【現場を変えるMobilityのアイデア】第34話:iPad導入を成功へと導く用途と運用の両輪
(右)出野 沙優美 様
株式会社よーじや ゼネラルサブマネージャー
コミュニケーション戦略室 室長
ファンづくり推進部
パートナーズ事業課 課長
(左)安藤 光輝 様
株式会社よーじや CI&クリエイティブ統括部 デザイナー
120年積み重ねてきた歴史とブランドを持ちながら新しい一歩を踏み出すことは、容易なことではありません。
今回は、たくさんの魅力を持ち観光地として栄える京都という土地で、試行錯誤を繰り返しながら新しいコミュニケーションのあり方をデザインした株式会社よーじや様の挑戦を取材しました。
日々の暮らしに彩りを添える。京都とともに歩むライフスタイルブランド
Too:よーじや様の商品は大学の頃から愛用しているので、今日はお話を聞けるのが楽しみです!改めてよーじや様について教えてください。
出野様(以下、敬称略):よーじやグループは1904年に創業しました。「あぶらとり紙」が有名ではありますが、創業当初はその時々のニーズに合わせて新しい日用品を取り入れて販売していくお店でした。社名である「よーじや」は、世の中で口腔の衛生が注目され始めた頃に、当時の歯ブラシを指す「楊枝(ようじ)」の商いに注力したことに由来します。地元の人々から呼ばれていた愛称「楊枝屋(ようじや)さん」が当時の店名となり、今の社名として引き継がれています。現在はスキンケアアイテムを中心に日々の暮らしを彩るアイテムを幅広く展開しています。カフェや「十割蕎麦専門店 10そば」などの飲食事業も手がけています。
2000年を過ぎた頃から、オリジナル商品の開発に注力し始めました。そこから20年以上のあいだ大切にし続けてきたのが、やさしい使い心地や品質へのこだわりです。よーじやの商品を使うことが日々の小さな楽しみになり、生活を彩れるように、プロダクトの方針を「やさしいこと、役立つこと、心おどること」と設定し、お客様のニーズをとらえながら商品を開発しています。直近ではよーじやの強みである「香り」を活かした、バスタイムから眠りにつく瞬間までのナイトルーティンに香りをプラスする「ねむり」シリーズをリリースしました。

観光業への依存が浮き彫りに。地元に愛されるお店への原点回帰を決意
Too:2024年に社内に「ファンづくり推進部」を新設したり、2025年には大きくリブランディングに取り組まれました。コミュニケーションのかたちや企業のあり方を積極的にアップデートされている背景を教えてください。
出野:5代目の代表が2019年に就任し、観光業への依存からの脱却に向けてちょうど動き出そうとしていた頃でした。就任直後にコロナウイルスが流行し、売上が97%減少する月も出てくるほど深刻な状況に陥りました。
直営のECサイトで送料無料キャンペーンを打ち出すなど施策を講じてみたものの、売上は1.5倍程度にしか増えませんでした。日常的にご利用いただける地元のお客様とのつながりがあれば、売上の急激な落ち込みは避けられたかもしれません。
地元の暮らしに寄り添い続けてきたよーじやの商いは、1990年代の「あぶらとり紙」ブームや京都の観光客増加に伴い、「あぶらとり紙のよーじや」「京都みやげのよーじや」に姿を変えてしまい、日々の生活に必要なお店だという認識がされていないことを痛感した出来事でした。
同じことを二度と繰り返してはいけない、地元の方に必要とされ、日々の暮らしで使ってもらえる創業当初の姿を取り戻さねばという気持ちで、ブランドのあり方やコミュニケーションのかたちのアップデートに取り組み始めました。
リブランディングとコミュニケーションデザインへの工夫
Too:積み重ねてきた歴史がある中でリブランディングに踏み出すことは、容易なことではなかったと想像します。どのような試行錯誤があったのでしょうか?
