未来のデザイナーを応援!バンコクスケッチワークショップ

レポート

2019.09.05

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Tooグループで、インダストリアルクレイやモデリングツールを提供している株式会社トゥールズインターナショナルではタイ・バンコクにあるKMITL(ラカバン大学)にて、初の試みとしてスケッチとレンダリングのワークショップを開催しました。タイでデザイナーを志す学生を対象に行われたワークショップの様子をレポートします。

タイとカーデザイン

今回のテーマはスケッチとカーデザインそれぞれの基礎を学ぶことです。講師は産業技術大学院大学特任教授として後進の指導にあたる小山 登(こやま のぼる)さん。小山さんはトヨタ自動車株式会社デザイン部門、トヨタ米国現地法人 キャルティデザインリサーチ社、産業技術大学院大学 産業デザイン研究所所長を歴任してきた方です。

このワークショップではデザイナーを志す学生をサポートし、デザインの仕事の基本である「考えながら、手で描く技術」の習得が目標です。また、開催場所にタイが選ばれた理由にはアジアで製造業の中心地の一つであるからということと、カーデザインを専門に学ぶ学生は少ないものの手先が器用で勤勉な国民性、そしてなによりも若い人はみんなクルマが大好き!であることが挙げられます。

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道具からこだわりを

今回は参加者全員に、Tooのコピック12色セットとデザイン用紙であるPMパッドを提供し、ワークショップのあいだ使用してもらいました。デザイナーを志す学生には「いい道具を使い、より質の高いデザインをしてほしい」という考えからです。

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ロジカルに手を動かす

プログラムは立方体、円柱、球体など立体スケッチの基礎演習から始まり、その後は「線のトレーニング」へ。直線や曲線などの多様な線を繰り返し描くことで手を自由に動かす練習になり、伸びやかで勢いのある「生きた線」を体感できるのです。

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このような基本的な立体はデジタルツールを用いれば簡単に表現できます。しかしデジタルツールを使うと、光の当たり方やカーブの曲がり具合などを意識せずともクオリティの高い表現ができます。そのため作品制作が漫然的になるという難点もあるのです。

これまでデジタルツールで無意識に制作していた学生が論理的な表現を学ぶことで、対象の形をより意識して描けるように。「なぜこうなるのか」というロジカルな思考と、フィジカルな活動を繰り返すことで表現にも説得力が出てきました。

つづいて、用意された線画にコピックで着色する立体表現のワークへ。線のトレーニングと組み合わせることで、立体を思い通りに表現できるようになります。

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クルマの自由課題

最後に今まで学んだ技術を総動員し、自分が思い描いたクルマをデザインします。こちらもアナログ画材を用い、手を動かして制作します。何度でもやり直しができるデジタルツールは便利な一方で、雰囲気が似たクルマが多くなってしまうことも。何を一番伝えたいか、表現に強弱をつけるために自分の手を動かしてデザインするトレーニングを続けることが大事なのです。

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作品が完成したら、学生らは2分間のプレゼンテーションで作品をアピールします。「どこが一番のポイント?」「そこがポイントなら、なんでこの色使いにしたの?」講師の小山先生は、一番伝えたいポイントはどこなのかとことん追求していきました。

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すべての基本となるスケッチ

デザインワークにおいて、最初のアイデアやイメージの段階から目に見えるかたちで表現して発表し、内容や考えを理解してもらうことは極めて大切です。そのための技法にアイデアスケッチやラフスケッチ、マーカースケッチなどがあります。

デザインのスケッチは「上手に描く」ことが目的ではありません。アイデアスケッチ・ラフスケッチはデザイン発想を自分の手元で確認しながら展開するもので、描く技術であると同時に考える技術です。一方でマーカースケッチは、自分の考えをスピーディに的確に相手に伝え共感してもらう、伝達と説得の技術です。こうした技術の基本は、鉛筆からデジタルまで応用がきき、またデザインの領域を問わず、基本となる力です。

ワークショップを終えて

今回のワークショップで大切にしたことは、デザイン表現技術の原点に立ち戻ることです。デザイン発想やアイデアのポイントを生きた線をひいて手ぎわよく伝え、光・陰・影・反射をとらえて「かたち」を表現する「アイデアスケッチとマーカースケッチ」の技法を、実際に体験してもらう機会になりました。

まだまだ始まったばかりのこの取り組みは、結果が出るまでに長い時間がかかります。しかし想定よりもレベルが高い学生が多く、確かな手応えも感じました。アジア圏の自動車会社では、特にカーデザイナーやカーモデラーが不足しています。今回のワークショップを踏まえ、今後タイ以外の地域でも開催を目指します。優秀なクリエイターの卵をサポートするために、これからもトゥールズインターナショナルのチャレンジは続きます。


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