探訪!株式会社ジーティービー

インタビュー

2026.02.06

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皆さまの使っているツールが提供される背景を取材するシリーズ。今回は、デザインの情報品質への貢献を目指し、独自の視点で「Hallmarkerシリーズ」をはじめとする多様な校正製品を開発している株式会社ジーティービーに伺いました。

画像処理の技術を軸に、世の中に驚きを届ける

Too:まずは、ジーティービーの事業について教えてください。印刷検査の技術において、時代の先頭を走って貢献されてきた印象があります。

関本様(以下、敬称略):株式会社ジーティービーは、「Graphic Technology Basis」の頭文字をとった社名で、1990年の創業以来、画像処理技術をベースに製品を開発している会社です。1994年に印刷製版用画像切り抜きシステム「ScissorsHands(シザーハンズ)」を開発したことが、当社の出発点です。

2000年代初頭にフィルムでの刷版からCTP(Computer To Plate)時代が到来し、従来のアナログ的な製版処理をすることが困難になりました。画像処理技術に強みを持つ当社に各所から相談が集まってきたことがきっかけで開発したのが「Bit-Through(ビットスルー)シリーズ」です。1bit(2値)データをコンピュータ上で確認したり、修正箇所を切り貼りできるようにしたことで、フィルムと同じような感覚で製版処理することを可能にしました。

2004年には、これまでに得たノウハウを活かし、印刷物とデジタルデータを検査できるソフトウェア「Hallmarkerシリーズ」を開発しています。世の中には、デザイン制作の川上から印刷の川下まで、さまざまな工程に対応した校正ツールが存在しますが、画像処理技術を活用した「アオリ」や検版に強みを持つ我々の校正ツールは、特に川下にあたる印刷工程のデジタル化に貢献してきたのではないかと考えています。

大西様(以下、敬称略):当時は校正ツールの需要はそれほどありませんでした。ページを手でめくってパラパラと検査するのが当たり前で、生産機には多額の設備投資をする一方、検査機に投資する会社は多くありませんでした。「生産機はものを生み出すが、検査機は何も生まず無駄な紙を増やすだけ」という認識が普通だったんです。印刷事故に対する意識もあまり高くない時代でした。最初に「Hallmarkerシリーズ」を発表した時も、どの販売店も「こんなに高いもの、誰が買うんですか?」という反応でした。

そういう時代の中でも、例えば「牛乳パックに赤い点が付いていると、血と勘違いされるため全部回収しなきゃいけない」だったり、薬品のパッケージに表示ミスがあると命に関わるため厳しい確認が必要だったり、一部の業界では検査が重要視されていました。そうした意識を持った会社からの相談を受けて、当社の校正ツールが開発されていった経緯があります。

関本:最近ではデジタル印刷が主流となり、印刷物の種類は多品種で小ロット、そして短納期が求められる時代になったように思います。検査にもスピード感が求められる中で、ソフトウェアを活用して検査の自動化・効率化を図っていくことに、今まで以上に注目が集まっているように感じます。

大西:一見すると、初めから印刷業界に高い専門性を持ってソフトウェアを開発している会社に見えるのですが、実はその限りではありません。元々はふわふわと世の中を俯瞰しながら、何にも縛られずに自由な発想で開発できる会社でありたいという思いを込めて「極楽とんぼ」という社名が先にあったくらい、日の目を浴びていないものも含めて、歴史の中でいろいろな製品を開発してきました。いかに新しい技術を開発して世の中に驚きを届けるか、工夫を凝らしながら遅い機械をどう速くできるか、そんなことを考えるのが好きな会社なんです。

関本:今まで開発した珍しいサービスでいうと、2007年にウォルト・ディズニー・ジャパンのサイトで運用したWeb工房プロダクト「マイ・ディズニー・スタジオ」があります。コンシューマー向けに開発したサービスで、ディズニーのキャラクターをカスタマイズし、オリジナルグッズを作れるデザインツールです。キャラクタービジネスは権利の関係で展開が難しいことも多いですが、ミッキーの色を変えられるという許可をもらって開発できた画期的なサービスでした。

