現場を変えるMobilityのアイデア

第1話:そのマニュアルは使われているか?

コラム

2018.06.19

Mac Fan誌で連載中!
仕事や学びを変えていく、明日から使えるヒントがここにあります。

福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com

日常の仕事の中でマニュアルを使って、仕事をしている人はどのくらいいるだろうか? 最初に配付されたときに確認して、そのまま机の引き出しで眠ってしまっている人も多いだろう。営業でも、接客業でも、事務作業でも、どんな仕事にも、業務を進めるためにマニュアルがある。

マニュアルとは「手引書」である。状況に合わせて、どのように対応すべきかを説明したもの。マニュアルはあらゆる作業や業務を標準化する。しかし、よく目にするマニュアルは文字ベースで、表現力が足りないものが多い。文字ベースであるがゆえに、マニュアルに書かれていることに関して、読み手の解釈が出てしまい、実際の行動や作業にバラツキが出てしまう。また、一度作ってしまうとメンテナンスがされず、使われないままになってしまって、いざ確認しようと思ったときには、実際の手順とは異なっているケースもある。

日常の業務の中で、いちいちマニュアル見ながら業務をする人はいないだろう。作業手順を覚えて、ルーティーンでできるものは、最初だけマニュアルが必要で、習慣化できればマニュアルは不要となる。マニュアルが必要となるシーンは、業務の引き継ぎ時や新しいスタッフが入ってきたとき、契約書の印紙の金額のような日頃から憶えておかなくてもいいものを確認して作業をするような場面だ。慣れた作業をOJTで教えることも可能だが、ビジネスのスピードが加速する中で、社員研修やスタッフのトレーニングに時間を割くことも難しくなっている。

あるビジネスホテルの事例である。客室の稼働率が上がるにつれて、接客サービスの品質にバラツキが出ているという課題があった。スタッフが宿泊者の対応に忙しくなり、今までできていたサービスが行き届かなくなってしまったのである。

このビジネスホテルの経営陣は、今後の多店舗展開を検討するにあたり、ホテルのブランドを作っていくために、サービス品質の標準化を必要としていた。そこで、接客やサービス、身だしなみなど、あらゆる業務のマニュアルを作ろうとした。しかし、マニュアル作成の担当者が一から業務手順を確認し、パソコンを使ってマイクロソフトのワードでマニュアルを作成するといった取り組みとなったのだが、いつ出来上がるか見通しが立っていなかった。パソコンで作るには、カメラで現場の写真を撮影し、パソコンに取り込み、作業手順を確認しながらマニュアルを作成していく流れになるが、都度、現場の確認など手間がかかりすぎるのが実態である。マニュアルを作ることが目的化してしまい、サービス品質を標準化し、スピーディに顧客対応を改善していくことができなかった。

そのような中、課題解決のツールになったのがiOSである。具体的には、手元ですぐに業務の手順を記録することができるし、更新することもできるようになる。カメラ機能を活用することで、手順を確認しながら写真を撮影することが可能になる。撮影した写真に直接書き込みができるアプリを使うことで、視覚的に手順を確認することができる。クラウドサービスと連携し、リアルタイムに情報を更新することも可能である。また、ビデオで撮影すれば、文字ベースで表現が足りなかった部分も、実際の動きやニュアンスを確認することができる。

iOSの活用検討は、現場の課題や既存の業務プロセスやワークフローを見直すきっかけになる。現場から改善提案ができることで、従業員が主体的に業務改善に取り組むこと環境をつくることも可能になる。今までの無駄な業務を削減し、本来の業務にフォーカスすることができるようになり、変更点や改善点をすぐに反映することができる。企業や組織で働く人々がより簡単に楽しく働く環境をつくるためにも、モビリティを活用して効率的に運用できる環境をつくっていこうではないか。


この記事は、月刊誌Mac Fanに連載している「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2015年12月号)。

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