探訪!株式会社ワコム

インタビュー

2019.05.23

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株式会社ワコム
CRBU JPAPマーケティング
エンタープライズ/デザイン教育担当
エバンジェリスト
轟木 保弘 氏

皆さまの使っているツールが提供される背景を、メーカーさんを訪問して直接取材するシリーズ。今回は書き心地をデジタルデバイスで再現し、ペンタブレット市場を牽引する株式会社ワコムです。日本を含むアジアでエンタープライズ/デザイン教育を担当する、轟木さんに話を伺いました。


世界のクリエイティブを支える

轟木さん(以下、敬称略):我々のビジョンは「for a creative world」、何かを思いついたり、アイデアが浮かんだり、人が思う瞬間をすべて含めてクリエイティブと捉えています。そこに対してどういうアシスト、提案ができるのか。

ワコムの製品は、デザイン作業のデファクトツールとして非常にたくさんご愛用いただいていて、ペンタブレット市場では世界シェア85%を獲得しています(ワコム推定)。主なDCC(Digital Content Creation)ツールの多くは海外に本社のある会社が多いので、弊社は「日本の技術なんですね!」と驚かれることが多いのですが、日本ほど「描く」「書く」ことに、こだわりの強い文化圏はありません。

世界の大きな拠点は日本、アメリカ、ドイツの3箇所で、そのほかグローバルに10の現地法人、30以上のオフィスを展開しています。いまは社員1,200名ほど。多くのメンバーが日本より海外にいて、社内は英語が公用語です。

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ペン技術の世界

Too:クリエイティブ向けのペンタブレット製品のイメージが強いですが、他のビジネスについても教えてください。

轟木:大きな柱が2つあって、ペンタブレット製品を中心にしたブランド製品事業の他に、テクノロジーソリューション事業が全体の約50%を占めています。こちらはペン技術を提供して他社端末に搭載してもらう事業です。

Windows Vista以降は専用OSを搭載していなくても、標準でペン技術が使える流れになりました。タブレットPC端末でペン技術があたり前に、必須だと認識されているということです。もちろん、ペーパーレスの需要もあります。

また、ペンタブレットもクリエイティブ向けだけではなく、ビジネスソリューション向けの製品があります。こちらは電子カルテや電子サイン、ホテルでのチェックインシステムなど、世の中の手書きの電子化に関わるすべてです。ユニークなものだと、オーケストラが使用する音楽用の電子楽譜の専用端末などもあります。

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指揮者ごとに異なる指示を書き込める

最近で面白いのは、脳波をペンの軌道に付加する技術研究です。インク技術「WILL(Wacom Ink Layer Language)」では、ペンで書いた軌道に、いつ、どこで、誰が、何のペンで書いたか、というメタ情報を追加できるのですが、ここに脳波をリンクさせて「どんな感情の揺らぎがあって、その線が描かれているか?」を捉える研究などをしています。

発展の歴史

Too:では、クリエイティブ向けの製品について教えてください。

轟木:当社のペンタブレット製品は、マンガ、イラスト、アニメ、ゲーム、3DCG、DTP、工業デザイン、アパレルなど、デザインをお仕事にする業界ではほとんどのところで使われています。フルデジタルの現場だけではなく、紙や鉛筆といったアナログと併用されることもあります。

技術発展は映画制作によく表れますが、1980年代にCGを本格的に作品に使おうという流れが生まれ、1990年代にさまざまな技術進歩から普及の兆しがあったところに、ワコムの製品が入っていった流れです。ワコムの技術は、日本より先に世界で注目され、アメリカのピクサーやディズニーの制作現場で使ってもらったことが、大きなきっかけになりました。その後は、プロ用だけでなく一般用に販売するグラフィック用ペンタブレットの開発にも注力してきました。

ハードウェアとしてのペンの追従性、筆圧感知の細かさだとか、日本のお客様の要求水準はすごく高いです。開発のメンバーはそれをどうやって技術で実現しようか考えて、営業やマーケティングはお客様の声を真摯に聞いて、将来の製品に反映していくことに日々取り組んできました。何十年かけてブラッシュアップしてきましたが、常にチャレンジし続ける必要性を感じます。

現在では、企業様や専門学校様と協力して、次世代の教育やバックグランドを支える活動にも積極的に取り組んでいます。また、東南アジア、南米、中東などの新興国では、クリエイション産業を国家で立ち上げようとする動きがあります。これからのクリエイションを下支えしていくため、液晶ペンタブレットの「Cintiq」シリーズでは段階的にモデルを揃え、幅広いニーズに応えられるようにしています。

xR空間でどうつくるか?

轟木:ワコムは2019年で創業36年を迎えますが、2018年に社長が変わり、現社長の井出信孝より「チャプター2」という新しい方針を出しました。クリエイティブを提供できるテクノロジーカンパニーであろうと、次の数十年を見越してダイナミックに動いています。

2018年4月に、Gravity Sketch社とワコム社が提携して、VR空間での3Dデザインツールを開発しているとプロトタイプ段階を発表しました。これによって、VR空間で3Dモデル化や設計をしながら、リアルタイムにデザインコラボレーションをしていくことが可能になります。

VRでコミュニケーションのタイムラグや物理的距離をクリアする、また、MRで実際のスペースに置いてみて映えるか、整合性が取れているかをすぐ確認する、そういった新しいワークフローを創ろうとしています。

Too:試作段階で発表された。

轟木:メーカーとして、試作段階のものを発表するというのは異例です(笑)。これは、さまざまなソフトウェアベンダーやユーザーであるお客様と協業してやっていきたいという意向の表れです。海外も含めて広く見て、どんどんダイナミックにトレンドや市場が変わるなか、新しい道具やフローを使っていく、クリエイターの方々にも、そこに飛び込んでいただきたいと思います。ワコムの新しい技術がそのきっかけになれば嬉しいです。

Too:最後に、御社にとってTooはどんなパートナーでしょうか?

轟木:日本のデザイナーの皆さまを支えてきた販売店として、私たちにとって重要なパートナーだと思っています。デザインのシーンや市場がどんどん変化するなか、我々も精力的に新たな製品開発に取り組みます。今後もいっしょにアグレッシブに価値の提案にチャレンジしていけるパートナーとして期待しています。

Too:ありがとうございました! パートナー企業として、新たなデザインフローに飛び込まれるユーザー様をいっしょに支えていきたいと思います。


株式会社ワコム
デザイン企業向けサイト
デザイン教育向けサイト
電子楽譜端末GVIDO(グイド)

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