他には、写真館と学校、印刷会社をクラウドで繋ぎ、卒業アルバムの制作フローを効率化するツール「Weebum(ウィバム)」を開発、販売しています。「世の中にない、我々ジーティービーでしか提供できないもの」を合言葉に積極的に開発、製品化を進めています。

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情報の品質を保証する極印的存在「Hallmarker」シリーズ

Too:印刷業界シェアNo. 1を誇る印刷比較検査システム「Hallmarkerシリーズ」誕生の背景や、独自開発エンジンである「EyeMine(アイマイン)」の開発秘話を教えてください。

大西:「Hallmarker」の名前は、本物の金であることを証明する「Hallmark(極印)」の名称からとっています。「印刷の品質をHallmarkerで検査したことを保証します」という意味を込めました。「Hallmarkerシリーズ」は、時代の変化やお客様の声を起点にバリエーションを広げてきました。 基本機能を網羅した「Hallmarker」に加え、大量ページの印刷検査に特化したもの、スキャナがセットになった印刷検査機、デジタルデータ間の自動検査に対応できる製品や、サブスクリプションでリモート検査にも対応できる製品などがあります。

「Hallmarkerシリーズ」はすべて「EyeMine」という独自開発検査エンジンが基盤となっています。自分の目で見ている時と同じような柔軟な判断をしてくれる機能にこだわり、「Eye(目)」「Mine(私の)」という名前をつけました。

関本:印刷は、インクが少し伸びたり、色味が若干違ったり、どうしてもちょっとしたズレが起こります。よくある検査ソフトは、そのような許容できる範囲の違いもすべてエラーとして判定してしまう、0か1かでしか判断できない「機械的」なものが多いです。アナログとデジタルの良いとこどりをして、正確だけれど人の目で見ているような感覚で検査できる、良い意味で曖昧さを与えられるエンジンとして開発されました。

Too:設立30周年を迎えられた2020年には、「Hallmarker Elements」をリリースされました。開発の背景や思いを教えてください。

関本:「Hallmarker」が印刷会社を中心に多く導入されていた一方で、印刷の検査に関わる機能を網羅的に備えているため、メーカーの中でパッケージを制作している一部門で導入するには、初期投資が高く敷居が高いことがわかりました。

大西:毎年年末に全社員が神戸のオフィスに集まって、新しいアイデアや企画を持ち寄り、1週間かけて議論を重ねる「ジーティービーカンファレンス」という社内イベントを開催しているのですが、「Hallmarker Elements」はその時に営業社員発信で出てきたアイデアなんです。

関本:サブスクリプション形式で、すぐに扱えるほど直感的に操作ができて、ドングルなしでどこでも使うことができるなど、ブランドオーナーやデザイナーの皆さんが手にとりやすいかたちになりました。

dso_gtb_office.png神戸・北野異人館街の坂の上に立つ本社。元々住宅として使われていた建物が事務所用にリフォームされて使われている。屋上からは神戸の景色を望むことができ、開発中に息をつくための社員の憩いの場にもなっている。

世の中の意識を変え、世の中にないものを届ける

Too: 世の中にないものを生み出し、価値を知ってもらうことは容易なことではないと思います。どのような試行錯誤があったのでしょうか?

大西:検査が重要であることを業界に浸透させることが、ものすごく大変だったのは間違いないです。開発と同じくらいハードルが高かったと言えるかもしれません。開発メンバーが自発的に営業に異動し、「エバンジェリスト」という肩書をつけて、懸命に啓蒙活動をおこないました。その中で、「手でアオればいいじゃん」という長年の慣習も少しずつ変えていきました。当たり前に根付いてしまった意識を変えることは大変ではありますが、世の中にないものを作ろうと思うと、自ずと文化を覆していくような活動も必要になってきます。結局それが醍醐味なのかもしれません。

Too:新しい製品を生み出す上で意識されていることはありますか?