出野: 「あぶらとり紙」や「京都みやげ」として一定のブランド認知があることは強みである一方で、「地元に愛される店」であったよーじやの歴史との間にイメージの乖離が生まれてしまっていることが課題でした。
少しの変化ではなかなか皆さんのイメージを変えることが難しく、特に手鏡に映る女性のデザインは京都土産のイメージとして完全に定着していたため、よーじやのこれからの姿勢を伝えるためには、思い切った変化が必要でした。そこで、長く愛されてきた手鏡に映る女性のデザインをベースに、新たにブランドロゴとコーポレートキャラクター「よじこ」を生み出し、日常に寄り添う姿勢を表現することを目指しました。
一気にブランドが変わったように見えるかもしれませんが、改めて地元に愛される店でありたいという「原点回帰」の思いを、今のリブランディングのかたちで表現しています。
手鏡に映る女性のデザイン(旧ロゴマーク)と、新ブランドロゴマーク、コーポレートキャラクター「よじこ」
Too:とても可愛らしくて親しみが湧きます!お客様とのコミュニケーションのかたちには、具体的にどのような変化があったのでしょうか?
出野:イメージを統一し、一貫したブランドメッセージを届けるために、会社が目指す方向性やブランドカラーなどのCI(コーポレートアイデンティティ)を設定し直していきました。それに伴い、これまで担当者ごとに委ねられていた制作物やお店づくりについて、部門を越えてたくさん議論を重ねるようになりました。
安藤様(以下、敬称略):私はCI&クリエイティブ統括部のデザイナーとして、よーじや各店舗の商品やキャンペーンのポスター、POP、プライスカード、カフェや10そばの店舗に置くメニューやポスターなど、お客様とよーじやのコミュニケーションのきっかけとなる多様なコンテンツを制作しています。

リブランディング後は、企画の最初の打ち合わせに必ず入るようにし、他部門とコミュニケーションをとりながら「どうすればメッセージがより伝わるか」を一緒に考えるようになりました。タッチポイント一つひとつがお客様の中での「よーじや」を構築していくため、現場の意向やCIに基づいてロゴや文章といった要素に意識を巡らせ、ひと目で伝わることに一貫してこだわっています。
特に、新たに登場したキャラクター「よじこ」を制作物に盛り込む機会が増え、可愛らしくやさしいイメージ作りを意識するようになりました。色々なポーズのよじこや、ピンクのイメージカラー、媒体ごとに伝えたいメッセージを共存させながらどう統一感を出すかを日々考えながら見せ方をアップデートしています。最近ではベージュカラーをベースにすることで、老若男女に受け入れられやすい、親しみのあるデザインを心がけています。お客さまからは「可愛いらしくなった!」と嬉しい反応をいただけています。
クリエイティブの仕事はどうしても個々に進める作業が多く、外から業務状況が見えにくいことで、各所からタイトな制作依頼が飛んでくることも多いですが、ブランドを統一し、スピーディーにかたちにしていくためにできる限り内製にこだわっています。最近では、 Adobe Premiere Proを一から習得して動画制作にも挑戦するなど、日々勉強を重ねながら対応できる制作物の幅を広げています。
各部署と連携して多岐にわたる制作要望案件をこなし、よーじやがスポンサードする京都サンガF.C.のスタジアムデジタルサインや駅広告、国道ロード広告など、さまざまな場所で自身のデザインが役に立っていることにやりがいを感じています。
秋限定メニューの提供時に店頭に飾られたポスター。オレンジとブルーのカラーが目を引きます。
京都サンガF.C.のスポンサーとして出店したキッチンカーを彩るバナーデザイン。サンガカラーを背景に入れつつ、サッカーボールを蹴るよじこの姿が可愛らしい印象を与えています。
「ファンづくり推進部」を新設。継続的な接点の創出へ
出野:「地元の方に、日々の生活の中で使ってもらっていない」という課題を解決するために、まずはファンをつくっていく動きも必要だと考えました。
年間の延べ購入客数から計算すると、日本人でよーじやの商品を使ってくださっているのが、人口の1%にも満たないことがわかりました。京都に来てお土産で買ったがそれ以降買っていなかったり、お土産でもらって使ったことがあるという方がほとんどで、自身で継続的に購入されている方が少ないことが数字の結果だと考えました。
既存顧客を大事にしながら、お土産という接点ではなく、継続的に関心を持ち、よーじやの商品を愛用してくれる「ファン」をつくっていかなければブランドの成長はないという代表の強い意思もあり、「ファンづくり推進部」が新設されました。
