現場を変えるMobilityのアイデア

第3話:情報共有はInformationからKnowledgeへ

コラム

2018.06.27

Mac Fan誌で連載中!
仕事や学びを変えていく、明日から使えるヒントがここにあります。

福田 弘徳
株式会社Too モビリティ・エバンジェリスト
企業や教育機関向けのApple製品の活用提案や導入・運用構築を手がける株式会社Tooのモビリティ・エバンジェリスト。
www.too.com

企業において「情報共有」が大事であるということに異論を唱える人はいるだろうか。ほとんどの企業ではグループウェアや社内ポータルなど、情報共有するためのシステムを導入している。最近では社内SNSやチャットツールも使われる。しかし、導入したのに思ったほどユーザが使ってくれない、情報が集まらないなどの問題を抱えている話をよく聞く。闇雲な情報共有が鬱陶しいメールのやりとりを生んでいるのも事実である。「情報共有」は企業の課題の大きなテーマの1つである。

情報を共有することは単に手段に過ぎず、企業が目指すところは個々人のパフォーマンスを最大限に発揮できる環境を作ることである。全員が同じ情報を持っていたとしても、個々人のパフォーマンスが最大限に発揮されるわけではなく、「他のメンバーの誰がどんな情報を持っているのか」を共有することが重要なのである。ワークスタイル変革やテレワーク推進などの時代の変化の中で、文字どおりの情報(Information)共有から、単なる情報に留まらない新しい価値を生み出す、もしくは既存のビジネスを変える可能性を持った情報(Knowledge)共有が求められている。

情報共有ができていない障壁に、「セクショナリズム」がある。自分が所属する部署やチームの立場に固執し、他と協調しないことである。この結果、それぞれの部署は部署、それぞれ課は課となり、全社一体の情報共有ができていないため、うまく知識を横展開できていないケースが多い。ここには、同じ企業であるにもかかわらず、隣の部署には負けたくないとか、ノウハウを取られたくないなどの自己の目的達成がある。しかし、本来同じゴールを目指すチームとして、情報共有ができないことは、大きな損失につながっていると思う。現在は、スピーディーに現場からのボトムアップのKnowledgeを共有することが、時代を生き残る企業の戦略のヒントとなる。

数多くのブランドと全国に店舗を持つアパレル企業の事例である。この企業では、店舗のバックオフィス業務の効率化を目指し、各店舗にiOSデバイスの導入を推進している。

実はバックオフィス業務には紙で行われている業務が多い。その中の1つとして、各店舗にある日々の業務を報告するノートがあった。その日にあった出来事や課題とその解決策、クレーム対応履歴やお客様からの要望など、店舗の販売スタッフや店長が書くものである。ここには、その店舗だけでなく、他の店舗でも効果のある解決策や要望が眠っているのである。紙のノートであるがゆえに、その店舗の中だけでしか共有されることがなかった。

そこで活躍するのがiOSデバイスである。今までInformationレベルで共有されていた情報が、各個人に配付されたiOSデバイスを通じて、属人的だったKnowledgeを集めることを可能にした。クラウド上にKnowledgeが集まることで、スピーディにチームで横展開し、社内全体のビジョンの共有にもつながっている。また、各店舗間の情報交換だけでなく、その地域を担当するエリアマネージャーにも有益な情報が届くようになった。移動中に次に訪問する店舗の状況を確認したり、他の店舗の取り組み状況などを共有し、各店舗の業務改善につながっている。さらに、本社にいる企画部門にも共有できることで、各ブランドやエリア単位での改善施策や、お客様からの要望を検討するのに役立っている。

モビリティの導入はデバイス導入ではない。働き方や環境、仕組み、習慣を含めて、モバイルを中心としたデバイス活用である。経営と現場の理想と現実のギャップを捉えて、課題を認識し、モビリティで解決する。モビリティ・エバンジェリストとして、InformationではなくKnowledgeを共有しながら、2016年もさらに活動の幅を広げていきたい。



この記事は、月刊誌Mac Fanに連載している「現場を変えるMobilityのアイデア」の転載です(初出:Mac Fan 2016年2月号)。

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