大西:ジーティービーとしては、言われたものに応えるのではなく、常に一歩先を見据えてプロダクトを開発していきたいと思っています。世の中の声を聞きすぎるとかえって全体像や本質が見えづらくなるため、インプットする情報のバランスには気をつけています。展示会に行ったり、お客様と話すときには、いろいろ質問をしてリサーチするのですが、開発直前の段階では、外部の情報から距離を置くことが多いです。

一つひとつの声を拾って応えていたら製品が点でしか繋がらないんです。常に「自分たちがお客様の立場に立ったときに、どう働けるのが理想か」「そのためにはどんな製品が新しく必要か」から思考するようにしています。そうすることで、一貫性を持った本当に良い製品ができるような気がします。

Too:その思考プロセスが、独自の製品価値を一貫して築き上げられている秘訣なんですね。どのようにその考え方を組織全体に根付かれているのでしょうか?

大西:技術者は、開発を進める中でどうしても入り込みすぎて、視野が狭くなってしまうことがあります。なので、俯瞰して見られるように、定期的に戻してあげることは日々の会話の中で意識しています。また、孤独に開発を進めるのではなく、アジャイルの開発手法をとってメンバー間のコミュニケーションを増やすようにしています。

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情報の品質が担保されたデザインを、安心して届けられる環境を提供したい

Too:御社の製品は、クリエイターやデザイナーにどのような影響を与えていると思いますか?これからの挑戦や実現したいことも教えてください。

関本:クリエイターやデザイナーの本業はやはりクリエイティブな作業であり、検査をすることではありません。印刷業界においても、本来は色を合わせるといった技術的な業務に専門性を発揮し、時間が使われるべきですが、検版などに時間を取られていることが実情としてあります。そこで、我々の製品が、効率的な検査によって情報の品質を担保する役割を担うことで、皆さんが本業に対して時間をうまく使っていただけるのではないかと考えています。今後、デザインから入稿まで、それぞれの工程で情報の品質を守って次につなげられるような業務フロー全体の仕組みづくりに貢献したいと考えています。

最近ローンチした、企画・原稿制作・デザイン・校了と一連のデータの変遷とコンセンサスを得る過程を可視化するクラウドサービス「emba(エンバ)」は、その思いをかたちにした製品です。原稿作成から受け入れ検査までに発生する校正や承認などの一連の検査・コミュニケーションを支援し、多様な働き方が共存する中でも、各工程のメンバーがシームレスに関わり、情報の品質が担保されたデザインを安心して届けられる環境を提供することを目指しています。きっと驚いてもらえるようなプラットフォームになっていくと確信しています。

今後もジャンルにはこだわらず、面白いものを作っていきたいですね。もしかしたら全然違うことをやっているかもしれませんが、ユーザーにどんなものを届けたいか、どう使ってもらうかまでを想像しながら、我々もワクワクしながら開発を続けていきたいと考えています。

「Bit-Throughシリーズ」を発売した2000年頃から印刷・デザインワークフローを一緒に提案してきたTooは、これからも力強いパートナーであり、頼れるプロ集団だと感じています。これからも、ブランドオーナーやメーカー、デザイナーの皆さんを一緒にサポートしていきたいです。

大西:技術の発展とともに、単機能だけで人々を驚かせることは難しい時代になりました。だからこそ、私たちは驚かせること自体が目的ではなく、「不便なことを便利にしたい」という一貫して変わらないシンプルな思いを大切にしています。当社の製品を通して、これからも前向きな驚きを提供し続けたいと考えています。

Too:とんぼのように世の中を俯瞰し、開発することを楽しみながら時代を牽引するジーティービーの熱量と技術を垣間見ることができました。ありがとうございました!

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株式会社ジーティービー
「emba(エンバ)」
「Hallmarkerシリーズ」
「Bit-Through(ビットスルー)シリーズ」
「EyeMine」

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