日本デザイン学会 第70回春季研究発表大会が開催されました 

レポート

2023.07.12

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デザインに関する学術的研究の進歩発展に寄与することを目的に運営されている日本デザイン学会 第70回春季研究発表大会が6月23日(金)〜25日(日)の3日間、芝浦工業大学 豊洲キャンパスにて開催されました。4年ぶりのリアル開催となった今回、計5つのオーガナイズドセッションが行われ、さまざまな切り口から「デザイン」について議論が交わされました。その中の一つ、「学びのデザイン」セッションについてレポートします。

本セッションは、芝浦工業大学 デザイン工学部デザイン工学科 教授 蘆澤 雄亮氏をオーガナイザーとして、5名のパネリストが登壇し、それぞれが実施している「新たな学びへのトライアル」について紹介しました。

230624_デザイン学会_蘆澤先生.jpgオーガナイザーを務められた蘆澤 雄亮氏

コロナウイルス流行により、動画やオンライン授業など、学びの手段が急速に増えました。蘆澤氏は、「デザインを意識する人が増えた一方で、デザインを実践できる人は減った」という問題意識を共有した上で、「デザインも時代によってシフトしているし、手段もシフトしている。その中で教育もシフトしなければならないが、骨抜きにならないよう注意しなければならない。なので、ここで様々な事例をもとに次なるヒントを探したい。」としました。また、セッションの最後には、「デザインの学びにおいては、実は1mmの違いに気がつけるような『目利き力』が大事だし、学びそのものという点においては、自ら意欲的に学ぶ方向づけとなるような『意味のデザイン』が大事である」とまとめられました。

各パネリストの発表内容を抜粋してご紹介します。

株式会社GKグラフィックス 取締役 木村 雅彦氏は、「コトのデザインと造形的なデザインが分断されてしまっている」と問題提起した上で、それを共創と教育によって繋げた、ホテルブランディングのケースを紹介しました。 デザイナーが教育者として参加し、ホテル従業員へデザイン、コンセプトへの向き合い方を伝授することで、持続的・自立的にデザイン行為が勝手に回るサイクルを作り出すことが大切であると述べました。

京都芸術大学通信教育部 芸術教養学科CLO、京都芸術大学大学院(通信教育)学際デザイン研究領域 領域長 教授の早川 克美氏は、100%オンラインで全国どこからでも履修ができる京都芸術大学 芸術教養学科「手のひら芸大」の創設者です。昨今、デザインを消費する側のデザイン理解が足りない傾向にあることを問題視した上で、「暮らしを豊かにするまなざし」を育てることを軸に、デザインを教養として学べる学科運営の紹介がされました。

札幌市立大学 デザイン学部 教授 柿山 浩一郎氏は、あえて「のらりくらりとした対話」をすることで手戻りを発生させ、クライアントの曖昧なニーズを引き出す必要性を体験的に学習する演習形態について紹介ました。生徒が課題を提出し、教師が評価をする一方通行の授業形態ではなく、対話の中で自ら課題に気づき、自主的に解決策を導く力こそ、AI が台頭するいま求められる能力であり、そこを育てるのが教師の役割としました。

同じく札幌市立大学 デザイン学部 講師の福田 大年氏は、アイデア生成経験プロセス学習の一つである「まちもじハント」の授業内容について発表しました。単なるひらめきや才能によるものだと認識されがちなアイデアは本来、既存要素と既存要素の掛け合わせによってできるものだと気づくことができる授業設計がされています。アイデア生成のプロセスを体感すると共に、情報採集の視点が養われます。

最後に、 “ノンデザイナー代表”として、株式会社Too HRデザイン部 ゼネラルマネジャーの相庭 玄輝も参加させていただき、人事の視点で新人研修における学びのデザインについて発表しました。チームに新しい価値観を提供することが、新入社員にとっての会社への貢献だとした上で、心理的安全性を保ちつつ、発言しやすい環境を整えるために共有しているマインドセットや、実際のプログラムついて紹介しました。

それぞれの発表のほか、デザイン学科の授業でよくある「明日までに100本アイデアを考えてこい」は賛成派か、反対派かというテーマについて深い議論が交わされるなど、時間いっぱいまで学びのデザインの形について追求されたセッションとなりました。


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