ファンづくり推進部は、制作課、SNS課、パートナーズ事業課の3つのチームで構成しました。制作課では店内ポスターやPOPなどの制作、SNS課ではよーじやを身近に感じてもらうための情報発信、パートナーズ事業課では他社とのコラボレーションを通じて新規顧客に知ってもらうきっかけを作る役割を担っています。前身にあたる部門は「情報戦略・システム推進部」という固めの名前だったのですが、ファンをつくっていく姿勢を社内外にわかりやすく示せるように、また、従業員一人ひとりが何を目指すのかを常に意識できるように、命名されました。
安藤:私は元々「ファンづくり推進部」の制作課所属だったのですが、あまりにもまっすぐで素直な部門名に、最初の頃は名刺交換で言うのが少し恥ずかしかったのを覚えています(笑)。
出野:社内では賛否両論あったのですが…(笑)。そういう思いが込められた名前になっています。
京都の観光地以外での売り上げがしっかりと伸びていることから、観光需要以外のリピーターの方が一定数増えてきている実感があります。 また、ECサイトやAmazonなどの外部ECの売り上げも好調です。京都のスポーツチームのスポンサードを通して、京都府に住む方でよーじやを応援してくださる方も増えました。少しずつ、「京都に来た記念に購入してもらう」という枠を超えた需要を増やしていけていると感じています。
新コーポレートスローガンは「みんなが喜ぶ京都にする」
Too:リブランディングを経て掲げられたコーポレートスローガンについて、込められた想いや具体的な取り組みを教えてください。
出野:「脱・観光依存」に向けて改革を進める中で、「京都で120年続いてきた会社だからこそ、もっと京都へ貢献できるのではないか」という想いが明確になっていきました。
リブランディング後には、コーポレートスローガンとして「みんなが喜ぶ京都にする」を明確に掲げました。このコーポレートスローガンを最初に体現したのが、2025年11月26日に四条烏丸にオープンした「26(にーろく)ダイニング」です。
「京都の生産者さんとつながるお店」をコンセプトに掲げた創作料理屋で、"26"は京都府の市町村の数を表しています。その名の通り、京都府中の生産者を巡り、各地で採れた野菜やお肉、お酒などを、生産者の思いと共に提供します。京都が持つ価値にあらためて目を向け、掘り起こし、世の中に広く伝えていく力となる企業でありたいという思いを体現した取り組みとなっています。京都に住む人々が改めて京都を好きになったり、友人を連れて京都の魅力に触れてもらえるような場所になれば良いなと考えています。
安藤:普段から、自分の制作物が使われる場所に赴いたり、自ら素材を集めにいくことを大切にしているのですが、「26(にーろく)ダイニング」でも京都の北から南まで飛び回って生産者のもとに伺い、メニューづくりのための取材や撮影を進めました。
京都府26市町村の生産者さんとつながるお店「26(にーろく)ダイニング COCON KARASUMA店」
掲げた姿勢を、実感できるアクションへ
Too:リブランディングを経て、今後実現していきたいことがあれば教えてください。
出野:よーじやを「おなじみの店」にしていくために、引き続き新しい姿を発信し続けていきたいと考えています。特に、「みんなが喜ぶ京都にする」を、具体的に皆さんに実感してもらえるように、これからさまざまな取り組みを展開できればと考えています。「26(にーろく)ダイニング」を発表したばかりですが、2026年中に、食とは別の切り口から京都の魅力を発信できる事業を計画中ですので、楽しみにしていてください!
安藤:引き続き、ブランドの想いをクリエイティブに反映させていきたいです。 Tooさんとはもう10年ほどのお付き合いになるのですが、デザインのワークフローを理解した上で親身にサポートしてもらい、クリエイティブの内製化を進めていく上で必要不可欠な存在です。 Apple製品の専門性に長けており、PCの修理が必要な際にも、迅速なレスポンスで専門的な視点から助けてもらっています。これからもよろしくお願いします!
Too:いちファンとして、よーじや様のこれからの展開がとても楽しみです。120年という歴史を持ちながらも、変化を恐れず積極的に企業の在り方や新しいコミュニケーションのかたちを模索する皆さまから勇気をもらえるような取材でした。ありがとうございました。

株式会社よーじや 26(にーろく)ダイニング
ナイトルーティンに香りをプラスする「ねむり」シリーズ



