ターンテーブル機能でイラストを回している様子

元のデータをもとに少しずつ角度を変えたイメージをAIが生成するので、処理にはそれなりの時間がかかります。今回は宇宙飛行士のイラストを使ってその場で生成しました。処理が終わってスライダーを使って回転させると、来場者の多くがスマホで写真や動画を撮っていました(本セッションは撮影OKでした)。

本セッションは撮影可能。多くの人がスクリーンにスマホを向けていました

まさにターンテーブルに乗せたように左右に回転できるのですが、上下方向にも1段階ずつ回転できます。別角度のイメージはベクターデータとして作られるので、そこから細部を編集して仕上げていく処理もやりやすいはずです。また、Adobe MAXのタイミングでの最新アップデートでビットマップ画像からの生成にも対応し、利用範囲はさらに広がりそうです。

アドビのブログやSNSでの情報発信、コミュニティについて

セッション終盤には、Too前田が個人的な「推し」としてInDesignのフレックスレイアウト機能を紹介しました。要素の並び替えが直感的にできるため、カタログや情報量の多い誌面を扱うユーザーには特に刺さりそうな機能でした。

Too前田がInDesignのおすすめ機能を紹介

そして最後に、岩本さんが、アドビのブログやSNSでの情報発信や、コミュニティについて紹介しました。

アドビ公式のAdobe Blogには、現場のユーザーに役立つさまざまな情報が掲載されています。ぜひチェックしてほしい記事として、最新のIllustratorでより美しい文字組みを実現するための記事を紹介しました。

Adobe Illustratorで美しい「ツメ組み」をワンクリックで実現するアキ量設定と「文字組みの手引き」を先行公開

また、アドビはコミュニティを応援する活動にも力を入れています。コミュニティのリーダーを応援するためにAdobe Community Leaders Club (ACLC)を立ち上げました。

コミュニティに参加することで、いろいろなことを共有し合ったり、お互いを高め合ったりできます。今抱えている悩みもコミュニティで解決できるかもしれません。コミュニティに興味のある人は、アドビが審査したコミュニティを探せるCreator Connectにぜひアクセスしてください。

■その他チェックしてほしいリンク
アドビコミュニティ
アドビカスタマーサポートのXアカウント

最後まで情報満載のセッションでした

Adobe MAX 2025での発表内容を引き継ぐ形で生成AIの話題が多めでしたが、使い勝手を向上させる機能もしっかり紹介した、盛りだくさんな内容となりました。

驚きと笑いを交えつつも、仕事の現場でどう使っていくかが明確に伝わる構成で、多くの参加者に新たなヒントを提供したセッションでした。

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